〔な〕

【ナーゲル】Nagel{G}

登山靴の底に取り付ける鉄製の鋲(びょう)。現在の登山靴はビブラムなどゴム底になっていて、ナーゲルは使っていない。[爪]。⇒鋲靴 ビブラム

【ナイフ】knife{E}、こがたな【小刀】

小型の刃物。
【フォールディングナイフ】(folding)=刃を握りの部分に折り畳めるナイフ。
【シースナイフ】(sheath)=刃を鞘(さや)に納めるナイフ。
【アーミーナイフ】(army)=缶切り・栓抜き・ドライバーなど各種の道具がついたナイフ
【鉈】なた =日本古来の、やや大振りのシースナイフ。小さい木を切ったり枝を払うために使う。
【斧】おの (ax,axe) = 刃が短く厚い刃物、長い柄がついている。大きな木を切るために使う。
刃の部分を【ブレード】(blade)、握りを【グリップ】(grip)という。

【ナイフリッジ】knife ridge{J}【ナイフエッジ】knife edge{E}

ナイフの刃のように尖った、切り立った尾根、岩稜・雪稜。尾根に立ったとき、右側も左側もいきなり谷へ落ちているような幅の狭い尾根。ridge[山の背・尾根・山脈]。edge[刃・端・へり]。両者は同じものだが、ナイフリッジは尾根や稜線に、ナイフエッジは岩稜などで使う。⇒ 鎌尾根馬の背

ないめんとうはん【内面登攀】

チムニーや岩の割れ目などの中(内側)を登ること。⇔外面登攀。⇒チムニー
チムニーの中で背中と手足を突っ張って体を保持する技法を【バックアンドニー】という。

【なぎ】【薙】

山崩れなどで、岩や小石がごろごろしている場所。傾斜の急な崩壊地。岩や土砂の色から【赤薙】【白薙】【黒薙】などということもある。⇒がれ
自然による崩壊を「なぎ」、人為的な崩壊を【くよ】ともいう。

【なぎ】【凪】

朝夕に風がやんで無風状態になること。あさなぎ、ゆうなぎ

【なすかん】【茄子環】

小型のカラビナのような器具。その形がナスに似ているから。カラビナと同様にものやロープを接続するために使う。強度が弱いのであまり過重がかからないものに使用する。登攀には使用しない。さらに小型のものはキーホルダーなどにも使われる。

【なた】【鉈】

枝や比較的小さい木を切るための刃物。さやに収め腰にぶら下げて携行する。⇒ナイフ

【なため】【鉈目】

樹木の幹に鉈などの刃物で(皮を削るなどして)切り目を入れて道標の代わりにしたもの。

【なだれ】【雪崩】【ラビーネ】Lawine{G}【アバランシュ】avalanche{E,F}

傾斜地に積もった雪が大量に崩れ落ちること。もともとは越後の方言で、冬に起こるもの(表層雪崩)を【ほうら】、春に起こるもの(全層雪崩)を【なだれ】という。
雪崩を表す日本の方言は多く、岩科小一郎氏の研究によれば114種ある。

  雪崩の種類
雪崩は、発生地が狭いか広いか、雪質が乾いているか湿っているか、積雪の全部が崩れるか表面が崩れるかを組み合わせて次の6種類に分類できる。
【点発生乾雪表層雪崩】【こななだれ】 古い積雪の上に乾いた雪が積もったとき崩れる
【面発生乾雪表層雪崩】【いたなだれ】 降雪中でも降雪後でも起こる
【面発生乾雪全層雪崩】【かわきそこなだれ】 古い雪の上に新しい雪が多量に積もり崩れる
【点発生湿雪表層雪崩】【うわなだれ】 数十センチの積雪の翌日に気温が上昇して崩れる
【面発生湿雪表層雪崩】【ぬれいたなだれ】 降雪直後天気が良くなり気温が上昇した時に崩れる
【面発生湿雪全層雪崩】【そこなだれ】 暖気が流れ込んできた時に崩れる
登山者の被害が一番多いのは、面発生乾雪表層雪崩。

なだれ-【雪崩エアバッグ】

ザックに装着したエアバッグで、雪崩に遭遇したときに、自らトリガー(引き金)を引いて窒素ガスなどでエアバックを膨らませて、雪崩の上に浮き上がるための装備。

【なだれひも】【雪崩紐】

雪崩で埋まった人の所在を示すための紐。比重の軽い材質でできた紐。
雪崩が発生しそうな場所を通過する時、紐の一端を体に結び、取出しやすいように丸めておく。雪崩に巻き込まれた時、丸めた紐を空中に投げる。雪崩に埋まった後で、紐が雪面上に出ていれば、捜索者が紐をたどって雪の中に埋まった自分を見つけ出してもらえる。⇒ビーコン

なだれ-【雪崩埋没者探索気球】【アバランチボール】Avalanche ball

雪崩ひもと同じような装備。雪崩に遭遇した時に、トリガー(引き金)を引いて、バネの力で気球を打ち出し、雪面上に出ている気球から雪崩の中に埋没している自分を発見してもらうもの。

なだれよそう【雪崩予想】【雪崩危険レベル】

ヨーロッパでは雪崩の危険レベルを5段階に分けて雪崩予報を出している。
第1段階 積雪は安定しており、雪崩の危険は非常に少ない
第2段階 おおむね安定しているが、急斜面に大勢が入り込むと危険
第3段階 多くの斜面で積雪の結合状態があまり良くなく、雪崩を起こす危険がある
第4段階 結合状態が非常に悪く、ちょっとした刺激でも雪崩の危険あり
第5段階 積雪は非常に不安定で、大変危険

【ナチュラリスト】naturalist{E}

自然に関心を持つ人、自然主義者、自然の動植物などを研究する人。

【ナチュラルハイ】

極限状態での意識の異常な高揚。薬物による陶酔と区別してラインホルト・メスナーがこう呼んだ。

【ナチュラルプロテクション】natural protection{E}

クライミングで確保支点を作るための器具。ナッツやカム類の総称。ハーケンのように岩に打ち込んで残置するものではなく、割れ目に挟み込んで使用し、使い終わったら回収するもの。natural[自然のまま], protection[保護、防衛]。⇒フレンズ

【ナッツ】nuts{E}

クライミングで使うプロテクション(確保点)の一種で、くさび型や不等辺六角型の金具にワイヤーを通したもの。クラック(岩の割れ目)にセットして(挟み込んで)確保のための支点に使う。クラックに合うように大小さまざまなものがある。 もともとは、【ナット】(工業用の雌ネジ)を使っていたため。
ナッツ

【ナップサック】Knappsack{c}

ハイキングなどで使う簡易型ザック(リュックサック)。knappen{G}[食う] Sack{G}[袋]

なつやま【夏山】

夏季の登山または山岳地。一般に6月〜8月の間に行う登山をいう。⇔冬山

なつやましんりょうしょ【夏山診療所】【臨時診療所】

日本アルプスなどの山で、夏の間だけ開設する診療所。多くは大学医学部などがボランティアで行っている。

なつやまでんわ【夏山電話】【夏山公衆電話】

夏の間、山小屋などに設置する公衆電話。昭和30年あたりから平成13年ころまで、北アルプスなどの山小屋に電電公社(NTT)が設置していた。

【なで】【ナデックボ】【なで窪】

雪崩の良く通る谷や沢など。なでは雪崩のこと。

ななまがり【七曲り】

道が幾重にも折れ曲がっているところ。

【なめ】【滑】なめたき【滑滝】

なめらかな岩の上を水が岩に密着して流れているところ。 滑りやすいので通行には注意。?!「なめたきいかんぜよ」!?
滝の傾斜が10度以下のものを【滑床】といい、45度以下のものを滑滝という。45〜60度のものを【斜瀑】、それ以上を滝という。

なんいど【難易度】

ガイドブックなどで、登山コースの難しさをあらわす度合い。
 分類の一例、【初心者向き】=登山経験があまりない人、【一般者向き】、【健脚者向き】=歩く距離が長い、【熟達者向き】=一定レベル以上の登山技術を要する。他に、体力、技術、危険度などを加味する場合もある。

【ナンバ歩行】

同じ側の足と肩を同時に前に出す歩き方。軍隊の行進のように右足と左手を前に出すのではなく、右足と右肩を前に出し、手は振らず、歩幅を小さくしすり足で歩く。登山の基本的な歩き方。ナンバとは、水田で作業をするときに履く田下駄のこと。

〔に〕

【ニードル】needle{E}

針のように尖った岩峰。剣岳のクレオパトラ・ニードルなどがある。⇒エギィユオベリスク

にあげ【荷揚げ】

高所登山などにおいて、前進キャンプへ食料や登山装備などの物資を運び上げること。クライミングで登攀用具などを運び上げること。

にじりん【二次林】

自然林が、山火事や伐採などによって消滅した後に、自然に復元した森林。人間が造林したものは【人工林】。⇒原生林

にじゅうさんりょう【二重山稜】ふなくぼ【船窪】

稜線が二本平行して走り、その間が窪んでいる地形。蝶ガ岳や雪倉岳などにみられる。

にじゅうそうなん【二重遭難】

遭難者の救助にあたっている人が遭難すること。

【にせピーク】【偽ピーク】

本物の頂上の手前にあって、頂上と間違えやすいピーク

【ニッカ】【ニッカーボッカー】knicker bockers{E}【ニッカーズ】【ニッカーボッカーズ】

膝下で裾口をしぼったゆったりした半ズボン。歩きやすく動きやすいため、かつてカッターシャツとともに登山の代表的な服装だった。
もともとは17世紀頃オランダで使われた半ズボンで、その後英国を中心に乗馬、狩猟、登山などに使われた。Knickerbockerはアメリカに移住したオランダ人の子孫のこと。
 ニッカーボッカー用の長い靴下(ハイソックス)を【ニッカーホース】knicker hose{E}という。

にほん-【日本アルプス】the Japanese Alps{E}

日本の中部山岳地帯。大阪造幣局の治金技師として来日したイギリス人ガウランド(William Gowland)が明治13年に木曽山脈に命名した。のちに、ウェストン(Walter Weston)が飛騨・赤石山脈も含めて呼び、その著書(日本アルプス-登山と探検)によって世界に広めた。小島烏水は、飛騨山脈を北アルプス、木曽山脈を中央アルプス、赤石山脈を南アルプスと名付けた。

にほんさんめいざん【日本三名山】【日本三霊山】

形が優れているとか、歴史があるなどで、名高い日本の三座の山。一般に富士山、立山、白山が三名山といわれる。⇒三名山

にほんひゃくめいざん【日本百名山】

作家・深田久弥が独自の判断で選んだ百座の山。彼が登った山から名山と思うものを百座選んで昭和39年に著した紀行文。名山の選定には、山の品格、歴史、個性を基準として、標高1500m以上の山を選んだとある。
 これに掲載されている山をすべて登ることが80年代末あたりからブームになっている。⇒ピークハント。また、これに載っている山を一流の山、載っていないのを二流の山とブランド化する傾向もある。
 深田クラブがこれに100座を加えて【日本二百名山】を選定し、日本山岳会がさらに100座を加えて【日本三百名山】を選定している。
また、岩崎元郎氏が2004年に安全に健康登山が楽しめる【新日本百名山】を選定している。

にゅうけいてん【入渓点】

沢登りを開始する場所、地点。

にゅうざん【入山】

山岳地域へはいること、登山をしに行くこと。僧が修行のために寺にはいること。
【入山者】いま山岳地にいる人、登山をしている人。例「今夏の北アルプス入山者は○名だった」

にゅうりんとどけ【入林届】

国有林にはいるときに提出しなければならない書類。

にょにんけっかい【女人結界】

信仰登山において女性が入山を許されている境界点。そこより先には登れない地点。そこに建てられているお堂を【女人堂】という。

〔ぬ〕

【ぬけ】【抜け】

山崩れなどの崩壊地。⇒ざれ

【ぬた】【沼田】【にた】【のた】

湿地帯、湿田。どろ地。

ぬたば【ぬた場】

猪の臥所(ふしど)。猪は泥の上に枯れ葉などを集めて寝るところから。またダニなど体に付いた寄生虫を取り除いたり、体を冷やすために泥浴びをする、その場所。それから転じて、山中にある小さな泥田や湿地をいう。

【ヌバック】nubuck{E}

革の表面をやすりのようなもので擦って起毛させたもの。neo backskin。登山靴などに使われる。裏面を起毛したものは【スエード】suede{F}という。

【ヌプリ】

アイヌ語で山のこと。

【ヌンチャク】{s} 【クイックドロー】quickdraw{E}

2個のカラビナを短いスリング(テープ)でつないだもの。
ボルトやピトンとロープを繋ぐときに使う。カラビナだけ使う場合に比べてロープの通りが良い、墜落の際の衝撃を吸収するなどの効果がある。⇒クイックドロー
ヌンチャクとは、沖縄やカンフー(中国拳法)映画などで使われている武器で、2本の樫の木の棒を鎖でつないだもの。その形に似ているからか。

〔ね〕

ねあがり【根上がり】

樹木の根本にできた空洞部、根が盛り上がった形になっていること。元はそこに倒木などがあって、それをまたいで根が張ったもの。

【ネイルドブーツ】nailedboot{E}【ネールブーツ】【鋲靴】

ソール(靴底)部に鋲(びょう)を打った登山靴。鋲には、トリコニー、ムガー、クリンカーがある。nail[爪]。ビブラム靴の出現によって鋲靴は使われなくなった。⇒登山靴鋲靴クリンカービブラム

【ネオプレン】Neoprene{c} 【ネオプレーン】

ウエットスーツや沢登り用品に使われている、断熱性(保温性)に優れた素材(合成ゴム)。ポリクロロピレン。米国ジュポン社の製品。

ねっちゅうしょう【熱中症】

直射日光や高気温によって、体温が上昇し、脱水状態を起こす病気の総称。
熱中症は、全身がけだるくなる【日射病】【熱疲労】と、筋肉が麻痺する【熱性麻痺】、臓器障害や突然死に至る【熱射病】に分けることができる。
?!精神が麻痺し、仕事も家庭も顧みず、登山にばかりふけり、突然死に至る病気!?

ねぶくろ【寝袋】

袋状になった布団。シュラフ

【ネベ】neve{F}【ネヴェ】【フィルン】{G}

万年雪。粒状になった万年雪、雪と氷の中間のもの。氷河の上層部にある雪(氷)。雪線以上にある氷河の雪。雪線以下の雪は【グレシア】glacier(氷河)という。

ねゆき【根雪】

秋の終わりに降って、溶けずにそのまま春まで残る雪。

〔の〕

【ノーマルルート】normal route{E}

バリエーションルートに対して、一般的なルート(登山路、登攀コース)をいう。

のじんば【野陣場】

猟師などが野営する場所。野営(キャンプ)するのに適する場所。⇒キャンプサイト

【のぞき】

深い谷底が覗ける断崖絶壁の上。元来は信仰登山の懺悔の場所。
?!あんたがよくやる行為!?

【ノッカー地形】

大きな岩が散在している地形。北海道の夕張岳などに見られる。造山運動の際に、地下にあった岩石が地表へ出てきたもの。

【のっこし】【乗越】【おっこし】【ぶっこし】

二つの峰の間の低くなった部分。尾根を乗り越えるところ。
はそこにかならず道があるが、乗越は道はないが行けば越せないこともない場合に使われる。単に尾根の窪んだところは鞍部という。⇒コルキレット

【のど】【喉】

谷の両岸が迫って細くなった場所。ゴルジュ。

のぼりゆうせん【登り優先】

狭い登山道で登山者どうしがすれ違うときに、降りの者が登りの者に道を譲る習慣。
 登りの者は斜面の上にいる下山者を発見しぬくいが、降りの者は視界が効く(視野が広い)ので下にいる登山者を見つけやすい。そのため、降りの者が待避計画を立てようという習慣。これは多くの人が誤解しているが、登りの者に優先権があるわけではない。
 当然、登りの者に道を譲ってもらった方がよい場合がある。その時は、降りの先頭者がタイミングを見計らって(相手が待避しやすい場所へ来た時に)「こんにちはー!」と声をかける。登山者同士の挨拶【こんにちは】は、本来はその目的で始まったもの。

【ノルディックスキー】Nordic skiing{E}

ノルウェーで発達した平地を滑走するスキー技術。
【ノルディック種目】=冬季オリンピックの種目のひとつで、距離競争とジャンプ競技を組み合わせた複合スキー競技。