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群馬大学



群馬大学工学部 材料工学科 教授 大谷 朝男
群馬大学工学部 材料工学科 助手 白石 壮志


 
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1. はじめに
2. EDLCのエネルギー密度を上げるには?
3. EDLC用多孔質炭素材料の現状
4. 共同研究の成果 
5. 今後の展開
 


4.共同研究の成果

  紙面の都合上その概要についてのみ説明する。実験の流れは、図6に示した。

図6 本共同研究の実験工程

 計11種類の変性フェノール樹脂から新規活性炭を調製し、この中から、EDLC用多孔質炭素として有望な8種類の試料(表2)の電気二重層容量を測定した。


すべての試料賦活収率(炭水化物に対する)は40%である。
表2 変性フェノール樹脂の原料と変性フェノール樹脂系活性炭の細孔構造

 その結果を、図7に示す。従来のフェノール樹脂から調製された活性炭のデータも併記した。

図7 各種フェノール樹脂系活性炭の電気二重層容量と比表面積の関係、電解液には有機電解液 (支持塩:四級アンモニウム塩、溶媒:プロピレンカーボネート)を用いた。図中の数字は「単位表面積あたりの二重層容量」を表す(単位はmFcm-2)。

 一見すると、共同研究による新規な活性炭は、従来の活性炭素繊維に比べて、二重層容量が同じかあるいは低く、フェノール樹脂の変性による容量の改善はないように思える。しかし、図7中の各データに数字で付記した、「単位表面積あたりの二重層容量」(Cs)に注目していただきたい。Csは、式2の比例定数のことであり、先述のAとBに密接な関係のある因子である。従来のフェノール樹脂系活性炭のCsは、最大でも約6 mFcm-2であるのに対し、新規活性炭の中にはその値が非常に高いもの(試料CとD)がある。特に、Dの試料の9.4 mFcm-2という値は異常に高い。我々のこれまでの研究では、構造制御によって細孔径を十分に拡大した活性炭でもCsは、最大で7mFcm-2程度であった。このため、試料DのCsが高い理由については、単に細孔構造の影響だけでは説明できず、その他の炭素の微細構造(例えば、細孔側壁の結晶性)が関係あるのではないかと現在我々は考えている。

 Csが高いということは、比表面積さえ大きければ、従来の活性炭素以上の容量が得られることを意味する。本研究では、炭素化・賦活の条件が最適化されておらず、試料CとDについては十分な比表面積が得られていない。これらの試料の高表面積化を行えば、非常に高い二重層容量が得られるのではないかと期待できる。
 
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