研究紹介トップへ

群馬大学



群馬大学工学研究科 博士前期課程1年
  
土屋 知英
群馬大学工学研究科 博士前期課程1年
  
野口 裕司


 
当研究トップへ
大学で一番力を入れてきたこと
入社した企業でのスタンスと退社
最近の主な研究 
研究者としてのこだわりと抱負
 


群馬大学工学部 電気電子工学科
  安達 定雄 教授

最近の主な研究
 
Q 現在、研究室で使われている主な装置の簡単な説明をお願いします。
A  主装置は分光エリプソメトリー(SE)です。試料に入射光を照射し、反射光の位相変化を測定することによって、試料表面の物理的情報を得る装置です。この装置で、半導体などの基礎物性やデバイスプロセスに関する研究を行っています。

 また、RFスパッタリング装置による薄膜物性や、変調分光スペクトロスコピー装置による半導体のバンド構造解明の研究も、宮崎助教授や尾崎助手とともに進めています。

Q 最近の研究成果の1つか2つを説明願います。
A  先ず1つは非晶質(アモルファス)の新しい解釈です。

 一般の非晶質では、"原子の長距離秩序性は失しているが、短距離秩序性(例えば、a-Siではテトラヘドラルのネットワーク)は保たれている"と言われています。

 短距離秩序性が非晶質で保たれているゆえ、X線回折やラマン散乱でも、ハロー又はブロードなX線回折、ラマン散乱信号が、これらの材料で観測されます。ラマン散乱の事実から、非晶質のフォノン状態密度は、結晶のそれとほぼ近いもの(厳密に言えば、結晶のそれの"ブロードバージョン")と考えられます。

 ならば、電子の状態密度もフォノンのそれと同じく、結晶の"ブロードバージョン"と考えてもよいことになります。したがって、非晶質のバンド構造も結晶のそれと非常に類似していると考えてもよいことになります。はたしてそうでしょうか?答えは、ハイのようです。

図1. 非結晶質Siのバンド構造と誘電率分散スペクトル

 図1(a),1(b)は、結晶Si(c-Si)に類似と考えた非晶質Si(a-Si)のバンド構造と状態密度関数N(E)です。これが正しいとするなら、a-Siの光学定数が我々の提唱するc-Siのモデル誘電関数理論(MDF)で説明できることになります。実際、a-Siの誘電率分散e(E)をMDF理論で解析した結果を、図1(c)に示します。 結晶Siと同じく、a-Siの誘電率分散もMDF理論でよく説明できることがわかります。すなわち、結晶はブラッグギャップ、非晶質は化学ギャップの違いがあるのみで、両者のバンド構造と光学的性質には、結晶あるいは非晶質と区別するほどの明確な違いがないと結論されました(詳細はPhys. Rev. B, Vol. 66, p. 153201, 2002参照)。

 上記では物性研究の一例を紹介しましたので、次はプロセス研究に関する1つの例を紹介します。HF水溶液がSiの自然酸化膜であるSiO2をエッチするのはよく知られております。逆に、「HF以外でSiO2がエッチ可能な薬品は?」と問われると、答えに窮してしまうのが普通です。HFは人体皮膚浸透能が高く、眼球 や人骨をも侵す極めて危険な薬品で、使わないに越したことはありません。「HFに代わる薬品がないものか?」との視点で研究を進めました。当時修士2年のT嬢が、「食後いつも世話になっている練り歯磨の成分にNaFが配合されており、このNaFを購入して実験してみたい」と言ってきました。彼女にどうぞご自由に(別に見放したわけではありません)と研究を進めさせました。

図2. FaF水溶液浸透時間に対するSi表面の接触角(q)依存性

 図2は、NaF水溶液浸漬時間に対するSi表面の接触角(q)依存性です。SiO2で覆われたSi表面は親水性であり、これをHFなどで除去すると疎水性へと変わります。NaF水溶液処理の場合、挙動が若干複雑ですが、最終的にHFと同じくSiO2がエッチされて疎水性に変わります。NaF水溶液でSiO2がエッチされることは、SEやX線光電子分光法でも確認しました。NaFはNaCl(食塩)と同じくアルカリハライド族です。NaF水溶液がSiO2をエッチするとは驚きでした。なお、これのエッチ機構として、加水分解により生成されたF-イオン(HF)が関係していることが分かりました(詳細はJpn. J. Appl. Phys., Vol. 40, p. 6705, 2001参照)。

Q 光:これら以外にどんな研究を行っておられますか?
A  学的手法によるイオン注入プロセス評価、II-III2-VI4族半導体の電子・光物性、Siおよび化合物半導体の表面パッシベーション、反応性スパッタリングによるN系半導体の電子・光物性、量子ドット等に関する研究です。

Q 先生のこれまでの業績を垣間見る何かありませんか?
A  末っ子のミニ・バスケットボールの応援です。本誌が刊行されるころ(3月)には新人戦地区予選を突破し、晴れて県大会の応援に行っていたいものですね。
北関東産官学研究会トップへ