2.結果と考察
2-1. 捕集速度に及ぼす周波数の影響
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図3 |
酵母細胞の捕集速度に及ぼす周波数の影響
(30V,30V/cm,1min,pin-plate electrodes) |
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誘電率は周波数に依存することから、生細胞及び死細胞の強電場側の針電極へのそれぞれの捕集速度の周波数依存性を検討するため、ピン−プレート電極型誘電泳動用セルを用いて、周波数を1kHz〜1MHzまで変化させたときの捕集速度を測定した。図3は生細胞及び死細胞の捕集速度に及ぼす周波数の影響を示す。生細胞と死細胞のどちらの場合も、10kHz以下の周波数では対流が激しく、捕集された細胞も対流によって離脱する現象が観察された。周波数10kHz以上の場合ではそのような現象は見られなかった。生細胞と死細胞のどちらの場合も、周波数10kHzで捕集速度は最大値となった。また、周波数1MHzの場合、生細胞の捕集速度は45cells/minであるのに対し、死細胞では酵母は全く捕集されなかった。このことから、1MHz以上の周波数が生細胞と死細胞の分離には最適であると考えられる。誘電泳動力は誘電率に依存し、誘電率は周波数に依存することから、生細胞と死細胞では誘電率が異なるため、捕集速度の周波数依存性が異なったと考えられる。
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図4 |
大腸菌の捕集速度に及ぼす周波数の影響
(10V,10V/cm,1min,pin-plate electrodes) |
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次に、大腸菌の捕集速度に及ぼす周波数依存性について検討した。図4は大腸菌の周波数依存性を示す。大腸菌の場合、生細胞と死細胞は、酵母と同様に10kHzの周波数で最大の捕集速度を示し、周波数1MHzにおいては、死細胞は捕集されなかった。
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図5 |
3-2H3細胞の捕集速度に及ぼす周波数の影響
(6V,300V/cm,1min,pin-plate electrodes) |
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3-2H3細胞においても捕集速度の周波数依存性を検討した。3-2H3細胞における捕集速度の周波数依存性を図5に示す。酵母の生細胞では周波数10kHzにおける捕集速度が最大となったが、3-2H3細胞の生細胞では1MHzで捕集速度が最大であった。また、死細胞のピークは100kHzであった。3-2H3細胞の場合、周波数1MHzでも死細胞が捕集されたが、死細胞懸濁液中に生細胞が26%存在しているため、生細胞のみが捕集され、死細胞は捕集されなかったと考えられる。
以上の結果より、酵母、大腸菌、動物細胞、どの場合も周波数1MHzにおいて生死による細胞の分離が可能であることが示された。また、本実験条件においては、強電場側の針電極に捕集される細胞は生細胞であり、死細胞は捕集されなかった。
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