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群馬大学




群馬大学工学部 材料工学科 教授 大谷 朝男
群馬大学工学部 材料工学科 助手 白石 壮志


 
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1. はじめに
2. EDLCのエネルギー密度を上げるには?
3. EDLC用多孔質炭素材料の現状 
4. 共同研究の成果
5. 今後の展開
 


3.EDLC用多孔質炭素材料の現状

 多孔質炭素電極の二重層容量(C)の大きさは、以下の関係式で表すことができる(式2)。

(式2)

 Eoは真空の誘電率、Erは二重層の比誘電率、δは二重層の厚み、Sは多孔質炭素の細孔表面積である。式2は、セラミックコンデンサや電解コンデンサなどの静電容量に用いられる関係式と基本的には同じであり、容量は比表面積に比例する。また、その比例定数(Cs)は、二重層の誘電率と厚みに支配される。このことから、多孔質炭素電極の二重層容量を上げるためには、
   @イオンが吸脱着できる比表面積を増やす、
   A二重層の比誘電率を上げる、
   B二重層の厚みを小さくする、
のいずれかを行えばよいことが分かる。

 EDLC用の多孔質炭素材に活性炭が使われるのは、活性炭にはミクロ孔と呼ばれる微細な孔(図4参照)が大量にあり比表面積が大きく、高い二重層容量が取り出せるためである。しかし、電解質イオンの大きさは約0.5 nmから1 nm(1ナノメーター:10億分の1メートル)であるので、ミクロ孔の大きさに近く、電解質イオンが吸脱着できないような小さなミクロ孔が炭素電極中に存在する。

図4 活性炭の細孔の分類

 このことから、EDLCの高容量化には、電解質イオンが十分に浸透できるような大きな細孔(例えば、メソ孔)を多く含み、かつ、比表面積が大きな多孔質炭素があれば良いと信じられてきた。実際に、EDLCに適した細孔構造を持つ活性炭がこれまでに探索され、その結果、細孔径分布の最適化によって二重層容量を向上できることが分かった2,3)。しかし、最近の研究結果では、EDLCを電力貯蔵やEVに用いるには、細孔径分布の最適化だけではエネルギー密度が不足することが明らかになりつつある。先述のAまたはBからのアプローチも検討せねばならない。また、高度に構造制御された多孔質炭素はコストが高い。コストのかからない方法で安価な原料から、EDLCに適した多孔質炭素材を製造する必要があった。

 以上のことから、我々は、活性炭の原料であるフェノールホルムアルデヒド樹脂(図5)の製造販売において長年実績のある群栄化学工業鰍ニ共同で、フェノール樹脂をベースとしたEDLC用新規多孔質炭素の開発を行うこととなった。具体的には、従来のフェノール樹脂の構造を一部変化させた「変性フェノール樹脂」から、炭素微細構造の異なる種々の新規な活性炭を調製し、変性フェノール樹脂系活性炭の微細構造と電気二重層容量の関係について明らかにすることを目的とした。

図5 従来のフェノールホルムアルデヒド樹脂の構造

 
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