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群馬大学




群馬大学 医学部 薬理学教室 講師 田中 恒夫


 
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1. 体内のエネルギー通貨ATP、GTP
2. エネルギーの使い手ATPase、GTPase 
3. 従来のATPase、GTPase活用測定法とその問題点
4. 測定の原理
5. 測定の実際
6. 測定法の検証
7. 今後の改良点と展望
 


2.エネルギーの使い手ATPase、GTPase

  さて、体の中でエネルギーはどの様にして使われているのでしょうか。たとえば、筋肉は、主にミオシンとアクチンと呼ばれる分子で構成されています。ミオシンはモーター活性を持ち、繊維状の長いレールであるアクチンの上をリニアモーターカーの様に進み、筋肉を収縮させます。このとき、一分子のミオシンに一分子のATPが結合し、ADPに分解して一定の距離だけ前進します。次にADPを放出して、再び新しいATPを結合するという繰り返しにより、収縮がおきることがわかっています。このミオシンのように、ATP 、GTPを分解してエネルギーを生じさせる酵素は、ATPase、GTPaseと総称されます。ミオシンはATPの化学エネルギーを運動エネルギーに変換する、代表的なATPaseです。

 神経細胞は膜で囲まれ、外液と区切られています。外液は高い濃度のナトリウム、カルシウムを含んでいますが、細胞の中のナトリウム、カルシウム濃度は低く保たれています。神経が興奮すると膜に埋め込まれている特殊な蛋白質に穴が開き、ナトリウム、カルシウムが神経細胞に流れ込みます。例えていえば、ダムから水が放水されるようなものです。興奮した細胞を元に戻すには、ナトリウムやカルシウムを、濃度勾配に逆らって膜の外に汲み出してやらなければなりません。一旦ダムから放出された水を、もう一度ダムの貯水池まで汲み上げるようなものです。この汲み出しを行っているのがナトリウム/カリウムポンプ、カルシウムポンプと呼ばれるATPaseで、ATPを分解しながらそのエネルギーを利用しています。

 主なATPase、GTPaseを表1に示しましたが、これ以外にも、いろいろなところでいろいろな役割を果たしている事が分かってきました。この種の蛋白質の性質を探る上で一番大切な指標は、ATP、GTPを分解する速度であり、私たちはこれをATPase 活性、GTPase活性と呼んでいます。

NTPaseの名称 種類 機能
ミオシン ATPase 化学エネルギーを力学エネルギーに変換する蛋白質。
筋肉収縮、細胞運動、細胞内輸送の原動力。
アクチン ATPase 重合して、細胞の形態を決める。
Na/Kポンプ ATPase 濃度勾配に逆らってNa+を放出、K+を細胞内に流入させる。
神経興奮、細胞興奮を鎮静する。
Caポンプ ATPase 濃度勾配に逆らってCa2+を細胞外に放出する。
筋肉を弛緩させる。神経興奮、細胞興奮を鎮静する
G蛋白質 GTPase ホルモン、生理活性物質に応答するスイッチの役割。
チューブリン GTPase 重合して、遺伝子の分配、細胞分裂を調節する。
EF因子 GTPase 遺伝子から蛋白質を合成する因子の一つ。
表1 代表的なNTPaseとその生理機能

 
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