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群馬大学




群馬大学 医学部 薬理学教室 講師 田中 恒夫


 
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1. 体内のエネルギー通貨ATP、GTP
2. エネルギーの使い手ATPase、GTPase
3. 従来のATPase、GTPase活用測定法とその問題点 
4. 測定の原理
5. 測定の実際
6. 測定法の検証
7. 今後の改良点と展望
 


3.従来のATPase、GTPase活用測定法とその問題点

 現在、最も良く使われている測定法は、ATP (GTP) → ADP(GDP)+ リン酸(Pi)という反応で生じるリン酸の量を測定する方法です。これは、リン酸と結合すると発色する物質を反応液に加え、その光の強さを測定するというもので、測定できるリン酸は1ナノモル(ナノは10億分の1)までです。これより少ない量のリン酸を検出するには、放射性同位元素(アイソトープ)を使う必要があります。リンには、放射能を持たない普通の元素の他に、放射能を出す元素があります。これを私たちは 32Pと略記します。ATP、GTPの一番外側にあるリン酸をこの 32Pに置き換えたものを酵素と混ぜてやり、分解された 32Piだけをフィルターに吸着させてその放射能の強さを測定します。これによって分解速度を計算する訳ですが、放射能を使用できる施設は限られていますし、それ相応の習熟した手技を必要としますので、あまり普及はしていません。

 先に述べましたように、ATPase、GTPaseの重要性が認識され、続々と新しい蛋白質も見つかり始めています。これらの蛋白質の大部分は、精製が煩雑で、ごく少量の精製蛋白質しか得ることができません。従来の発色反応を利用した定量法では、せっかく苦労して精製した蛋白が1回の測定で無くなってしまうということもままあります。そこで、もっと感度が高くて、しかもアイソトープを使わなくて済むような簡便な測定法が求められています。私たちは、今までの測定法とは全く異なる、感度の高い簡便なATPase、GTPase測定法の開発を試みることにしました。
 
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