1.はじめに
エネルギーを高効率に、しかもクリーンに供給できる燃料電池への関心が高まっています。これは特に数年前から動きが顕著になってきた自動車会社の開発競争が大きく影響しているように思います。ついに年内にも燃料電池自動車が発売されるようです。このほかにも、家庭の電気と給湯を同時に賄う家庭用燃料電池システム、一回の燃料供給で何日も使いつづけられる携帯電子機器用燃料電池など、燃料電池に関する魅力的な話題が新聞やテレビ番組でも報道されています。先日(8月中旬)の新聞にも、2010年では燃料電池の市場が4000億円市場になるという民間調査会社のリポートが紹介されていました。環境との調和を可能にするという、新世紀にふさわしい新しい技術としての期待と、景気低迷に刺激を与える大きなビジネスチャンスの魅力的な話題といえます。一方、現実的な普及という意味では、さらなる効率アップ、低コスト化、信頼性の検証など、まだまだ解決すべき問題が残されています。
一口に燃料電池といっても、使用する材料や運転温度の違いによっていくつかのタイプに分けられています。自動車用や家庭用、そして携帯用として開発・研究されている燃料電池は、一般に高分子イオン交換膜を電解質膜に用いています。高分子は成形し易いので、薄い膜や触媒との混合材料としても取り扱いやすいです。このことが高分子形燃料電池の開発が近年急激に進んできている大きな理由であると私は考えています。
さて、以下では私たち(潟Iプトニクス精密、桐生ガス梶A群馬大学)の共同研究ついて紹介します。内容は、金属材料の超微細精密加工技術を活かして高分子形燃料電池の新規な燃料電池膜を開発しようというものです。燃料電池膜とは、電解質膜に電極が付いた一体化膜のことで燃料電池の心臓部と言える部分です。応用としては携帯電子機器用や次世代の自動車用として期待される、メタノールを燃料とする燃料電池を主に想定しており、超微細精密加工技術を活かして高性能でしかも小型軽量化できる燃料電池膜の開発を目的にしています。共同研究の概要をご理解いただくために、まずは燃料電池膜の構造と直接メタノール形燃料電池の紹介からはじめたいと思います。
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