〔か〕

【カートリッジストーブ】cartridge stoves{E}【カートリッジ】

ブタンガスなど燃料となる気体を詰める金属性の容器をカートリッジという。それにバーナー部(火口)をネジで止めるタイプのストーブ(コンロ)。cartridge[弾薬筒]。ストーブガスストーブ
【ガスカートリッジ】には、【レギュラー】=ハイキング、夏山用。【ウィンター】【寒冷地用】=冬用、一般登山用。【エキスペディション】=高山・極地用、などがある(名称はメーカによって異なる)。

【カービングタイプスキー】carving type ski{E}

スキーの板がトップ(先端部)とテール(後端部)で幅広く、中央部で狭くなっているもの。ターンするとき(曲がるとき)に曲がりやすい。最近の山スキーの主流になっている。
【カービングターン】板をずらして曲がるのではなく、エッジ(板の横端)を雪面に食い込ませて(雪を削るようにして)ターンする技法。
カーブはcarve[彫る]でcurve[曲がる]ではない。carving[彫刻]

【カール】Kar{G} けんこく【圏谷】

氷河の侵食で円形(U字型)に窪んだ谷。山頂直下の斜面が、まるで巨大なスプーンででもえぐられたかのように窪んでいる地形。Kar[カール]

【カールバント】Karwand{G} けんこくへき【圏谷壁】

カールを形成している、山腹の急峻な岩壁。Wand[壁]
?!そんなところで女性をお茶に誘ってもねぇ!?

【かい】【峡】

両側から山が迫ってきて狭くなっているところ。

かいじょ【解除】【オフビレイ】off-beley{E}

ロープによるビレイ(確保)を解除してよいという掛け声。クライマーが終了点に到着して、セルフビレーを取り、ビレーヤーのロープによるビレイが不要になったときに「解除!」や「ビレー解除!」などと声をかける。⇒リーダーリード

がいすい【崖錐】

カール(圏谷)などの懸崖から落ちてきた岩屑がたまってできた堆積物、半円錐状の地形。涸沢などにみられる。⇒カールデブリ

かいせき【開析】【開析谷】

台形状の地形が雨水によって削られていくつもの谷が作られること。そうしてできた谷

かいちゅうでんとう【懐中電灯】【フラッシュライト】flashlight{E}

携帯型照明器具。電池式で、ポケットに入る小型の燈火をいう。マグライト{c}やヘッドランプなどがある。
懐中[ふところ、ポケット]、flash[閃光]。⇒ランプ乾電池

【ガイド】guide{E}【山岳ガイド】【登山ガイド】

山案内人。登山者を案内して山に登ることを職業としている人。発祥はヨーロッパアルプスのシャモニ(1821年)。ミッシェル・クロスやシャック・パルマ、あるいはグリンデルヴァルトのクリスチャン・アルマー(Christian Almer)などが有名。日本の登山黎明期には上高地の上条嘉門次、立山の宇治長次郎、佐伯平蔵などがいた。

【ガイドレス】guideless{E}【サンギイド】sansguide{F}【フューラーロス】Fuhrerlos{G}

山案内人なしの登山。登山の黎明期では、山案内人や人夫を雇って登るのが普通であった。それに対して、自力で登ることを本分とする登山をいう。⇒アルパインスタイルポーラメソッド金の時代

かいばつ【海抜】【海抜高度】

海面から計った高さ。標高。

がいねんず【概念図】【ガイコツ図】{s}

尾根と沢を表す線で描いた、山の地形を見るための略地図。山岳地の骨格を描いているので骸骨図ともいう。ピーク、コル、山小屋、水場、ルートなど登山に必要な情報も盛り込んである。⇒遡行トポ

かいほうぎょう【回峰行】【千日回峰行】

修験道の修行のひとつで、山中の各所にある霊所を礼拝する荒行。

【カイロ】【懐炉】

懐(ふところ、ポケット)に入れて体を温める器具。ベンジンを燃やす【白金懐炉】と鉄粉の化学反応を利用する【使い捨てかいろ】がある。

かがんだんきゅう【河岸段丘】

台地が河川によって削られてできた階段状の地形。

がきのたんぼ【餓鬼の田圃】

山中にある湿原。餓鬼(地獄の亡者)が作った田の意味。【神の田】ともいう。

がくじん【岳人】

(1)登山家。「山男」よりも気取って使われる。
(2)東京新聞社が発行している月刊登山雑誌。1947年創刊。⇒やまけい

かくしんぶ【核心部】

クライミングなどで、ルート中の一番難しい箇所。核心[ものごとの中心となるところ]

かくせんせき【角閃石】【角閃岩】

カルシウムやナトリウムなどを含む斑晶状(黒い点々がある)の鉱石。

かくとくひょうこうさ【獲得標高差】

交通機関によらないで(自らの足で)登り降りしなければならない標高の差。獲得標高差が1500m以上あると、かなり健脚向きのコースといえる。

かくほ【確保】

転落を防止するために、ロープなどで体を固定物などに結び付けること。⇒ビレイアンカー三点支持
【確保点】【プロテクション】=確保をするために岩に取り付けたハーケン、ボルト、ナッツなど

かくほき【確保器】【確保器具】【ビレイデバイス】

クライマー(いま登攀している人)を確保するために、ビレイヤー(確保する人)が使うロープ固定器具。クライマーが登っているときはロープを繰り出すが、墜落したときには確保器を操作して(一部の器具では自動で)ロープを固定し、墜落を防ぐ。【エイト環】【ATC】【チューバ】【ルベルソ】【グリグリ】などがある。

かげふじ【影富士】

朝日や夕日などによって(雲海上などに)できる富士山の影。湖水に映る富士山の姿。

かこうがん【花崗岩】

地下深部でマグマがゆっくり冷却してできた岩(深成岩)のひとつで、粗粒であるが粒がそろった白っぽい岩石。堅牢でクライムには適している。

かこうき【下降器】【デサンドール】descendeur{F}

急崖に固定したロープを使って下るときに使用する用具。アラン、エイト環など。

かごわたし【籠渡し】【かごのわたし】【ざるわたし】

川を渡るための方法、装置。対岸にワイヤーを張り、それに籠(人が数人乗れる箱)をぶら下げ、ロープを人力(乗っている人)で引いて移動する。【やえん】【野猿】ともいう。
 この他に、ワイヤーを2本(上下に)または3本(逆三角形に)張ってあって、それに掴まって(籠などの器具を使わずに)渡るものもある(あった)。

かさいりゅう【火砕流】

火山噴火の時に高温の火山灰や岩塊などが雪崩のように斜面を落下する現象。

かさぐも【笠雲】

山の頂上付近に、笠のようにまとわりついている雲。富士山の笠雲は有名。強風が山の斜面を吹き上げているときに発生するので、悪天候の前兆になる。

かざはな【風花】ふっこし【吹越】

晴れているときに、まるで花びらが舞うようにちらちらと降ってくる雪。脊梁山脈で降った雪が山脈を越えて風下側に流されてきたもの。

かざん【火山】

地下のマグマ(高温のため溶解した岩石)が地上に噴出してできた山。
 シュナイダーによる山容からの分類【アスピーデ】(盾状火山、やや平)、【コニーデ】(成層火山、富士山型)、【トロイデ】(鐘状火山、丸まっこい)などがあり、古い登山技術書には良く載っている。最近の研究では、その成因などに不都合な部分があり、使用を避ける傾向にある。
【活火山】とは、現在活動中の火山、および過去2000年以内に噴火した火山。富士山は以前は休火山に分類されていたが、現在では活火山とされている。

【カシミール】【カシミール3D】

数値地図のデータをパソコンで地図として表示するソフトウエア。DAN杉本氏製作のフリーソフト。立体感のある地図(1/25,000など)を表示したり、ある場所(都市や山頂など)から周りの山の景観を実物のように見ることができる。3Dは3-dimension 三次元のこと。⇒数値地図

【カシミール】Kashmir

ヒマラヤ西部地域。インドとパキスタンが領有紛争をしている。

【ガス】{J} のうむ【濃霧】fog{E}

を表す山の俗語。濃霧に包まれて視界が効かなくなることを【ガスがかかる】【ガスにまかれる】などと表現する。
気象学では視程が200m未満のものを濃霧という。⇒きりしょん

【ガスストーブ】gas stove{E}

ガス(気体燃料)を使った調理用火器(レンジ)、コンロ。ブタンガスやプロパンガスなどを詰めたカートリッジ(金属容器)に、バーナー部をネジ止めするタイプのコンロ。現在主流のコンロ。ストーブカートリッジ
ガスストーブ

【オートイグナイター】=点火装置。ボタンを押すとバネとハンマーによって圧電体(セラミックの一種)に衝撃が加えられスパーク(放電)を発生し、ストーブに火をつける。

かせいがん【火成岩】

マグマが冷え固まってできた岩石で、花崗岩、安山岩、玄武岩などがある。

【ガソリンストーブ】

ガソリン(場合によっては灯油など他の液体燃料)を燃料とする調理用火器(コンロ)。プレヒート(予熱)が必要など取り扱いの面倒さでガスストーブに劣るが、高地や冬山など極寒状態でも安定して燃焼するのが利点。燃料には次の種類があり、複数の燃料が使えるストーブもある。
【ホワイトガソリン】=添加剤を含まずオクタン価は低い。無着色。一般に登山用品店などで入手。
【無鉛ガソリン】=有機鉛化合物を含まない。オクタン価は高い。一般にガソリンスタンドで入手。
【ケロシン】【灯油】=ガソリンスタンドで売っている灯油。石油ランプや石油ストーブ(暖房機)の燃料。
【白灯油】=精製度が高い灯油。無色

【デタッチャブルタイプ】=バーナー(燃焼)部と燃料タンクを分離したタイプ
【ジェネレータ】=気化促進パイプ。バーナー部にあるパイプで、ここを燃料を通して予熱する。
【ウィック】=予熱する際に燃料を染み込ませる芯。

かた【肩】shoulder{E}【ヨッホ】Joch{G}

山頂に近いところに張りだした平らな稜線の部分。山の頂上を頭と見て、肩に相当する部分。山頂近くの平坦地。

【かたかい】【片峡】【かたしな】【片品】

川の片側が山で反対側が平地であるような地形。「しな」は斜面のこと。

かたかくほ【肩確保】

登攀者をザイルで確保するための技法。登攀者に伸びているザイルを右手でもち、そのザイルを右手から肩を通して左脇腹にまわし左手で持つ。両手と肩・背中のフリクション(摩擦)でザイルを確保する。
最近は、ATCやエイト環などの確保器具があるので、あまり使われない。⇒懸垂下降

かたがらみ【肩がらみ】

懸垂下降をする(ザイルを使って岩場をおりる)とき、エイト環などの器具を使わないで降下する技法のひとつ。上方から降りてきたザイルを股(左足の太もも)の下を回し、体の前を通して右肩から後ろに回し、左手で脇腹に押さえ込む。左手で制動を調整しながら降下をする。

【カッターシャツ】{c}

襟(えり)とカフス(袖口)のある長袖シャツ。柄物のワイシャツ。スポーツシャツ。日中戦争の頃、スポーツ用品メーカーのミズノが作ったシャツ。語源は「勝った+シャツ(shirt)」。
 シャツの語源は、ゲルマン語のshort(女性用の短いガウン)からきている。それから上半身に着るものをシャツ、下半身に着るものをスカートというようになった。カッターシャツとニッカーボッカはかつて典型的な登山スタイルだった。⇒ニッカーボッカ

がっち【合地】

二つ以上の山稜が合流した地点。

【カットステップ】cutstep{E}

氷壁や雪の斜面にピッケルなどで刻んで作った足場(足が乗る平らな部分)。足場を刻むことを【カッティング】という。⇒足場切り、⇔キックステップ

【かっぱ】【合羽】【雨合羽】【カッパ】capa{P}

雨具。雨のときに着る頭巾(頭にかぶる布)付きの外套(がいとう/マント)。ポルトガル語(元はラテン語)から日本語になったもの。cappa{La}[頭巾]

かつらく【滑落】

氷雪の急斜面などで、足を踏み外したりバランスを崩して、斜面を滑り落ちること。⇒転落

かつらくていし【滑落停止】

雪や氷の斜面で、転落(滑落)したときに、ピッケルのピック(尖った方)を雪面に打ち込んで停止する技術。利き手でピッケル頭部を持ち(ピックを小指側)胸のあたりに保持し、反対の手はシャフトを握る。体を反転してうつぶせになり、ピックを氷雪面に打ち込んでブレーキを効かせる。バランスを崩した瞬間にこの操作をしなければ停止させることは難しい。⇒初期停止

かどうぶんさん【可動分散】【流動分散】

確保支点にかかる荷重を分散すること。2個の支点をスリングでつないで1個の支点として使用するとき、スリングを1回ひねってそこにカラビナをかける。こうしておくと、カラビナが移動して各支点に荷重が均等にかかる。万一片方の支点が抜けても、カラビナはスリングから抜けない。ただ、スリングの長さ分落下するので抜けなかった支点に衝撃が加わる。

【カトラリー】cutlery{E}

ナイフ、フォーク、スプーンなど食卓用の刃物類。食器、武器

【ガバ】【がば】【カチ】【かち】{c}

クライミングで、しっかり掴むことができる比較的大きなホールド(手がかり)を俗にガバと言う。「ガバッと掴める」から。
小さなホールドだから指がしっかりかかるものはカチという。「かっちりしている」から。

【かま】【釜】

(1)渓谷にある円形の。滝の下にできるものは【滝壷】といい、滝のない場所にできるものを釜と区別することもある。⇒おうけつ
(2)火山の噴火口。

かまおね【鎌尾根】

鎌の刃のように薄い(横幅の狭い)尾根。槍ヶ岳の東鎌尾根・西鎌尾根・北鎌尾根など。【剣の戸渡り】【蟻の戸渡り】ともいう。⇒ナイフリッジ馬の背

かまぼこ【かまぼこ型テント】

半円筒形型のテント。昭和11年ナンダコット遠征隊の堀田弥一隊長等が開発した。それまでのウィンパー型テントよりも強風に強く、居住性がよかった。

かみなり【雷】

激しい上昇気流があると、その中にある雪の結晶と雹(ひょう)や霰(あられ)が衝突し、雪の結晶は正(+)に、雹や霰は負(-)に帯電する。その電荷が一定以上になると放電現象が起こる。それが雷である。雲と地面との間の放電現象を【落雷】という。
【界雷】かいらい= 寒冷前線付近の上昇気流で生じる雷。
【熱雷】ねつらい=日差しで熱せられた上昇気流によってできる雷。
【雷三日】= 雷は3日間くらい連続して発生するということわざ。

【カミナリ登山】{s}

無謀な登山行為。「カミナリ族」からの派生語。カミナリ族とは、騒がしい爆音を立ててオートバイを乗り回す若者のこと、暴走族。1959年ころ流行った。

【カミーン】Kamin{G}【カミン】

岩壁にある、体が入るくらいの大きな割れ目。チムニー。[暖炉、煙突]

【カム】cam{E}【カミングデバイス】Camming Device{E}

半円形のギアを複数(普通4枚)組み合わせた器具の総称。フレンズ、キャメロット、エイリアンなどがある。クライミングにおいて、クラック(岩の割れ目)に差し込んでプロテクション(確保するための支点)とするもの。⇒フレンズ
本来のカムは、(エンジンなどに使われている) 回転運動を往復運動に変えるための変形楕円型の部品。

【カム】Kamm{G}

のこぎりの歯のようにでこぼこになった山頂や尾根。[櫛]。⇒シエラ

【かもしか山行】【カモシカ山行】{s}

行動食、水、ライトなど最小限の装備だけを持ち、夜も寝ないで長い距離を歩き続ける登山形式。語源は中村謙氏(ペンネーム:加茂鹿之助)の山行形式から。

【カモシカのような】{s}

岩場やガレ場で、小石をばらばら落としながら登ることを「カモシカのような登り方をする」と揶揄していう。⇒落石
  「カモシカのような脚」というと、すらりと伸びたきれいな脚をいうが、日本の山岳地に生息しているカモシカの脚は、(人間の審美感によると)お世辞にも脚線美とはいえない(カモシカにとって迷惑な話ではある)。

【かやと】【茅戸】

カヤの茂った尾根。カヤやススキはなくても、のんびりした感じがする、なだらかな草地の斜面や尾根をいうこともある。

【カラコルム山脈】【カラコラム】Karakorum Range{E}

パキスタン・カシミールの北東にある山脈。最高峰はK2。トゥルク語で[黒磯]の意味。⇒K2

からさわ【涸沢】【涸れ谷】

水が流れていない沢。水が干上がった沢。雨が降ったときだけ水が流れる谷。
かれだき【涸滝】=普段は水が流れていないが、水量が増したときだけにできる滝。

からみ【空身】

(1)ザックなどの大きな荷物を持たないこと。例えば、頂上まで行ってくるのに、ザックを置いて荷物なしで行くときなどに使う。⇒ピストン
(2)連れの無いこと。

【からむ】【搦む】

山の稜線を行かずに(頂上へ行かずに)山腹を横切ること。【腹搦み】ともいう。支尾根を乗り越えてゆくこと。「搦」はからめる。捕まえる、縛ること。トラバースのこと。

【カラビナ】Karabiner{G} carabiner{E}【ビナ】biner{E}

バネ式の開閉部がある金属製の輪。プロテクション(確保点)とザイルを繋ぐ、スリングやハーネス(安全ベルト)を繋ぐなど、様々な登攀器具を接続するための器具。
開閉部は【ゲート】という。ゲートを固定できるタイプを【安全環付きカラビナ】という。材料はアルミ合金やジュラルミンなどが使われる。⇒安全環なすかん
その形によって【オーバル型】(楕円型/O型)、【D型】、【変形D型】(現在の主流)、【HMS型】(洋梨型) などがある。ゲートがくの字型に湾曲しているタイプを【ベントゲート型】という。数は1枚2枚と数える。
1910年ころに、消防士が使っていた用具にヒントを得て作られた。
安全環つきカラビナ

【ガリー】gully{E} goulet{F}【リンネ】Rinne{G,F}

もろい岩が詰まった狭い谷。急峻な岩溝でルンゼよりも小さいもの。縦溝。⇒クーロアールリンネ
gully[小峡谷・溝]、goulet[山間の狭い道]、Rinne[溝]

かりばらい【刈り払い】きりひらき【切り開き】

草を刈ったり、やぶを伐採すること。登山道のないところに道をつけるために伐採することを切り開きといい、道はあるが草が茂って覆われているときに草を刈ることを刈り払いという。

【カルスト】【カルスト地形】Karst{G}

石灰岩地域で水の浸食によって生じた地形。一般に、草原のなかに白い石灰岩が点在している風景を呈する。
地表から地下水系への水の入り口付近にできる小さい窪地を【ドリーネ】Doline{G}という、それが大きくなったものを【バーレ】Uvala{E}、さらに大きなものを【ポリエ】Polje{G}という。

【カルデラ】caldera{E}

火山の爆発や陥没によってできた大きな(半径4km以上)窪地。ポルトガル語で[鍋]。そこに水が溜まってできた湖を【カルデラ湖】という。

【がれ】【ざく】【がら場】【がれ場】scree{E}

砕石の堆積した斜面。がけが崩れて岩石がごろごろしているところ。「ざれ」より石が大きい。傾斜角が30度以上の急なものを「がれ」といい、それより平らな場を「がらば」という。⇒ごうろ

【カレンフェルト】Karrenfeld{G}【墓石地形】

石灰岩の断層に沿って溶食が進み、岩柱となったものが林立している地形。溶食によって溝状になった地形は【カレン】または【カルレン】という。

がんかいしゃめん【岩塊斜面】

大きな岩の塊に覆われた斜面。岩に染み込んだ水が凍って岩を破壊し(【凍結破砕作用】)、割れた岩が斜面の下のほうにゆっくり移動してできたもの。
岩塊が舌のような形に堆積しているものを【岩塊流】という。

【かんじき】【わかんじき】【わかん】【かなかんじき】

靴が雪に潜らないようにするために靴につける楕円型の器具。スノーシューズ。かなかんじきの「かな」は金属製のことで、アイゼンを意味する。⇒アイゼンわかん

【カンテ】Kante{G}

(1)岩壁に突き出した稜角。縦方向にのびた凸型の岩角。フェース(のっぺりした岩)を折り曲げたような岩角。リッジよりも傾斜が急なもの。[稜]。⇔コーナー
(2)スキー・ジャンプの踏み切り台の先端部。

かんてんぼうき【観天望気】

雲や風など自然の状況を観察して天候の推移を判断すること。

【カンデラ】cd, candela{E} しょっこう【燭光】

国際単位系(SI)の光度(光源の明るさ)の単位。以前は燭(しょく)が使われていた。もともとはローソク1本の明るさ。candela[ろうそく]{L}

かんでんち【乾電池】dry cell{E}

電解液が液体でなく糊状などになっている電池。充電ができない電池を一次電池という。⇒ランプ懐中電灯
【マンガン】mangaan= いちばん標準的な乾電池。電圧は1.5V
【アルカリ】alkali= パワーがあるが重たい。規格サイズはマンガンと同じ。
【オキシライド】=アルカリより電流量が大きく電圧が高い(1.7V)。デジカメに適す。
【リチウム】lithium= パワーがあり軽く長期保存が利く、寒さにも強い。カメラやヘッドランプに使われる。
他に、酸化銀電池、空気乾電池などもある。
 乾電池をサイズで分類すると、単一(LR20)、単二(LR14)、単三(LR6)、単四(LR03)、単五(LR1)などがあり(括弧内はアルカリ乾電池の型番)、数字が大きいほど小さい。リチウムには種々の形がある。登山では、単三型、単四型が多く使われる。

 充電できる電池を二次電池といい、登山で使われるものに以下のものがある。

【ニッカド】【ニッケルカドミウム】【NiCd】メモリ効果やカドミウム汚染問題で最近は使われなくなりつつある。
【ニッケル水素】【NiMH】ニッカドより容量が大きく、メモリ効果が起こりにくいが、電圧が低い(1.2V)
メモリ効果とは、完全に放電しないで充電をすると、本来の動作時間よりも短くなってしまう現象。
二次電池には他にリチウムイオン電池(ノートパソコンで使われている)、鉛蓄電池(自動車のバッテリ)などもある。

かんとう【完登】

クライミングで、ひとつのルートを登りきること。
フリークライミングでは次のような完登がある。
【オンサイト】【オンサイトフラッシュ】=事前に他人が登っているのを見ることも、ルートに関する情報を得ることもできずに(グレイドやボルトの数などは得られる)、1回で登りきること。
【フラッシュ】=始めてそのルートに取り付くが、他人の登りを見ることも、情報を得ることもできる。
【レッドポイント】=初回ではなく、登りきること。

がんとう【岩頭】

岩の上、または、岩の突端。⇔【岩根】いわね、岩の根元。

がんぺき【岩壁】【巌壁】いわかべ Felsenwand{G} Bergwand{G}

壁のようにそそり立っている岩。険しく切り立った大きな岩。

かんぼく【灌木】【潅木】ていぼく【低木】

人間の背丈(2m)くらいか、それよりも低い樹木のこと、それが生い茂っている樹木帯。大きな幹がなく、根元からそのままいくつもの枝に分かれているような木。「灌」は水を注ぐこと(灌漑など)、群がり生える木のこと。「潅」は略字。⇔【喬木】きょうぼく、【高木】こうぼく
 森林限界以下で灌木が茂っている場所を【藪】やぶ、あるいは「ブッシュ」という。森林限界以上の高山帯ではハイマツが低木の代表だが、ダケカンバやシラビソなども積雪や強風のために低木になる。⇒薮漕ぎ森林限界

がんりょう【岩稜】

急峻な岩の尾根。⇒おね
稜は多面体の面と面との境をなす線分のこと。

〔き〕

【ギア】climbing gear{E}【ガチャ】{s}

登山用具またはその一式。おもに登攀用の器具類をさす。ガチャは、複数の器具をまとめて持っていると「ガチャガチャ」と鳴ることから。⇒装備
【ギアラック】=ハーネスに縫い付けられている、カラビナなど登攀器具を所持するためのループ。
【ギアスリング】=登攀器具を所持するためのたすき(ベルト)。

きうま【木馬】きんま【木ぞり】

山地から平地へ木材や木炭などを運ぶために使われた木製のそり。人力で引く。雪のないところでは、道に枕木を置きその上を滑らして運んだ。その道を【きうまみち】【木馬道】という。現在使っているところはないと思うが、1mほどの道幅で、緩やかな下りの平坦な登山道があったら、かつてきうま道であったかもしれない。
【牛馬道】は、牛や馬の背に荷物(例えば鉱石など)を載せて運んだ道。木馬道に似て平坦な道だが、所々に段差があったりする。

きさめ【樹雨】

外は晴れているのに森の中に降る雨。森林地帯に霧がかかると、樹木の枝や葉に水滴がつき、それが雨のように降る現象をいう。

【きじうち】【雉撃ち】【キジ撃ち】{s} のぐそ【野糞】

山中のトイレのない場所で用をたすことを俗に「きじをうつ」という。猟師がキジを撃つときの姿に似ているから。派生語に【大きじ】【小きじ】【からきじ】【きじ場】【きじ紙】【きじ心】などがある。からきじはおなら。キジ場を【猟場】ともいう。キジ心は便意をもよおすこと。「いかん、きじごころが高まってきた」などと使う。きじうちは男性が使い、女性は「お花を摘む」という。
!?ところかまわずに大キジを撃つやつを「クソッタレ」という?!

ぎじこうてん【疑似好天】

悪天候の中で一時的に天気が回復する現象。例えば、日本海と太平洋岸を二つの低気圧が通過する時などにみられる。30分から1時間後には大荒れの天気になるが、好天にだまされて行動して遭難事故を起したりする。

きじし【木地師】

椀など漆器を作るための木を求めて山々を渡り歩いた人々。

きしょうつうほう【気象通報】

NHKのラジオ第2放送で毎日3回放送されている気象の情報。日本と周辺各地の風向、風力、天気、気圧、気温、および低気圧、高気圧、前線の位置などが報告される。これを聞いて天気図を作成する。

【キスリング】Kissling{G}

帆布でできた大型のザック(リュックサック)。両脇に大型のポケットが付き、とじ口は巾着(きんちゃく=昔の財布)型に紐で縛るようになっている。
 スイス、グリンデルヴァルトの馬具職人 ヨハネス・ヒューフ・キスリングが作ったものを、昭和4年に槙有恒と松方三郎が持ち込んで、日本ではこの名が定着した(キスリング氏が発明したわけではない)。日本でのキスリング製作者としては片桐盛之助が著名。かつては登山やワンゲルの代表的なザックだった。
 内容量を自在に調節できるのが大きなメリットだが、横に幅広いので岩場などでは邪魔になるし、パッキングの際に重心のバランスをとりぬくいなどの欠点のため、最近はアタックザックなどに取って代わられている。⇒タッシュ

きせつえいぎょう【季節営業】

山小屋やバス、リフトなどが一定の期間(例えば5月の連休や夏休みの間)の間だけ営業すること。交通機関の場合は【季節運行】ともいう。⇒冬季小屋

きせつふう【季節風】モンスーン

季節によって風向きを変える風。日本付近では、夏は南東から(海洋から大陸へ)、冬は北西から(大陸から海洋へ)吹く。後者を【北西の季節風】という。

【キックステップ】kick step{E}

固い雪の斜面をアイゼンを着けずに登山靴のままで登るときの技法。靴の重さを利用し、膝から下を振り子のように振って、靴の裏全体を雪面に叩きつけて雪に食い込ませ、瞬時に足場を作りながら登る技法(歩き方)。⇒足場切り
 アイゼンをつけた状態でも、硬い氷上ではキックステップを使う。

【キックターン】kick turn{E}

スキーで(停止しているときに)180度方向転換をする技法。谷側の足を持ち上げてスキーのテールを雪面につき、180度回転させてスキーを平らに置く(スキーのトップは後向く)、山側のスキーを旋回して足を揃える(体がいま来た方向に向く)。

きつねのよめいり【狐の嫁入り】

日が差しているときにときおり降る雨。

きつりつ【屹立】

尖った山頂や大きな岩などが聳え立っているさま。

きばけ【木化け】【木ばけ】

(人間が)木に化けること。
例えば、スズメバチの巣に近づくと偵察蜂が来る。それを刺激すると大群で襲撃される。そこで、何もせずそのまましばらく木になったつもりで静止して動かないでいる。この動作を木化けという。

きぼし【着干し】

雨や汗で濡れた衣服を、脱がずに着たままで(体温や日光で)乾かすこと。

ぎゃく-【逆クリップ】

ロープの伸びてゆく方向にカラビナのゲートがある状態。カラビナにロープを通すとき、上側(自分の体側)のロープがカラビナの下から抜けている状態。写真で、右上に伸びているロープ(クライマー側)が左下に落ちると、ロープがゲートを押して開き、ロープがカラビナから外れてしまう。こういうロープの通し方をしてはならない。
逆クリップ

【キャメロット】

ブラックダイヤモンド(シュイナード)社が開発したカム。カムとは半円形の歯車を複数組み合わせたプロテクション(確保支点)用の器具。

【キャラバン】caravan{F}

ヒマラヤなどの登山において、交通機関末端からベースキャンプまでの行程。
本来は、隊列を組んで砂漠を行く商人のこと。元はペルシャ語。

【キャラバンシューズ】{c}

軽登山靴。皮製の本格的な登山靴に対してナイロン地の登山靴。昭和27年に佐藤久一朗氏と藤倉ゴム工業(株)が共同で作った登山靴。マナスル登山隊がアプローチ用として使用した。昭和30年代の代表的な登山靴で、ナイロンのアッパーにゴム底で、土踏まずにトリコニーという鋲がついていた。

【キャンティーン】canteen{E}

飲料水を入れる容器。水筒。語源はイタリア語の酒蔵(cantina{I})

【キャンプ】camp{E}

(1)テントを張って宿泊、炊飯をすること。⇒幕営露営
(2)ヒマラヤなどにおける登頂のための前進基地、C1,C2,C3などと表す。⇒アタックキャンプACポーラー・メソッド

【キャンプサイト】campsite{E}【キャンプ場】【テン場】{s}【幕場】{s}

テントを張ってキャンプができる場所、キャンプをすることが認められている場所。野営地。幕営地。俗にテン場(天場)や幕場ともいう。⇒のじんば
キャンプが認められている場所を【キャンプ指定地】、キャンプができる場所を【キャンプ適地】と区別する場合もある。

【キャンプファイア】campfire{E}

キャンプの夜に、みんなが集まって焚き火をすること、または火を囲んで歌ったり踊ったりすること。⇒たきび

きゅうとう【急登】

傾斜が急な登山道。急坂。山の斜面など地形が急なことではなく、道が急なことをいう。

きょうこく【峡谷】

川幅に比べて深さが著しく深い谷。

ぎょうかいがん【凝灰岩】

火山灰が降り積もり固結してできた岩石。もろい。

きょくそうりん【極相林】

樹木の群落が種々の遷移を経て、その地域の環境に適合した安定な状態になったもの。ブナ林は一般に極相林になる。

きょすいりん【拠水林】かわべりん【川辺林】

草原を流れる川に沿って、その川の近くだけに帯状に茂る林。

きり【霧】/ もや【靄】/ かすみ【霞】

ごく小さな水滴が空中に浮かんで視界が悪くなる現象。⇒ガス
霧 =秋にできるもの。自分の周りに漂って自分を包むので、全体の形はわからない。密度は濃い。気象学では視程が1000m以下のもの。
靄 =遠くに低くたなびき白い煙のようにみえる。密度は中程度。気象学では視程が1000mを超えるもの。
霞 =春にできるもの。遠くに高くたなびき、薄い雲のようにみえる。密度は薄い。気象学では規定がない。夜の霞は朧(おぼろ)という。

【きりしょん】きりしょんべん【霧小便】{s}

濃霧の中で降る細かい雨。⇒ガス

【きりどうし】【切り通し】【きりとおし】

枝尾根などを越えるところで、尾根部を凹型に掘り下げて道にしたところ。⇒うと

きりひらき【切り開き】

灌木や笹などに覆われている登山道を刈り払いして(木などを切って)通れるようにすること。

【キルティング】quilting{E}

刺し子縫いをした防寒用布地、またはそれで作った上着など。quilting[刺し子縫い] ⇒ダウンベスト
【刺し子縫い】とは、2枚の布地の間に綿や羽毛などの断熱材を詰めて、十字やダイヤ型に縫いとめる技法。元は津軽や南部の漁民や農民が古布や手織りの麻を重ね縫いして作業着としたもの、その縫い方。

【きれっと】【きれと】【切戸】【ギャップ】gap{E}【シャルテ】Scharte{G}【ブレーシュ】breche{F}

山稜がV字型に深く切れこんで低くなっているところ、割れめ。風隙(ふうげき)。 一般にまどよりも幅が狭い。
【キレット】とも書くが日本語。Scharte/breche[刃こぼれ、割れ目、城壁の銃眼]

【キンク】kink{E}【まきこぶ】

ロープがよじれること。ロープが「の」の字型にきつく曲がって曲がり癖がつくこと。きついキンクをつくるとロープが切れやすくなる。

ぎんざ【銀座】

登山者の多い登山コースのこと。【表銀座】=燕岳から槍ヶ岳へ至るコース。【裏銀座】=烏帽子岳から槍ヶ岳へ至るコース。

きんだいとざん【近代登山】

日本に古来からある宗教的な登山(講中登山)に対して、明治中期に勃興したスポーツとしての登山をいう。小島烏水などが先駆者。⇒登山 アルピニズム

きんのじだい【金の時代】【銀の時代】

アルプス登山の黄金期をなす二つの時代。1854年のヴェッターホルン初登頂から1865年のマッターホルンの初登頂までの間を金の時代という。モンテローザやアイガーなどアルプスの主要な山が初登頂された時代。英国山岳会の会員など経済的に余裕のある紳士階級がガイドや人夫を雇って、氷河から頂上を目指す登山であった。
 それに対して、1865年から1882年のエギーユ・デ・ジュアンの初登頂までの間を銀の時代という。主にドイツなどの若者が中心となり、ガイドレスでバリエーションルートを開拓したり、岩壁や岩峰を登攀する登山が中心になった。

〔く〕

【クーロアール】couloir{F}

峡谷、回廊。傾斜が急で、深い岩溝。リンネ(ガリー)の急峻なものをいう。ルンゼにちかい中間のもの。[廊下・通路]。⇒ゴルジュ

【クイックドロー】quick drow{E}

2個のカラビナを短いスリング(テープ、帯)でつないだもの。[拳銃や剣をすばやく抜くこと]。⇒ヌンチャク

【くえ】【崩】【潰】【やまぬけ】

土や岩が崩れた場所、地形。

くさつき【草付き】

丈の短い草に覆われた急斜面。滑りやすいしつかまるものがないので登りぬくい。

くさもみじ【草紅葉】

(樹木ではない)高山植物の葉が赤や黄になったもの。チングルマなど、草のように見える樹木が紅葉したもの。

【くさりば】【鎖場】【クサリ場】

縦走路などで、険しい岩場などに、安全のために鎖が取り付けられている場所。梯子を取り付けている場所は【ハシゴ場】という。

くつかけ【沓掛】

峠などへの登り口、沢ぞいの比較的平坦な山道が終わり、尾根に向かって登り始めるところ。
旅人が、そこで一服し草鞋(わらじ)を履き替えたところ。古い草鞋を木の枝にかけて旅の安全を祈ったことに由来する。

【クッカー】cooker{E}

調理用の器具、コッフェル

【くびれ】

尾根が低く切れ落ちているところ。

くぼ【久保】【窪】

凹型の地形、くぼみ、小さな盆地。山地の小さな沢。

くまのねがえり【熊の寝返り】{s}

雪崩のこと。マタギ(東北地方の猟師)の言葉。

【くら】【ー】【蔵】【倉】【鞍】

屏風のようにそびえたつ岩壁。山稜や山腹に露出した大きな岩や岩場。くらは岩の古語。山名や川(谷、沢)名に蔵、倉、鞍 などがつく場合は、露岩や断崖のあるものが多い。

【グラート】【グラード】Grat{G}

岩の尾根。Grat[稜線、尾根]。⇒アレートリッジ

【クライマー】climber{E}【クラックスマン】【グランプール】

(1)登山者、登攀者。岩壁や氷雪を登ることを目的とする登山者。
(2)フリークライミングなどで、いま登っている人。⇔ビレイヤー

【クライミング】climbing{E} とうはん【登攀】

(1)手足を使って岩などをよじ登ること。⇒フリークライミングアルパイン・クライミングロック・クライミングアイス・クライミング
(2)スキーで斜面をまっすぐに(最大傾斜線方向に)登ること。

【クライミングウォール】climbing wall{E}【人工壁】

フリークライミングをするために作った壁。表面にホールド(手がかり)を取り付けた大きな板。

【クライミングカーレント】

標高の低い方から高い方へ吹き上げる強い気流。吹き上げ風

【クライミングシューズ】climbingshoes{E}【クレッターシュー】Kletterschuh{G}【スカルペティ】Scarpetti{I}

岩登りをするための専用靴。登山靴よりも小型で、底はふつうトレッド(でこぼこ)がない。これを【フラットソール】という。climb/klettern[よじ登る]
小型で紐がないスリップオンタイプを【スリッパ】という。
ソール(底)の堅さから【ハードソール】【ミドル】【ソフトソール】に分類できる。

【クライムダウン】climbdown

岩場をロープにぶら下がらないで降りること。⇔アプザイレン懸垂下降
登っていて行き詰まったときに必要な場所まで戻ること。

【クラシックルート】classic route{E}

多くの人がよく利用する普遍的なコース。

【クラス】class{E}【グレード】【グレイド】grade{E}

クライミングルートの難易度をあらわす等級。ドイツの登山家ウェルツェンバッハがT級からY級まで分けたのが最初(Y級が難しい)。
等級には種々のものがあるが、以下はフリークライミングで使われているアメリカ式。
クラス1:  ハイキング程度
クラス2:  時として手を使う。ハイキングコースの鎖場程度
クラス3:  三点確保が必要。初心者はロープがないと不安を感じる
クラス4:  原則としてロープによる確保が必要。ベテランならプロテクションはいらない。コンティニュアス(連続登攀)の場
クラス5:  プロテクションを必要とする。通常のフリークライミングの場
クラス6:  (A) 人工登攀
  この中で、クラス5だけは、5.0〜5.9と小数点が付き、5.10以上はさらにその中が5.10a〜5.10dと4段階に細分化されている。この方式を【デシマルグレード】ともいう。クライミングを始めた人が目指すのは5.8か5.9あたり。上限はないが、現在の世界最難ルートは5.14dあたり。

【グラス】glace{F}

氷のこと。フランス語のglaceには氷の意味とガラスの意味がある。

【クラック】crack{E}【カミン】Kamin{G}

割れ目。体の入らない狭い岩の裂けめ。拳、肘がはいるくらいのもの。リスより大きい。Kamin[暖炉、煙突]。
フリークライミングでは、指が入るか入らないくらいのものから体が入るものまですべてをクラックという。

【クラッグ】crag{E}

ごつごつした険しい岩、岩山。

【クラスト】crust{E}【かつてる】

積雪の表面が日光や風によって固まって氷のようになったもの。crust[パンの外皮]。
太陽によって固まったものを【サンクラスト】、風によって固まったものを【ウインドクラスト】という。クラストが弱く踏むと割れるものを【ブレーカブルクラスト】という。
 越中では、クラストを【かって】といい、その上を歩くことを【かつてるに乗る】とう。ブレイカブルクラストを割ることを【ばかし穴にだまされた】という。

【クランク状】

道が連続して二度以上直角に折れ曲がっていること。クランク(crank)とは、昔の自動車や映画カメラを動かすためについていたZ型に曲がったハンドル。

【グランドフォール】

(フリークライミングなどで)地面まで落ちること。当然、怪我をすることになる。

【グリグリ】

確保(ビレイ)器具のひとつ。自動車のシートベルトのように、ロープが急に繰り出すと自動的にロックする機構がある。

【グリセード】glissage{F} glissade{E}【ぼうずり】

雪の斜面をピッケルでバランスをとりながら、靴で滑り降りること。
靴底を雪面にフラットに置く。ひざと腰を少し曲げ、後傾姿勢をとる。ピッケルをウエストあたりに保持し、シャフトを後ろに出して石突きを雪面につける。この姿勢で滑り降りる。このように中腰姿勢で滑るものを【クラウティンググリセード】という。他に、直立したまますべる方法もあり【スタンディンググリセード】という。crouching[背中を丸めて小さくなる]
 雪面に腰をついて尻で滑るのを俗に【シリセード】【尻制動】、グリセードに失敗して頭から雪面に突っ込むことを俗に【顔面制動】という。
越中で金剛杖(長めの杖)を使ってグリセードをすることを棒ずりという。?!赤ちゃんに「好き好き」をすること!?

【クリップ】clip{E}

ロープをカラビナに掛ける(通す)こと、またはカラビナをプロテクションに掛けること。
カラビナにロープを掛けるとき、片手でするため、次のような方法がある。【フロントクリップ】=中指をカラビナに掛けて押さえておき、人差し指と親指でロープをゲートから押し込む。【バックハンドクリップ】=親指以外の4本の指(またはどれか2本)でロープを持ち、ロープをゲートに当てて、親指とロープを持った指で挟み込む。

【クリップビレイ】

確保技術のひとつ。カラビナや雪に差し込んだピッケルに通したザイルを折り返して束ね両手で持つ、ショックがかかったらそれを握り締めて確保をする。

【グルーヴ】【グルーブ】

水の侵食などによって岩にできた浅い溝。

【グルカ刀】Gurkaha{E}【グルカ兵】

への字型に曲がった鉈(なた=刃物)。グルカ兵とは、英国軍がネパールのグルカ地方から徴用した傭兵。ヒマラヤ登山史の初期にはシェルパ族と同様にグルカ族も荷物運搬人や案内人として活躍している。

【クリンカー】Klinker{G}【ムガー】【トリコニー】tricouni{F}

登山靴(鋲靴)の底に打ち付ける鉄製の鋲(びょう)。やや長手で側鋲につかうものをクリンカー。丸く平で中鋲に使うものをムガー、やや大きめで土踏まずにつけるものをトリコニーという。どの鋲をどこに配置するか登山家それぞれの流儀や秘伝があった。
 現在の登山靴は、鋲は使わず、ゴム底(ビブラム靴)になっているが、そのトレッドパターン(靴底の模様)は、クリンカーやムガーを組み合わせた形になっている。⇒ビブラム

【クレバス】crevasse{E,F}【シュルント】Schrunde{G}

氷河や雪渓上の深い割れめ。亀裂。
新雪に覆われて見えなくなっているクレバスを【ヒドンクレバス】という。
雪渓と岩との隙間をシュルントということがあるがベルグシュルントまたはランドクルフトが正しい。

【グレポン】grepon{F}

岩塔、針峰、とがったピーク。フランス・シャモニーにある針峰、穂高・滝谷にあるピーク。

【クロー値】【1クロー】clo{E}

シュラフなどの心地よさをあらわす単位。気温21℃、湿度50%、風速5cm/sの環境下で皮膚温度を33℃に保てる保温性を1クローという。気温12℃の場合が2クロー、3℃の場合が3クローになる。

【グローブ】gloves{E}

手袋。?!べつに野球をやるわけではない?!

【クロカン】【クロスカントリー】CX, cross country{E}

雪の野山を歩くためのスキー。スキー板はゲレンデスキーや山スキーに比べて、幅が狭く長い。また、靴や絞め具も小型軽量になっている。絞め具は踵が上がる構造(ヒール・フリー)になっている。⇒テレマーク

くろき【黒木】

松、トウヒ、栂(ツガ)など常緑の針葉樹

【クロロファイバー】chlorofibre{E}

ポリ塩化ビニル系の繊維。保温性があり吸水性がないので、雨や汗で濡れても体を冷やさない。汚れが付きやすいのが難点。⇒ポリプロピレン

〔け〕

けい-【軽アイゼン】

夏の雪渓などで使用する4本爪くらいの小型のアイゼン(滑り止め金具)。⇒アイゼン
軽アイゼン

けいけんしゃ【経験者】

登山経験が豊富で現役の登山家。「経験者向けコース」というのは道が分かりぬくかったり危険箇所があるようなコース(登山道)。

けいこく【渓谷】

谷川、谷間、山にはさまれた狭い川。一般に、岸が岩になっていて景観の良い谷川を言う。
けいりゅう【渓流】は谷川の流れ。渓谷の意味でも使われる。

けいはんりん【渓畔林】

渓谷沿いにできる落葉紅葉樹林。青森県の奥入瀬渓谷などに見られる。

けいねんれっか【経年劣化】

年月が経つにつれて強度や性能が低下すること。登山靴のソール(底)の剥離やプラスチックブーツの破損などは経年変化によって起こる。

けいたいといれ【携帯トイレ】

(自分の)排泄物を山に捨てずに、持ち帰るための容器。

【ケイブ】【ケープ】【ケイヴ】cave{E}

ほら穴、洞窟。cave[洞穴]
似た言葉に【コウブ】coveがある。断崖にある窪み、洞窟、谷間をいう。

【ケイビング】【ケービング】caving[E}

鍾乳洞などの洞穴を探検すること。

けいりゅう-【渓流シューズ】けいりゅうたび【渓流足袋】

沢登りで使用する履物。渓流シューズは軽登山靴の底にフェルトなどを張ったようなタイプ。渓流足袋(たび)は地下足袋の底をフェルトにしたようなタイプ。甲にはネオプレーンやナイロン生地などが使われる。⇒ウエディングシューズわらじ

げかい【下界】{s}

(山岳地に対して)平地のこと。(登山に対して)都市での生活のこと。

げざん【下山】げさん

山から降りてくること。俗世間に出てゆくこと。⇔登山

【ケブラー】Kevlar{c}

米国ジュポン社が開発した軽量で高強度(鉄よりも強靱)、高耐熱性の繊維。ザックやテント、登山靴などに利用されている。

【けむし】【毛虫】【ゲジゲジ】{s}

岩壁のこと、地図上に描かれた崖の記号。昔の地図は毛虫のような形だった。

【けもの道】【獣道】single track{E}

タヌキやイノシシなど山にすむ動物の通り道。シカが作った道は【鹿道】という。かなりはっきりしているものもあり登山道と間違えることがある。
?!「けもの」は野山に住む知足の賢者のこと。「けだもの」は知足を知らぬ人間の一種をいう!?

【ケルン】cairn{E}【シュタイマン】Steinmam{G}【石塚】

山頂や登山道、分岐点、徒渉点などを表すために、小石を円錐型(三角型)に積んだもの。数個の石を積み重ねたものもある。
一般に道標として使われるが、遭難者を弔って積んだり、そこに来た記念に積む人もいるので、そうしたケルンを道標と間違えないこと。道標とする場合は、ルートと平行に(ルートに沿って)詰む。落石の危険がある場所では積まない。⇒さいのかわら

【ゲレンデ】Gelaende{G}【クラッグ】crag{E}

スキーや岩登りのための練習場、スキー場。本来は広々とした野原のこと。Gelande[自然のままの土地]、crag[険しい岩場]

けんうん【巻雲】【すじぐも】【きぬぐも】【シーラス】Cirrus{L}

絹糸を引いたような、鳥の羽のような、刷毛ではいたような形の雲。【絹雲】とも書く。雲のうちでは一番高い(12000〜5000m)高度に浮かぶ。湿ってベタとした感じの【雨巻雲】は、低気圧や前線の前面に出る。乾いた感じの【晴巻雲】は低気圧とは無関係。

けんがい【懸崖】けんがん【懸岸】

切り立った崖(がけ)。崖の下に水が流れている場合に懸岸という。

けんきゃく【健脚】

足が強く、険しい道や長い距離を歩けること。特に基準はないが、例えば20kgくらいのザックを背負って、1日に8時間くらい歩くことができれば健脚といえるだろう。

けんきょうおね【県境尾根】【県界尾根】

都道府県の県境になっている尾根。コース上の地名に使われることがあり、【郡界尾根】【町界尾根】【村界尾根】もある。

けんこく【懸谷】hanging valley{E}

谷の合流点が高く切り立った崖になっているもの。支流の谷底が本流の谷底より一段高くなっていて滝のように落ちているもの。懸は[かける][つるす]意味。

けんこく【圏谷】【カール】Kar{G}

氷河の侵食で円形に窪んだ谷。山頂直下の斜面が、まるで巨大なスプーンででもえぐられたかのように窪んでいる地形。Kar[丸い谷]

けんすいかこう【懸垂下降】【アプザイレン】abseilen{G}【ラペル】rappel{F}

ザイルを使って岩場や氷壁を降りること。ザイルを二つ折りにして岩角などに架け(実際には捨て縄などを使う)下に垂らす。エイト環など下降器具を使ってザイルと器具との摩擦によってゆっくり降ることができる。⇒エイト環デセンダー肩がらみ

けんすいひょうが【懸垂氷河】hanging glacier{E}

急峻な斜面に垂れ下がるように張り付いている氷河。

げんせいりん【原生林】Urwald{G}

人間が手を加えていない自然のままの森林。⇔植林、雑木林、二次林
日本には、人間の手がまったく加わっていない厳密な意味での原生林(原始林)はないので、「人が計画的に伐採や手入れをしたことがない森林」という意味で使われる。

けんせきうん【巻積雲】【さばぐも】【うろこぐも】【シーロキュムラス】Cirrocumulus{L}

陰影のない真っ白な小さな粒が集まった雲。高度は12000〜7000m。主として不連続面で発生するのでやがて雨になる。⇒前線

けんそううん【巻層雲】【うすぐも】【シーロスタトラス】Cirrostratus{L}

牛乳や絹のベールを広げたような雲。太陽や月は暈ができる。明瞭な暈ができていると数時間後に小雨が降り出す。

げんとう【源頭】

沢の源流部。水流がとだえてから稜線にいたる地帯。

げんとうき【厳冬期】

寒さの厳しい冬の時期。積雪と降雪があり、気象条件の厳しい期間。およそ12月下旬から2月中旬あたりまでの期間。⇒冬山

げんぶがん【玄武岩】

火山岩のひとつで、黒または暗灰色の緻密な岩石。

げんりゅう【源流】【源流点】

川の最上流部、ある川の水が流れ始める地点、水源地。

〔こ〕

【コーカサス】Caucasus{E}【カフカス】KavKaz{R}

黒海とカスピ海にはさまれた地域。コーカサス山脈はアジアとヨーロッパの境界線になり、ヨーロッパの登山家にはヒマラヤへの玄関口になる。

【コースサイン】

登山のコース(ルート)を示すための標識やペンキで書いたマーク。登山コース以外の目的でつけられた標識もあるので、コースと間違えることがある。

【コースタイム】{J} しょようじかん【所要時間】【歩行時間】

登山コース中の、ある地点から別のある地点へ行くのに要する時間。所要[必要とすること]。
【標準コースタイム】=標準的な体力・技量の持ち主が、そのコースを行くのに必要な装備を持って、普通に歩いた時間。休憩や食事の時間は含まない。

【ゴーグル】goggles{E}【サングラス】sunglasses{E}【雪眼鏡】

吹雪の中で視界を確保するための眼鏡。サングラスは紫外線から目を守るもの。ゴーグルは目の周りを覆って、吹雪のときに風や雪が入るのを防ぐ構造になっているもの。

【コーナー】corner{E}【ディエードル】【ジェードル】diedre{F}【凹角】

岩の角だが、ふつう二つの面が凹角状に面した部分、【インサイドコーナー】をいう。逆に、凸角状になった【アウトサイドコーナー】は、カンテ、エッジという。diedre[二面体]。

【コール】call{E}

かけ声。声を掛けること。クライマーやビレーヤーが「ビレイ解除」「登って良し」などと合図のかけ声をかけること。
雪崩に埋まっている人を探すために大声で呼ぶこと。⇒スカッフ

【ゴアテックス】GORE-TEX{c}【ゴア】

多孔質構造をもつふっ素系樹脂の極薄フィルム。商品名。
雨などの水は通さず、汗などの水蒸気は通すので、雨具に利用すると蒸れない。最近は、テントや靴などさまざまな登山用具に使われている。同種のものに、【エントラント】【シンパテックス】(いずれも商品名)などがある。⇒防水透湿素材

こうかん【光環】【光冠】

太陽が虹のような光の輪を伴う現象。霧を通して朝日を見たときなどに見られる。

こうきあつ【高気圧】

地上天気図で、周辺よりも気圧が高くなっているところ。中心付近は下降気流があり、雲ができぬくいので晴れている。 今いる地点の南側を高気圧が通過するときは晴天になる。北側を通るときは、一般に雲が多くなる。
【シベリア高気圧】=大陸から張り出してくる高気圧。強い寒気と北西季節風をもたらす。【太平洋高気圧】=小笠原諸島付近にできる高気圧で、勢力が強いと、日本付近は典型的な夏型になる。【移動性高気圧】=中国大陸で発達し日本付近には低気圧と交互にやってくる。【帯状高気圧】=移動性高気圧が東西に連なったもの。

こうざん【高山】

標高の高い山、あるいは山岳地。特に定まった定義ではないが、標高2500m程度以上を高山といい、標高1000m以下を【低山】という。⇒深山幽谷

こうざんこ【高山湖】

森林限界より上にある湖や沼。

こうざんしょくぶつ【高山植物】

森林限界以上の高地に生える植物の総称。厳密には高山帯に生育する植物をいう。⇒お花畑

こうざんたい【高山帯】

森林限界 以上で雪線より下の地帯。ハイマツなどの低木や高山植物が生えている地帯。
高山帯と亜高山帯の境は、7月の平均気温が10℃になる線と一致している。中部山岳では標高2500m以上、北海道では1500m以上が高山帯になる。⇒亜高山帯

上信越などの山では、豪雪のために標高1500mあたりが森林限界になっているが、それより上の部分を【偽高山帯】(ぎこうざんたい)という。

こうざんちょう【高山蝶】

高山帯に生息している蝶。一生を高山帯で過ごす純粋の高山蝶は、タカネヒカゲ、ウスバキチョウ、ダイセツタカネヒカゲ、アサヒヒョウモンの4種。

こうざんびょう【高山病】

体内に取り込む酸素の量が少なくなって起る病気。軽い時には、頭痛、食欲不振、吐き気、めまい、息切れなどが起こり、山酔いともいう。重症になると、肺水腫(肺の中に水がたまり呼吸ができなくなる)や、脳浮腫(脳の中に水がたまり神経に障害が出る)にかかる。
 一般に、標高3,000mを超えると症状が起りはじめる。重症の高山病が起こりやすいのは3,500〜4000mあたりという研究もある。対処法は、ヒマラヤなどの高所へ行く場合は、徐々に高度を上げて体を慣らす。予防薬もある。かかったら高度を下げること。飛行機に乗るのはよくない(機内は0.8気圧くらいになっており、標高2,500mに相当する)。【アセタゾラミド】【ダイアモックス】=山酔いの予防薬。⇒高度順化山酔い

こうじゅうとざん【講中登山】

講を作って霊山に詣でること。信仰のための登山。講は神社仏閣へ参詣する信者の団体。富士講など。⇔近代登山

こうしょとざん【高所登山】

一般に標高6,000m以上での登山をいう。

こうしんづか【庚申塚】【庚申塔】

集落のはずれや分岐点などにある石碑。青面金剛(しょうめんこんごう)や猿田彦(さるたひこ)などの神を祭っている。庚申(かのえさる)は干支の57番目。
こうしんまち【庚申待】=庚申の日に青面金剛、帝釈天(たいしゃくてん)、猿田彦を祭り、徹夜をする行事。

こうせきうん【高積雲】【むらくも】【ひつじぐも】【アルトキュムラス】Altocumulus{L}

白色か淡灰色で陰影がある丸みをもった雲塊が群れをなしている雲。高度は7000〜2000m。雲塊が密着して全天を覆ってきたり、高度が低くなってくるときは低気圧が近づいてきている。

こうせん【鉱泉】

鉱物成分を含んだ湧泉。水温の高い(25℃以上)ものを【温泉】、低いものを【冷泉】という。

こうそううん【高層雲】【おぼろぐも】【アルトストラタス】Altostratus{L}

薄墨をながしたように全天に広がる雲。太陽や月はおぼろに(ぼんやりと)見える。高度は8000〜2000m。高度を下げ、厚みをますとやがて雨が降り出す。

こうそうてんきず【高層天気図】

上空の風向・風速・気圧・気温などをもとに作成する天気図。登山では「700hPa等圧面天気図」を利用する。これは標高3000mに相当する。
短波放送の「ラジたんぱ」が、春、夏、冬の一定期間、【高層気象情報】を放送している。⇒気象通報

こうぞうさんち【構造山地】

断層や褶曲などの地殻変動によってできた山地。

こうぞうど【構造土】【ストラクトアボーデン】{G}【パターンドグラウンド】{E}

周氷河現象によって、地面が凍結、融解を繰り返して、礫や砂が集まり縞模様や幾何学模様を作っているもの。⇒周氷河

【こうてん】【好天候】

快晴や晴など天気がよいこと。⇔【あくてん】

こうどじゅんか【高度順化】こうしょじゅんのう【高所順応】

4000m以上の高山へ短時間で登ると高山病になる。それを防ぐために、ゆっくり時間をかけて、少しずつ高度をあげ、高山の低酸素状態に体を慣らしていくこと。 

こうどうしょく【行動食】【レーション】ration{E}

登山行動中や小休止のときに食べるための食糧。調理しないでそのまま食べられる食べ物。

こうどけい【高度計】

今いる位置の標高を測定する計測器。単独のものや時計にその機能を組み込んだものなどがある。気圧を測定して高度に換算している。

ごうめ【合目】【五合目】

登山口から頂上までを10区分したもの。麓が一合目で、頂上が十合目になる。富士山など信仰対象の山で使われている。「劫」が語源との説もある。各合目ごとの距離や所要時間は必ずしも等間隔ではない。 合は、尺貫法による容量の単位で約0.18リットル、十合が一升になる。または面積の単位で約0.33平方メートル、十合が一坪になる。

こうようじゅ【広葉樹】

幅が広く平たい葉をつける樹木。⇔針葉樹。広葉樹が大部分を占める森林を【広葉樹林】という。
広葉樹には、落葉広葉樹と常緑広葉樹があり、後者には照葉樹(葉の表面にツヤがある)と硬葉樹(葉が小さくて硬い)がある。

【ごうりき】【強力】【ポーター】porter{E}

登山者に雇われて、その荷物を背負い道案内をする人。剛力。かつて富士山などにいた。ポーターは、ヒマラヤなどでトレッキング客の荷物を運んだり、遠征登山隊の荷物をベースキャンプまで運ぶ人。⇒ぼっかシェルパ

【ごうろ】【ごーろ】【ごうら】

大きな石や岩がゴロゴロところがっている(いっぱいある)ところ。
ごうろが広範囲にわたっている場所は【ごうろ帯】という。石の大きさは様々で、大きいものは数メートル〜数十メートルにおよぶものもふくむ。人間の背丈よりも大きな石が数多くある場所は【巨岩帯】といって区別することもある。
がれ

こおね【小尾根】

(頂上をつなぐ尾根ではなく)、頂上や稜線から山裾に向かう尾根

【こぐ】【漕ぐ】

薮や雪などをかき分けて進むこと。⇒薮漕ぎラッセル

こしかわ【腰皮】しりかわ【尻皮】しきかわ【敷皮】

休憩するときに腰(尻)に敷く毛皮。歩行中や作業中は腰にぶら下げている。

【コッフェル】Kocher{G}【コッハー】【クッカー】cooker{E}

組み合わせ式の鍋。アルミやステンレス製の大鍋・小鍋・フライパン・皿などがワンセットになったもの。材質にはアルミニウム、ステンレス、チタンなどが使われ、焦げ付きにくくするためにフッ素樹脂加工したものもある。
Kocherはコッハーが正しいが、登山界ではコッフェルといっている。Kochen[煮る]
角形コッフェル

【コッテージ】cottage{E}【コテージ】

山荘、山小屋、別荘風の小住宅。[田舎の一階建ての小さな家]。⇒ヒュッテ

こていロープ【固定ロープ】【フィックスドロープ】fixed rope{E}

険しい場所で安全を確保するために張られたロープ。固定索。⇒くさりば、ごぼう。

【ごてん】【ゴテン】

立岩。横幅に比べて高さの高い大きな岩。

こなゆき【粉雪】こゆき

湿り気が少なく、粉のようにさらさらした雪。⇒ぼたんゆき

こば【小場】

昔、峠越えをした人達が休憩をした場。杣人達(きこり)の木材置場(木場)、休憩場・水飲み場。

こば【木端】

登山靴の甲と底との境界部の、周囲に張り出した部分。

【こぶ】【瘤】

尾根にある小さな隆起、突起。凸凹になっている尾根を【こぶ尾根】という。⇔棒尾根

【ごぼう】【ゴボウ抜き】牛蒡{s}

上から垂らされたロープを両手でつかみ、腕力で体を引き上げて、岩場を歩くように登っていくこと。垂直にぶら下がっている固定ロープを俗にゴボウという。それを引き抜くように登るところから。⇒固定ロープ。
クライマーが落ちたとき、最後のプロテクションから二つ折りになっているロープのビレイヤー側を自分で引いて体を持ち上げ、同時にビレイヤーがその緩んだロープを巻き上げて、登ってゆくやり方。

【コマクサ】

砂礫地に生育する高山植物。花の形が駒(馬)の顔に似ているから。【高山植物の女王】などといわれる。

こやがけ【小屋掛け】

木の枝や草などを使って即製の小屋を作ること。かつて猟師や樵たちは小屋掛けをして山中で作業をしていた。 フライシートやビニールなどで即製のシェルターを作ること。

こやば【小屋場】とまりば【泊場】

猟師たちが小屋を作るのに適した場所。水場が近くにあり、風水雪害に見舞われず、暖かい平らな場所。

ごらいこう【御来光】【御来迎】

雲海や山脈から太陽が昇ること。高山で拝む荘厳な日の出。
御来迎(ごらいごう)は、ブロッケン現象をいい、日の出をいうのは誤用。⇒ブロッケンの妖怪

こりば【垢離場】【こりとり】

修験者が水を浴びて煩悩を落とす場所。

【コル】col{F} あんぶ【鞍部】【ザッテル】Sattel{G}

二つの峰をむすんだ稜線上の凹所。尾根の低くなっているところ。峠は尾根を乗り越えて行く道があるもので、コルは道がないもの。col[首,峠]、Sattel[鞍]。⇒乗越し鞍部

【ゴルジュ】groge{F}【ゴージ】ろうか【廊下】はこ【函】

渓谷の両岩壁が細く狭まった箇所。氷蝕や水蝕によってできる。groge[喉]
 ゴルジュ、廊下、函はほとんど同じものだが、岩壁に挟まれた谷の部分いっぱいに水が流れているものをゴルジュ、または函といい、もっと広いものを廊下という。廊下は固有名詞化している(黒部峡谷の上の廊下、下の廊下)。⇒クーロアール

【コルネ】

背骨のように岩の表面から飛び出した長く続く突起。石灰岩に見られる。

こんごうじょう【金剛杖】こんごうづえ、【六尺棒】【アルペンストック】

霊山に登るときに信者が使う杖。長さ2mくらいの樫の木の棒。金剛とは硬く強いもの。6尺は1.8m

【コンパス】kompas{D} らしんばん【羅針盤】ほういじしゃく【方位磁石】

地磁気を利用した方位(東西南北)を知るための計器、磁気コンパス。
【レンザティックコンパス】=指針といっしょに方位を示す目盛り(円盤)が動くタイプ
【クルーザーコンパス】 =指針だけが動くタイプ。
【サイティングコンパス】=山頂などの目標物と目盛りが同一視線上で見えるタイプ

【コンパスグラス】

単眼鏡の中に方位磁石を組み込んだもの。のぞくと景色と一緒に磁石の目盛が見えるので、山などの正確な方位を知ることができる。

【コンプレッションパック】compression pack{E}

シュラフ(寝袋)などかさばるものをコンパクトに収納するための袋。ベルトを引き絞って、容積を小さくする。

【コンター】conter line{E}

等高線。地図上に描かれた同じ高度(標高)を表す線。急傾斜の地形を【コンターが混んでいる】という。

【コンティニュアス】continuous{E}【コンテ】{s}

(1)ザイルで結びあった2人(以上の者)が同時に移動する登り方。トップはランニングビレーをとりながら、セカンドは回収しながら行動する登り方。⇒アンザイレン。⇔スタカット
(2)複数のピッチを連続して登ること。ピッチとはクライミングの1区切りで、ロープの長さ(50m前後)に相当する。

【こんにちは】【ちわっす】

登山者同士が交わす挨拶。昔は登山者に会うことが少なかったので懐かしさのあまりに声をかけたり、「この先の水場は枯れていませんか、岩小屋は使えますか」など、登山情報を得るために、まずは挨拶を交わした。
 狭い山道で登山者同士が出会ったとき、一般には下りの者が道を譲るが、時に登りの者に譲ってもらった方がよい場合がある。その時、下山者の先頭のものがタイミングを見計らって「こんにちは」と声をかける。下山者の挨拶は「すみません。そこで道を譲ってください」の意味もある。

こんろ【焜炉】【コンロ】

炊事のための小型の炉。炊飯用の火器。ストープ。⇒ストーブ。燃料にホワイトガソリンを使う【ガソリンコンロ】、石油(ケロシン)を使う【石油コンロ】、LPガスを使う【ガスコンロ】、アルコールを使う【アルコールコンロ】などがある。