ホームへ 
「小耳にはさんだいい話」へ


321号〜330号


324号 凡事徹底
  『凡事徹底』ー前橋育英高校野球部で教え続けていることーという本が出版されました。「はじめに」で前橋育英野球部の荒井直樹監督は「私が書けるのは、ほんの些細なことだ。だがその小さな出来事の積み重ねが今に辿り着いたのは間違いない。『当たり前』を当然と考えて疎かにするのではなく、『当たり前』だからこそ徹する、しかも誰より、丁寧に、しぶとく、」と書かれていました。

 今から二十三年前、荒井監督が前橋育英の指導者になり、指導方法に迷っていた頃、たまたま読んだ雑誌で、イエローハット創業者の鍵山秀三郎さんの『凡事徹底』という言葉に出会ったそうです。「誰にもできることを、誰にもできないくらい徹底してやること」という言葉に「まさにその通り」と感服した荒井監督は、野球の中で最も大事で、すべての要素が含まれているキャッチボールを徹底的に指導することにしました。そして「何度言ったらわかるんだ」ではなく、同じことを表情を変えずに言い続けました。甲子園で優勝する前は「あのやり方では絶対ダメだ」、「怒らないから勝てない」と言われ続けてきましたが、八年前に初優勝してからは「凡事徹底の発想がいい」「選手を信じる指導がいい」「怒らないから選手が伸びる」と称賛されるようになりました。

 荒井監督は「何が正解かはわからない。だが、選手たちに求め、自らに掲げるのは、誰かを超える、この人に負けないではなく、『自分を超える』ということ。そう考えれば、きっと少しずつ、たとえ1ミリでも成長できるはずだ」と語っています。「指導者として私にできることは、寄り添うこと」という言葉は、荒井監督の人柄を端的に表していると思います。

 荒井監督と鍵山秀三郎さんが初めて会ったのは、前橋育英が優勝した翌年の二月、鍵山さんが大間々へお越しになった日のことでした。「凡事徹底」を実践し続け、多くの人たちに感動と共感を与え続けるお二人の話を目の前で聞いていた私たちも深く感動し、「凡事徹底」を唱えるだけでなく実践しようと誓いました

 323号 3年ぶりの感動特集
  三十年前からネパールで単身で支援活動を続けているOKバジこと垣見一雅さんが日本に帰国し、全国各地で支援者へのお礼の報告会を開いています。帰国直後に届いた垣見さんからのメールを読んで、私たちが忘れていた大切なことに気づかせていただきました。  

『去る五月十四日、三年ぶりに日本に帰ってきました。カトマンズからの直行便 RA 433が成田空港に着陸した時のドシンというショックが、今でも気持ちをワクワクさせてくれます。空港内ではコロナ関係の検査で三時間かかりましたが、無事に通過しました。

 今日は三年ぶりに帰ってきた感動特集をお送りいたします。 

あまり迷わずにSuicaのリチャージができて感動。

娘の所に着いて水道の蛇口から水が出、更にそれが飲めて感動。

シャワーの水勢の強さに感動。さらに湯が出て大感動。

湯船に三年ぶりに浸かって天国気分で感動。(涙が出たことは内緒です)

洗濯を機械がやってくれて感動。

日本語で買い物ができて感動。

醤油味に感動。旨い。懐かしい。

どの車も僕の頭と同じピカピカで感動。

道にゴミが落ちてなくて感動。凄い!

電車のpunctuality(時間厳守)に感動。すごい国です。

自分の母国がこんなに素晴らしい所だと改めて思い直し、嬉しさが伝わり、また感動。 

 でもネパールと違って少々悲しかったことは、

子供の声が聞こえない。人の顔の表情が固い。笑い声が少ない。空が狭い。漲るエネルギーが感じられない。下向き老人が多い。(僕もかな?)

これから皆様の所にお邪魔させていただきますのでよろしくお願いします』

 

 私たちは恵まれ過ぎて、感謝や感動を忘れていると思いました。トルストイの

「一切の不幸せは不足から生ずるのではなく有り余るところから生ずる」という言葉通りだと思いました。感謝を忘れず前向き老人になろうと思いました。

 

 322号 小善のすすめ

 今から三十年ほど前にカー用品のイエローハットの創業者・鍵山秀三郎さんを知りました。鍵山さんは自転車一台で行商から身を起こし、一代で理想の会社に仕上げた尊敬する人格者です。鍵山さんは小さなことを疎かにしない「凡事徹底」の実践者で、その生き方に共鳴した人達が「日本を美しくする会」を作り、「掃除を通して心の荒みをなくし世の中をよくする」という活動を続けています。鍵山さんと出会ったことがきっかけで大間々駅のトイレ掃除がはじまり、その翌年には大間々の「ながめ余興場」で鍵山さんの講演会を開きました。その時の話を本にしたのが『小善のすすめ』です。

 今から三千年前に作られた中国の『易経』という書物の中に、「小人は小善をもって益なしとして為さざるなり。小悪をもって傷(そこな)うなしと為して去らざるなり」という言葉があります。鍵山さんは「小人(普通の人)は、小さな良いことをしても益はないと思ってやらない。例えば、目の前にゴミや空き缶が落ちていても自分にプラスになるわけではないと思ってやらない。一方、吸殻や空缶を捨てるような小悪をしても誰も見てないからいいだろうと思って小悪を止めない。小善はやらないで、小悪はやるのと、小善をやって、小悪をやらないのとでは、一日や二日では大した差ではありませんが、五年十年と続けると、人生が変わるくらい大きな差になるのです」と言っていました。道端にゴミや空缶が落ちているのを見ると、今でも鍵山さんの笑顔と「小善」と「小悪」という言葉が頭に浮かんできます。

 鍵山さんが大間々に来るたびに、駅のトイレ前の花壇の雑草を一本一本丁寧に抜いて、同じ向きに束にして並べながら『益はなくとも意味はある』という言葉も教えていただきました。

 大間々駅のトイレ掃除は平成九年七月二十五日に第一回目を行い、一週も途切れることなく、六月十日で千三百回を迎えます。そして、七月には丸二十五年を迎えることになります。『十年偉大なり、二十年畏るべし、三十年歴史なる』という言葉通り、一回一回の小さな積み重ねが歴史を作り、自分自身を作り上げていくのだと思います。

321号 はがき一枚の力

 今から二十九年前、単身でネパールの寒村に移住し、村々への支援活動をはじめたOKバジこと垣見一雅さんは、長年の活動が評価され、ネパール暦の一月一日(四月十四日)にネパールの大統領から勲章を授与されました。その時の報告と写真がメールで送られてきました。「大統領や首相をはじめとしてお偉方がずらりと並んでいる前で、一人一人の名が呼ばれ、簡単に活動内容が説明され、大統領からメダルを受け取りました。今回私が着ているものは上から下まで全て村人達がプレゼントしてくれたものです。着せ替え人形ぶりをご覧ください。・・・今年は帰国できることを楽しみにしています」

 桐生市の富澤繁司さんと垣見さんは三十数年来の友人で、垣見さんがネパール移住を決めると同時に、物心両面の支援を開始、桐生で「OKバジを支援する会」を立ち上げました。小さな善意の累計は桐生の会だけで六千三百万円を超えました。今では全国に支援団体が誕生しており、富澤さんも天国でさぞ喜んでいると思います。

 OKバジは『からっぽがいい』という著書の中で、「毎年、父の日にネクタイを買う代金の中から、千円寄附してくださる方がいる。ある年、その千円で山奥の子どもたち五十人に、一冊二十円のノートを買ってプレゼントした。子どもたちがそのノートを高く上げた姿を写真に撮り、寄付してくれた方に送った。彼女は自分の千円がこんな形で活かされたと、喜びの手紙を送ってくれた。それを受け取った私も、さらに嬉しくなり、お礼のハガキを書いた。喜びのキャッチボールである。この種の喜びが私を励まし、私を生かしてくれた。私がたくさんの団体、個人の方から支援金をお預かりできたのは、一見小さく見えるハガキ一枚の力だと信じている」、という話の通り「寄付をするならOKバジへ」という方が増えています。

 六月四日午後二時、OKバジが三年ぶりに桐生に来て、文化会館で活動報告会を開催する予定です。