〔ま〕
【マーキング】marking{E}
印を付けること。ルート(登山道)を示すために、岩に丸や矢印などを書いたり、木の枝に赤布を取り付けたりすること。⇒指導標。
【まいご石】【迷子石】
氷河によって運ばれた岩石が、氷河が溶けた後に取り残されたもの。
【マウンテン】mountain{E}
山。山岳、山脈。山の、山の中の ⇒ベルグ。
イギリスでは標高600mまでのものを丘(hill)といい、それより高いものを山(mountain)という (高い山もhillということもある)。
【マウンテニア】mountainerr{E} 登山者、登山家。山地に住む住民。
【マウンテニアリング】mountaineering{E} 登山。
【まく】【捲く】
滝や岩場などの難所を避けて迂回すること。⇒たかまき
【マスト結び】
ロープの結び方の一種。ロープの中間をマスト(杭)に結ぶのに適した結び方。⇒インクノット
【マット】sleeping mattress{E}【マットレス】【しとね】
寝るときなどに使う敷物。地面への熱の拡散を防いだり、寝心地をよくするために用いる。
断熱材に空気を使った【エアーマット】と、発泡合成ゴムのウレタン(Urethan{G})を使った【ウレタンマット】がある。エアーマットには、風船のように空気を吹き込んで膨らますタイプと、スポンジの復元力を利用して、栓をあけると自然に空気を吸いこむ(セルフ・インシュレーション)方式のサーマレストがある。
発泡ポリエチレンの片面にアルミ幕をコーティングしたものは【銀マット】という。
【またぎ】【マタギ】【マダギ】
山の猟師。秋田や青森など東北地方の山々で、古来からの伝統を重んじながら狩猟をしていた人々。語源については、皮をはぐマタハギからとか、殺生をするので「また鬼(き)になる」など種々あるが定説はない。日本語。
統率者をシカリ、射手をブッパ、熊をイタズなど、独特の山言葉を使う。
【マップ】map{E} 【アトラス】atlas{E}
地図。マップは1枚1枚ばらばらな地図のこと。それを集めたもの(地図帳)はアトラスという。語源はラテン語のmappa(布)で、テーブルクロスに世界地図を描いたのが起こり。
【マップメジャー】【マップメータ】【キルビメータ】curvimetre{F}
地図上の距離を測る道具。小さなローラーがあり、それでルートなどをたどってゆくと、メーターから(曲線)距離を読み取れる。curvus[曲がった]
【まど】【窓】
尾根上の低く窪んだところ。山稜が切れこんで鞍部になっており、廊下のような谷が尾根にぬけるところ。一般にキレットよりも幅がひろい。また、キレットはおもに信濃の山で、マドは越中の山で使われる。剣岳の「三の窓」など。
【マナスル】Manaslu{San}
(1)ヒマラヤにある山の名。8,163m。昭和31年に日本隊が初登頂した。【マナスルゥ】 Manasa[精霊、精神] lung[土地、地域]
(2)国産(ホープ社)灯油ストーブ(コンロ)の名
【ママリズム】
ママリーが唱えた「より高く、より困難を」求める登山思想。登山をスポーツとみなし、修練によって取得する技術と、困難に立ち向かう闘志こそが登山の真髄とする考え方。『真の登山家とは常に新しい登攀を試みる人である』ママリー
アルバート・フレデリック・ママリー(英)は、アルプス銀の時代の立役者であり、ヒマラヤ8,000m峰に最初に挑戦した登山家でもある。日本の古い(大正時代など)書籍では【ママリー】を【マンメリイ】を表記しているものがあり、ママリズムは【マムメリズム】と表記する。
まりしてん【摩利支天】Marici{梵語}
カゲロウを神格化したインドの女神、日本では武士の守護神。Marici[陽炎]。甲斐駒ヶ岳の南にあるピーク
まる【丸】
山名について、山を表す。北九州に多い。古代朝鮮語(屋根の棟、山)が語源という説がある。大和朝廷成立後は「山」が使われるようになったが一部に残っている。
【マルチピッチ】multipitch{E}
ロープ1本分の長さで登る距離を1ピッチという。複数のピッチで登る距離をマルチピッチという。multi[多重、複数] pitch[調子、程度]
【マンドリン】
(1)ストック(杖)の長さを調整する機構部品のひとつ。ポールを回転すると、マンドリンが開き、シャフトの内側に押し付けられて、固定する。
(2)ストーブ(コンロ)のノズルを掃除するための針。
【マントル】mantle{E}
(1)ガスランタンの発光体、網状の筒。白熱套(はくねつとう)、ガスマントル
(2)マント、袖のない外套。
まんねんゆき【万年雪】【フィルン】{G}、【ネヴェ】neve{F}
夏になっても溶けずに残っている雪。年中溶けない雪。⇒ 雪渓、氷河
〔み〕
【ミードテント】meade tent{E} 【ウインパーテント】【ウィンパーテント】
三角柱を横に置いたような形のテント。両端に合掌型の支柱があるので風に強い。冬山用のテント。現在はドーム型テントが主流でミード型は使われていない。⇒ウインパー
みぎ【右】/ ひだり【左】
川の右岸/左岸は、地理学上の言葉で、上流から下流をみて、右側の岸を【右岸】、左側を【左岸】という。
沢登りでは下流から上流に向かうので、この表現は混乱する。そのため下流から上流をみて、右側を【右手】、左側を【左手】という。
【滝の右/左】も、滝に向かって右側を右、左側を左という。沢の名称での【右俣/左俣】も、下流から上流をみて右側の沢を右俣という。
みずば【水場】
飲用可能な水が湧き出ている場所。飲み水が得られる場所。
【みたけ】【御岳】
神様を祭っている山。
【みちしるべ】【道しるべ】【道標】
ルート(登山道)を示す標識。方向や距離、所要時間を書いたもの。石を積む(ケルン)、赤い布やテープ、ペンキで書いた印などもある。
【ミックスクライミング】
氷壁登攀と岩壁登攀を組み合わせた登攀形式。岩と雪(氷)が混ざった壁を登ること。
みつどうぐ【三道具】
何かをするのにぜひ必要な、主要な三個の道具。ハンマー、ハーケン、カラビナをかつてロック・クライミングの三道具といった。
みつまた【三俣】みつもん
大きな尾根がT型やY型になって三方に分岐している地点。三俣蓮華岳は、富山・長野・岐阜の県境にあるが、このように三つの国の境にある山。
みとうほう【未踏峰】
まだ誰も頂上まで登っていない山。
【ミトン】【ミッテン】mitten{E}
親指だけ別れて他の指がくっついているタイプの手袋。
通常の革手袋などの上に着るものは【オーバーミトン】【オーバー手袋】という。
みね【峰】【嶺】【峯】
神として祭っている山の頂上。「み」は接頭語、「ね」は山頂のこと。
みねばしり【峰走り】
峰(山頂や稜線)で始まった紅葉がしだいに谷(麓の方)へ降りてくること。新緑が麓から峰に向かって登ってゆくこと。
〔む〕
【ムーブ】move{E}
フリークライミングにおける動作、動き方。
むさんそとざん【無酸素登山】unmasked{E}
酸素ボンベを使用しない登山形式。
ヒマラヤなどの標高4000m以上の山では、低酸素のために高山病などの障害がおこる。そのため酸素ボンベを使用することになるが、携行する器材が多くなりスピードが落ちる。そこで、体を低酸素に慣らす訓練をして、酸素ボンベなどの重たい装備を持たずスピードをあげて登頂する登山形式が考え出された。⇒アルパインスタイル。⇔ポーラー・メソッド
むじんごや【無人小屋】
管理人が常駐していない山小屋。多くは、常時開放されていて誰でも(宿泊料)無料で自由に使える。小屋によっては、鍵がかかっていて管理者の許可を得て使うものもある。⇒避難小屋。⇔営業小屋
むなつきはっちょう【胸突き八丁】
急坂、登るのに苦しい急な坂道。【鼻突き八丁】【鼻こすり】ともいう。
丁(町)は長さの単位で109m。頂上や峠まであと八丁(約800m)のところにある急坂という意味で、物事が完成する直前にある苦しい場所や状態をいう。
むひょう【霧氷】givre{F}じゅそう【樹霜】
空気中の水蒸気(霧)が木の枝に付着し、それが凍ったもの。一般に、木の枝全体にまんべんなく氷が付く。風がなく気温がマイナス10度以下になったときにできる。気温がそれより高く風が強いと白色不透明なエビノシッポになる。【霧の花】【きばな】【すが】【しらぶ】【ふきつけ】などの方言がある。
気象学では、上記の現象を樹霜といい、樹氷と樹霜を含めたものを霧氷という。一般的には、落葉樹の細かい枝に雪や氷が花のように着いたものを霧氷といい、針葉樹の樹全体に着いたものを樹氷という。⇒樹氷。⇒えびのしっぽ
【ムルデ】Mulde{G}
山腹の窪地。小さな谷。
〔め〕
めいざん【名山】めいほう【名峰】
姿形が美しいとか、歴史があるなどで名高い山。
めいしゅ【盟主】
主峰。ある山群の中で中心となる山。
【メイストーム】May storm{J}【五月の嵐】
5月に発生する暴風雨。日本海を通過中の低気圧が急に発達して暴風雨や時には暴風雪をもたらし、遭難事故や海難事故が起こることがある。May[五月] storm[嵐]
【メィディ、メィディ、メィディ】Mayday{E}【メーデー】
船舶・航空機などが(無線で)救助を求めるための国際救難信号。フランス語の「助けに来て(venezm'aidey)」から。単に「メーデー」というと5月1日の労働者の祭典になる。救難信号の場合は3回繰り返すこと。
モールス符号では「・・・ --- ・・・」(SOS)になる。⇒山岳救難信号。
【メサ】mesa{Sp}
頂上が平らになっていて、周囲が鋭く切れ落ちている高地や山。[テーブル]
【メタ】Meta{c}【スイスメタ】【エスビット】Esbit{c} こけいねんりょう【固形燃料】【メタ缶】{s}
アルコールを主体とした固体の燃料。簡易コンロや着火材として使う。缶詰のような缶に入ったもの、タブレット(角砂糖のような立方体)、歯磨きチューブのような容器に入った流動体などがある。スイスLONZA社のMETAが本家。エスビットはドイツ Erich-Schumm社の製品。メタとはメチルアルコールのこと。
めだしぼう【目出し帽】【バラクラバ】めでぼう【フェイスマスク】
目だけを出して、それ以外の頭部(首から上)をすっぽりと覆う、毛糸やフリースの帽子。
?!冬山で吹雪の時などに使うもので、銀行やコンビニで使うものではない!?
【メタルマッチ】metal match{E}
マグネシュウムを使ったマッチ(発火装置)。マグネシュウム(Mg)は金属だが、粉末状にすると白色の光を伴って燃えるようになる。
【メンパ】【めんぱ】【ワッパ】【わっぱ】【めんつう】
昔の弁当箱。桧や杉の薄板を小判型(楕円型)に曲げて側面とし、底をつけた容器。それを大小2つ作り、組み合わせて蓋部と底部にしたもの。両方の容器に米飯をいっぱいに詰めると1升くらい入る。
〔も〕
もくどう【木道】
湿地帯や高山植物がある場所で、踏み込むことができない場合に設ける木橋の道。尾瀬ヶ原などに設けられている。
【もしかある日】【いつかある日】
ロジェ・ジュプラが作詞した山の愛唱歌。「もしかある日、山で死んだら、古い山の友よ伝えてくれ・・・」
【モスキートネット】mosquito net{E}
蚊や蜂などから頭部を守るため、頭からかぶる目の細かい網。mosquito[蚊]
【モノレール】monorail{E}
1本のレール上を走る車両、単軌鉄道。山間地で見かけるものは小さなガソリンエンジンで牽引する1-2両の軽便なもの。資材を運ぶためのもので、乗用ではない。
もり【森】
山名に付いて山をあらわす。石鎚山系の瓶ヶ森など。東北と四国に多い。頂上は笹原や草原になっているものが多く、必ずしも森林ではない。古代朝鮮語が語源という説がある。山の形がよい山につくことが多い。⇒たけ、やま
もり【森】/ はやし【林】
森は、山や丘などこんもりしている場所に木が密集して生えているもので、樹木の種類や高さはばらばら。
林は、比較的平らな場所に木がまばらに生えているもので、樹木の種類や高さはある程度揃っているもの。
【モルゲンロート】Morgenrot{G}
朝焼け。朝日をうけて雲が赤く染まること。高山でみる朝焼け。Morgen[朝]。朝日をうけて山が黄金色に輝くのはアルペングリューエンという。⇔アーベントロート
【モレーン】moraine{E,F} たいせき【堆石】せきてい【石提】
氷河に運ばれてきた岩・石・砂などのかたまり、溜まったもの。⇒デブリ
氷河の移動する速度と、その先端が溶ける速度が等しいと、運ばれてきた岩石が同じ場所にたまる。これを【ターミナルモレーン】という。解ける速度が速いと、氷河は年々後退して、岩石は氷河の端や中央にたまる。これを【ラテラルモレーン】または【ミディアルモレーン】という。ラテラルは横・側面、ミディアルは中央の意味。
【もやい結び】【ブーリン】
ザイルの結び方のひとつ。ブーリン、またはボーラインともいう。「もやう」とは船を綱で岸(の杭など)につなぐこと、その結び方。⇒ブーリン
【モンスーン】monsoon{E}
季節風。夏は海洋から大陸へ、冬は大陸から海洋に向かって吹く風。
ヒマラヤでは、6月から9月ころにかけて雨期になり、山は風雪にみまわれる。そのため、通常、登山ができるのは、【プレモンスーン】とよぶ春季か、【ポストモンスーン】の秋季になる。
【モン】mont{F}【モンテ】monte{I}
山。固有名詞について山を表す。モンブラン(Mont blanc)は「白い山」、モンテローザ(Monte rosa)は「バラの山」の意味。
【モンスター】【アイスモンスター】ice monster{E}
樹氷のことをいう。樹氷(雪)に覆われた針葉樹が怪物のように見えることから。monster[怪物]。⇒樹氷