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群馬大学




群馬大学 医学部 薬理学教室 講師 田中 恒夫


 
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1. 体内のエネルギー通貨ATP、GTP
2. エネルギーの使い手ATPase、GTPase
3. 従来のATPase、GTPase活用測定法とその問題点
4. 測定の原理
5. 測定の実際
6. 測定法の検証 
7. 今後の改良点と展望
 


6.測定法の検証

 まず、実際のADPの量と、カラムで溶出される山の総面積との関係が、理論通りに比例しているかどうかの検定を行いました。図2に見られるように、従来の発色反応の検出限界である1ナノモルより高い濃度レンジ(1-10ナノモル、外枠)、低いレンジ(0.05-1ナノモル、内枠)の間で、綺麗な直線性を示しています。このことは、私たちの方法は、0.05ナノモル以上で、ADPを検出できることを示しています。従来の方法よりも20倍感度が高いというわけです。GDPも同じ範囲で検出することが出来ました。次に、実際にミオシンを使ってATPase活性を比較したところ、発色反応によって測定したものと全く同じ値を得る事が出来ました。以上の結果から、私たちの方法は、NTPaseを測定するのに有効な方法であると言えます。

 次に、この測定法を使った実験により、新しく明らかになった事例を紹介します。筋肉はミオシンというモーター蛋白質によって動くということは既に述べました。ところがここ10年くらいの間に、一部のモーター領域となる部分を除いて全く筋肉のミオシンとは事っている分子が多数見つかりました。その中の一つにミオシンVという蛋白質があります。この分子は脳が発生する時に、神経に特異的に現れる蛋白質です。神経は回路網を形成するために盛んに運動するのですが、その運動の原動力になっている蛋白質と考えられています。ミオシンVは筋肉のミオシンと異なり、ごく少量しか精製することが出来ないため、活性の制御様式などは、ほとんど調べることができませんでした。今回、私たちの開発した方法を用いることにより、ミオシンV活性を制御する因子を、世界に先駆けて発見することが出来ました。他のATPase、GTPaseの解析にも、有効な測定手段となりそうです。

図2 溶液中のADP濃度と検出値の関係

 
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