〔や〕

やえい【野営】

野山でテントを張って宿泊すること。軍隊が陣営を張ること。
【野営地】キャンプ場

【やげん】【薬研】

舟形に深く彫りこんだ沢(谷)や沢の部分。
薬研は漢方薬などを作る時に使う道具。細長い舟形をした器具の中に生薬を入れ、円盤状の器具で押しつぶして粉末にする。その道具に似た地形をいう。

やすば【休場】

休憩に適した場所。

やせおね【痩せ尾根】

両側がするどく切れている横幅の狭い尾根。⇒馬の背ナイフリッジ
?!ダイエットに執心しているお姉ちゃん!?

【ヤッケ】Windjacke{G}【パーカ】parka{E}【ウインドブレーカー】windbreaker{c}

防風・防雪用のフード付きの上着。登山用の上着をヤッケ、それ以外のアウトドア用上着をパーカといった呼びわけもある。⇒アノラック。ウィンドブレーカーは米国の商標名。ヤッケの語源はアラビア語のschakk 網目の布地から。

【ヤッホー】Johoo{G}

登山者間の合図や挨拶に使われる呼び声。山頂で上げる歓声。 語源は、ヨーデルのかけ声「イヨッホホホー」から、あるいは、遠くにいる人に呼び掛ける「ほーい、ほーッ」からとも。
遠くにいる人を「おーい、おーい、おーい」と呼んではいけない。救助を求めていると間違えられる。そのために「ヤッホー」が使われた。

やはず【矢筈】

矢の元の部分、弦をかけるために凹型になった部分をいう。転じてピークが二つある山を矢筈(山)という。

【やぶこぎ】【藪漕ぎ】

草や灌木(小さな木)をかき分けて進むこと。
【藪】とは雑草や雑木が密集して生えているところ。雪や藪をかき分けて行くことを「漕ぐ」という。⇒ブッシュ潅木

やま【山】mountain{E} montagne{F} Berg{G}

平地よりも高く隆起した地塊。山岳呼称の代名詞。木が生えていて高くなっているところ、木がなければ【野】という。
!?古来、山は神々が降臨し鎮座する場所、神々の集うところ、祖先の霊の宿る世界と考えられてきた。登山者ごときが土足で踏み込む場所ではない。心せよ。?!

 山名に付く語には、山、岳(嶽)、森、峰などがある。山が一番多く使われており、「やま」「さん」「ざん」「せん」と読む。一般に信仰の対象になっている山は「さん」(漢音読み)「せん」(呉音読み)と読むことが多い。富士山など。「せん」は中国地方に多い。大山(だいせん)、氷ノ山(ひょうのせん)など。
岳は、一般に高くて険しい山、岩稜からなる山に付くことが多い。中国、四国地方には岳のつく山は少ない。
森は、青森、秋田、岩手、愛媛、高知に多くある。頂上は深い森林ではなく笹原やかやとになっているものが多い。

【山笑う】=春山がいっせいに若芽をふいて明るくなる様子
【山滴る】=夏山が青葉でみずみずしい様子
【山粧う】=秋山が紅葉で色づく様子
【山眠る】=冬山が静まりかえった様子

やまあし【山足】【山側】/ たしあし【谷足】【谷側】

山の斜面を歩いたりスキーで滑る時に、いま山側(斜面の上のほう)にある足を山足、反対側の足を谷足という。

やまあるき【山歩き】

登山。趣味で野山を歩くこと。【山遊び】は3月3日、または4月8日に野で遊楽する行事。【山登り】は高山に登ること。

やまあんないにん【山案内人】

登山ガイド。賃金をもらって登山者を山へ案内し補佐する人。 日本の登山黎明期の山案内人には、上高地の上条嘉門次、内野常治郎、立山の宇治長次郎、佐伯平蔵、佐伯源治郎、南アルプスでは中村宗義、水石春吉、竹沢長衛などが有名。

やまおとこ【山男】

(1)登山家のこと。昭和30年代に「娘さんよく聞けよ・・・」ではじまる【山男の歌】が流行って一般の人に定着した。⇒岳人アルピニスト山屋
(2)深山に住む妖怪。山に住んでいる猟師や樵(きこり)など。
【山女】は山姥(やまんば/やまうば=女の妖怪)、またはヤマメ(渓流に住む魚)のこと。

【やまおやじ】{s}

熊のこと。山のぬし。

【山がそこにあるから】Because it is there.

英国の登山家ジョージ・マロリーが、講演の後で「なぜエベレストに登るのか」と聞かれて答えた言葉。日本では哲学的な言葉として有名だが、マロリーにとっては、「それはいまさんざん話したではないか」といった気持ちがあったのではないだろうか。

やまかい【山峡】

谷間。山の間、山と山との間の低くなっているところ。

やまかぜ【山風】/ たにかぜ【谷風】、やまたにかぜ【山谷風】

山頂から山麓に吹きおろす風を山風、山麓より山頂に吹きあがる風を谷風という。日中は山麓や山腹が熱せられて谷風が吹き、夜間には輻射による冷却でできた寒気により山風が吹く。一般に気圧配置が穏やかなときには、風速2〜3mの山谷風が吹いている。

【やまけい】{s}【山と渓谷】{c}

(1)田部重治の著書。⇒付録・山の名著 (2)山と渓谷社が発行している月刊登山雑誌。1930年創刊。⇒岳人

やまことば【山言葉】

猟師や樵(きこり)などが山に入ったときだけに使う言葉。⇒またぎ

やまごや【山小屋】mountain hut, mountain cottage{E}

登山者が宿泊したり休憩するための小型の家。山岳地にある宿泊施設。
悪天候など非常時に避難するために建てた山小屋を【避難小屋】という。一般に簡素な作りで、快適さは重視していない。避難小屋
小屋番(管理人)が常駐していないものは【無人小屋】という。一般に宿泊料無料で利用できるが、無人でも有料のものもある。
小屋番が常駐していて宿泊料をとるものを【営業小屋】という。⇒ヒュッテ、。

やましゃつ【山シャツ】

登山用の定番シャツ。ウールと綿の混紡でチェック(格子)柄。長袖でボタンカフス。襟付き、ボタンによる前立て。フラップつきの胸ポケット。長い着丈などが特徴。⇒カッターシャツ

やまスキー【山スキー】mountineering ski{E}

ゲレンデ(スキー場)ではなく山岳地を滑るためのスキー。一般にスキー板の横幅が広く全長が短い。バインディング(締め具)は歩行時は踵が上がり、滑降時は固定できる構造になっている。スキーには後退防止のシールをつける。⇒スキー登山
 同種のものに、クロカン(クロスカントリー)テレマークがある。山スキーは山岳地を登ったり滑ることに、クロカンやテレマークは平地を歩くことにポイントがおかれている。テレマークは回転する(曲がる)ときに、片足を前にだし膝を深く折る独特のスタイルをする。

【やませ】【山背】

山を越えて吹いてくる風。夏季にオホーツク海高気圧から吹き出す風で、北海道や奥羽東部の山々に寒気や冷雨をもたらす。 

やまたび【山旅】

登山をいうが、激しい登攀をするのではなく、のんびり山を眺めながら登山を楽しむこと。

やまたびくらぶ【山旅倶楽部】

「山と自然の旅」が会員に提供している有料サービス。国土地理院発行の数値地図を元にした地図データを提供する。地図を表示するソフトウエア【MapBrothers】や【カシミール】を使って、パソコン上で立体的な登山地図を見ることができる。

【ヤマタン】

富山県山岳警備隊が使っている遭難者探索システム。剣岳の冬季登山者に送信機を貸し出す。送信機は500円硬貨くらいの大きさのペンダントになっている。周波数53MHzの微弱電波を送信し、300mの範囲で傍受できる。受信機はヘリコプターに搭載、また地上の捜索隊が携行する。⇒ビーコン

やまはたぐも【山旗雲】

稜線から旗のようになびいている雲。山麓や山腹から這い上がってきた霧状の雲が山稜の風に吹き流されるもの。後立山連峰に出現するものが有名。

やまひと【山人】やまど

(1)日本の山間地に住んでいた人。背丈は2m以上、顔は赤く全身に毛があり、年中裸でいた。言葉は喋らぬか意味のない言葉をしゃべる。正直で人に危害は加えないが、だますと激しく怒り永く恨みを忘れない、など、柳田国男の「山の人生」に数多くの事例が載っている。漂着した外国人(白人)ではないかと思う。⇒イエティ

(2)山岳地に暮らしている人、山で生計を立てている人。

やまびらき【山開き】

講中登山で一般の信者が登拝できる期間の始まり。一般に7月1日あたり。北アルプスの山開きは、6月上旬に上高地で行われるウエストン祭であろうか。

やまめ【ヤマメ】【山女】

渓流に住む魚。サクラマス。イワナより下流に住む。

やまぬけ【山抜け】

山腹にある大崩壊地。山崩れ地。

やまのかみ【山の神】

山を支配する神様。女神とされている。農民や狩猟民にまつられている。

やまのはな【山の鼻】【山の端】【山のア】

尾根の先端部。枝尾根(山頂から谷に向かう尾根)を乗り越えて道があるとき【山の鼻を回る】という。
山の端を「やまのは」というと稜線の意味になる。

やまや【山屋】

登山家のこと。スキーヤーにたいする洒落(ヤマヤー) ⇒山男岳人アルピニスト

やまゆき【山雪】/ さとゆき【里雪】

雪の降り方が、山岳地では多いが平地では少ないものを山雪型、山岳地で少なく平地で多いものを里雪型という。西高東低の気圧配置のときには山雪型に、日本海に低気圧や前線があらわれるときに里雪型になる。

やまゆき【山行き】

山へ行くこと、登山。山地で働くこと。⇔田行き(稲田で働くこと)

やまよい【山酔い】

軽い高山病をいう。酸素不足によって、頭痛や吐き気がし、二日酔いのような症状になるため。⇒高度順化

〔ゆ〕

ゆうじんごや【有人小屋】

管理人が常駐している山小屋。1年を通じていつもいるとは限らない。(宿泊料)有料の山小屋。

ゆき【雪】/ こおり【氷】

登山技術では、ピッケルのシャフトが突き刺せるものを雪、石突き以上に刺さらないものを氷という。

積雪の種類

【あらゆき】【新雪】降ったばかりの雪。風や日射、気温上昇がないと数日間続く。純白
【しまり雪】日射や気温の上昇で雪の粒子が丸みを帯びた粒になったもの。白い
【ざらめ雪】昇華や融解が起こり大粒の粒子になったもの。灰色がかる
【霜ざらめ雪】粒が角張ってきて霜のようになったもの
【氷板】融解があった後に凍ったもの。

ゆきがくさる【雪が腐る】{s}

気温が上がって、雪がぐちゃぐちゃに柔らかくなった状態。

ゆきがた【雪形】

春に山の雪が部分的に解けて、残雪や地膚が物(人・牛馬・鳥など)の形にみえること。
  形でいちばん多いのは馬で、駒ヶ岳と名のある山はこれに由来するものが多い。
有名な雪形には次のものがある。
【代掻き馬】(白馬岳) 麓(安曇野)で苗代を作る頃に雪が解けて地肌が出た部分が馬に見える
【種蒔き爺さん】(爺ケ岳) 種をまいている人。早く現れるときは豊作
【蝶雪】(蝶ケ岳) 羽を広げた蝶
【武田菱】(五竜岳) 武田信玄の家紋
【鶏】(農鳥岳) 晩春に残雪が首の長い白鳥型になる。間ノ岳でも地肌が山鳥型になる。

ゆきくぼ【雪窪】

雪の浸食によって凹地になったところ。

ゆきけむり【雪煙】【せつえん】

積もっている雪が強風に飛ばされて舞い上がり煙のように見えること。

ゆきしぐれ【雪時雨】

雪が降ったり日がさしたりしている状態。

ゆきぞら【雪空】

いまにも雪が降り出しそうな空模様。
雪が降りそうで、どんよりと暗い様を【雪ぐれ】、雪が降る前になる雷を【雪起こし】、雪が降ってきそうな雲を【雪雲】という。

ゆきだわら【雪俵】【雪まくり】

雪の塊が斜面を転がって、まるでロールケーキのように、巻き上がったもの。

ゆきやま【雪山】

雪が降り積もっている山。冬山
【雪山賛歌】アメリカ民謡(クレメンタイン)に西堀栄三郎が詞をつけた山の愛唱歌。「雪よ岩よわれらが宿り・・・」

ゆきやまさんしゅのじんぎ【雪山三種神器】{s}

ビーコン(雪崩に埋もれた人を捜す電波探知機)、プローブ(埋没者を探す棒)、スコップ(雪かき用)をいう。

ゆきやまそうび【雪山装備】【冬山装備】

積雪期の登山に必要となる道具類。ピッケル、アイゼン、ワカン、スコップ、防寒具など。

【ユマール】Jumar{c}

垂直につるされたロープを登るための器具、登高器。商品名、社名。カムの働きにより一方にしか移動しない仕組みになっている。スイス人E.Jusi(ユシィ)とW.Marti(マルティ)によって1959年に考案された。二人の名前が語源。⇒アセンダー

【ユポ】

ガイド地図などに使われている合成紙。破れぬくく、水濡れに強い。

〔よ〕

【ヨーデル】Jodel{G}

ヨーロッパ・アルプス地方の牧人たちが歌った民謡。またはその歌い方。地声と裏声を織り交ぜて旋律を作ったり、裏声の合いの手「イョッホホホー」を入れる。⇒ヤッホー

よっかめのひろう【四日目の疲労】

入山後の4日目あたりに疲れがどっと出てくるというもの。

よびこ【呼び子】【ホイッスル】whistle{E}【笛】

合図のためにつかう笛。遭難時に救援を求めたり、クマ避けのために持っている人もいる。

よびび【予備日】

長期の山行計画で、悪天候に備え、日程に余裕を持たせるために組み込んでおく日。

よびしょく【予備食】

予備の食料。悪天候などのアクシデントによって日程が伸びたときのための食糧。非常食とは異なる通常の食糧。⇒行動食