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群馬大学工学部 生物化学工学科
宝田 恭之 教授 |
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石炭がキーポイント |
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Q |
有り難うございます。益々分からなくなったような感じもしますが、出てくる単語から判断しますと、石炭やバイオマスに関係するテーマが多いようです。これからのクリーン燃料の一つとしてバイオマスは新聞などで良く取り上げられていますので分かりますが、石炭をこれほどまでに取り上げている理由は何でしょうか。
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A |
それは結論から言いますと、石炭は21世紀の人類の重要なエネルギー源であり、しかも石炭のクリーン利用こそが地球環境保全に最も寄与するからです。
原子力やその他様々なクリーンエネルギーが話題になっている現在でも、石炭は世界の一次エネルギーの30%弱を担い、石油、天然ガスを合わせると化石資源で世界のエネルギーの90%を賄っています。我が国において1874年に20万t
であった消費量が、1892年には300万t となり、その後もまさに右肩上がりで増加し、現在では1億3000万t
にも達しています。
石炭から連想されることとしては、昔のエネルギー、汽車、煙突の煙、炭坑節、ボタ山など、古い、汚いといったイメージが挙げられますが、過去において石炭消費が減少した傾向は見られません。まさに、過去においても現在においても石炭がエネルギーの主役の一つであることは間違いのない事実です。今後のエネルギー需給見通しでも石炭は重要なエネルギー源として位置づけられています。
また、今後のエネルギー消費は減少するどころか増加することが予想されています。特に、開発途上国の消費量の増大はさけられないものであり、人口の多いアジア地区での大幅な増加が予想されています。2020
年には1990 年レベルの約3倍に増大するものと推定されています。既に大量のエネルギーを消費している我が国の伸びはわずかですが、中国、インド、その他のアジア諸国の消費量は大きく増加します。石炭は埋蔵量も多く、しかも偏在していないことから、今後のエネルギーの主力として消費量も大きく増加することが予想されます。
しかしながら、石炭は化石資源の中でも単位エネルギーあたりの二酸化炭素排出量が最も多く、硫黄分や窒素分を多く含むことから地球環境に与える影響は多大なものがあります。そこで今後、発展途上国を含めた人類全体が豊かで文化的な生活を享受するためには、この使いにくい石炭エネルギーをクリーンで使いやすいエネルギーに高効率で転換するための技術開発が必要不可欠となるのです。
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