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群馬大学



群馬大学工学研究科
博士後期課程物質工学専攻3年

  
太田 裕志


 
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プロフィル
研究テーマ
石炭がキーポイント
研究の特徴
イオン交換性金属 
趣味やモットー
好きな言葉
 


群馬大学工学部 生物化学工学科
  宝田 恭之 教授

イオン交換性金属 
 
Q そのような炭素質の転換のための触媒としてはどのようなものが適しているのでしょうか。

A  固体と気体との反応を固体の触媒が促進しようとする場合、触媒活性を決定する第一の要素は触媒の分散性です。高活性触媒の研究に既に20年以上費やしていますが、結論は炭素質内に微分散させることが出来れば良いということです。そして、様々な物質を検討した結果、石炭の種類の一つである褐炭がイオン交換能を持っていて、金属をイオン交換して簡単に取り込むことが分かりました。

イオン交換によって取り込まれた金属は極めて大きな触媒活性を示し、例えば、カルシウムやニッケルを用いることによって低温完全ガス化が実現できるようになりました。更に、カルシウムの場合、熱分解後にチャー(褐炭が熱分解した後の炭素質)中に超微粒子として分散し、硫黄化合物や塩素化合物を効率よく捕捉することもわかり、新規な脱硫法、脱塩法の開発につながりました。

具体的には、 水酸化カルシウム水溶液中に褐炭を投入し、一定時間撹拌するだけで、カルシウムイオン坦持褐炭を調製出来ます(図1)。

図1 Caイオン交換褐炭のイメージ

褐炭は、イオン交換性の含酸素官能基が多く、Ca イオンは主にカルボキシル基のプロトンと交換したものと考えられます。熱分解して得られたCa 担持炭チャーのXRD 分析結果を図2に示しますが、熱分解温度700 ℃では、極めて微細に分散しているためCa 化合物に由来する明瞭なピークは認められません。800 ℃では、チャー中にCaO に相当するピークが認められます。この温度でのCaO の結晶子径は、100-200A 程度と推定され、CaO 超微粒子がチャー中に分散していることが示されました。より実用的見地から、小型流動層を用いて混合燃焼試験を行いました。石灰石を脱硫剤として用いた場合、脱硫率はCa/S 比の増加にともない徐々に増加し、Ca/S 比が2 で25% 、4 で60% となりました。高い脱硫率を達成するためには過剰の石灰石を必要とすることが分かると思います。

図2 熱分解したCaイオン交換褐炭のXRDパターン

一方、Ca 担持炭を脱硫剤として用いた場合には、Ca/S 比が1 で80% 、2 で95% という極めて高い脱硫率を達成することができ、Ca 担持炭の効果が顕著に認められました。

図3 Illinols炭チャーとの混合燃焼の結果(流動層)

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