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群馬大学工学部 材料工学科
甲本 忠史 教授 |
3.最近の研究
5)材料を開発する
病院や要介護施設から廃棄される使用済み紙おむつは、現状では焼却あるいは埋設の方法しかなく、医療廃棄物としての経費、悪臭による近隣の環境等の問題をかかえています。依頼を受けて、ランドリー用洗濯機を基本構造とする使用済み紙おむつの開発を行なってきましたが、全く新規な装置であるため、処理方法・処理装置の開発をはじめ、いろいろなニーズや開発課題を含んでいることがわかって、まだまだ開発の途中と言えます。これを通して、基本技術はもちろん多くの周辺技術の開発、多くの方々の協力があって商品化・事業化が達成されることを痛感しています。
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使用済み紙おむつ処理装置
(日本アサヒ機工販売) |
プラスチック材料は自動車材料で代表されるように金属材料に代わって多くのパーツに用いられています。このように機械分野ではプラスチックが用いられているにもかかわらず、機械工学の研究者がプラスチック材料開発を行なっている場合が多いようです。そのため、材料メーカーに発注する場合、プラスチックの適切な条件を示すことができないこともあります。また、材料メーカーも情報を明らかにしないことが多く、互いに見えないブラックボックスがあるため、新規な材料開発がむずかしいのが現状です。企業にとっては素材ポリマーを購入して、その後のコンパウンドや成形は自社あるいは機密保持していただける企業と一緒に行なうことがベストです。ここに高分子科学と材料開発の融合の成果が生まれることになります。
海外の製品をOEMで製造だけ行なっている企業の場合、自社では研究開発を日頃行なっていないため基本技術は皆無に等しく、相談を受けることができませんでした。よく言われるように、企業は常にオンリー・ワンの技術を目指した思想を持っていただきたい。単に、コスト削減を目標にしていては、その企業の将来は不安です。
また、必ずしも流行(ハイテク)を追う必要はなく、ローテクは安価な素材から高機能の材料を創製するという意味で本当はハイテクですので、社会のニーズと自社技術のレベルアップを怠らなければ新製品の開発が生まれます。特に、トラブル、失敗、苦情等は、それは宝の山であり、前向きにじっくり取り組むことが企業の将来を決めることになります。そのために企業は大学を活用していただき、また、大学人は相談を積極的に受けて社会へのご恩返しに務めることが大学の発展と地域貢献につながります。また、その経験は大学での教育と研究に大いに役立っています。
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