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群馬大学




群馬大学工学部 材料工学科 教授 大谷 朝男
群馬大学工学部 材料工学科 助手 白石 壮志


 
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1. はじめに 
2. EDLCのエネルギー密度を上げるには?
3. EDLC用多孔質炭素材料の現状
4. 共同研究の成果
5. 今後の展開
 


1.はじめに

 電気二重層キャパシタ(EDLC:Electric Double Layer Capacitor)はコンデンサの一種であり、活性炭1) などの多孔質炭素の電極を電解液に浸し、イオンを電気的に吸着させることで電荷を蓄える。電気二重層とは、電極表面にできるイオンの吸着層のことであり、ここがセラミックコンデンサや電解コンデンサでいう誘電体層にあたる。図1にEDLCの動作原理を示した。EDLCは、電解液に浸漬した二枚の活性炭電極間に電圧を印加することで充電される。充電時は、電解質イオンが電極表面に吸着し、一方、放電時には、吸着していたカチオン(プラスイオン)ならびにアニオン(マイナスイオン)がそれぞれの電極から脱着する。

図1 電気二重層キャパシタ(EDLC)の作動原理。電解液には希硫酸あるいは有機電解液が使われる。

 EDLCならびにその他類似の蓄電デバイスの特徴を表1にまとめた。EDLCの容量は1グラムあたりで数F(ファラッド)以上であるので、セラミックコンデンサや電解コンデンサと比べると、格段に容量が大きい。これは、電気二重層が非常に薄いのと、活性炭電極の比表面積が非常に高い(1000 m2g-1以上)ためである。また、EDLCを二次電池と比較すると、出力密度*、充放電の可逆性(充放電効率)、寿命といった点で優れている。EDLCは、こうした特徴を生かして既にICやLSIのメモリーバックアップ電源として実用化されている。

表1 各種蓄電デバイスの特徴
特 性 電解
コンデンサ
電気二重層
キャパシタ
二次電池
容 量
出力密度
エネルギー密度 極小
充放電効率
寿命 ×

 最近では、夜間電力の貯蔵システムあるいは電気自動車(EV)用の大容量EDLCが研究開発されている(図2)。EDLCを電力貯蔵システムやEVに使う場合、競合相手である二次電池と比較すると、エネルギー密度**の低さが問題となる。鉛蓄電池のエネルギー密度が約70 WhL-1、リチウムイオン電池が約200 WhL-1であるのに対して、EDLCのエネルギー密度は現状では4 WhL-1程度に過ぎない。

図2 EDLCの用途展開

 図3に、各種二次電池とEDLCの出力密度とエネルギー密度の関係を示す。EDLCは、出力密度に優れるがエネルギー密度は劣る。例えば、ハイブリッド電気自動車(HEV)用のEDLCを実用化するには、現状の2倍程度のエネルギー密度が必要とも言われ3)、エネルギー密度の改善が必須である。

図3 二次電池ならびにEDLCのエネルギー密度と出力密度の関係

 
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