素材の判別 カヤステインQの利用

2000/05/03更新


繊維素材の判別は、様々な参考書に書かれているので、今回は省略。 ただ、どの方法も、繊維が1種類を想定しています。しかし、 実際の繊維製品では、2つ以上の繊維素材が使われていることが多く、 判定に苦労することもあります。その中で、判別が難しかった例を紹介します。

1)ポリプロピレン ナイロン 引き揃え糸 

   色が同じため(白)であるため、1種類と先入観を持ってしまった。 燃焼させると、灰は固く合成繊維と思われるが、ポリエステルでも、ナイロンでもない IRで分析するが、チャートはポリプロピレンと似ているが異なるピークがある。 ポリプロピレンの共重合体とも考えたが、比重を比べる方法を思い、水に沈めてみる。 一部が沈殿、一部が浮く。ここで、2種類以上の繊維が混ざっていると考え、カヤステインQで染めてみたところ、 しっかり2つの部分に染め分けされた。色分けした各々をIRで分析すると、各々、ポリプロピレン、ナイロンと確認された。 そこで、この糸の正体は、「ポリプロピレン ナイロン 引き揃え糸」と判定した。 素材の分類は、糸種をひとつを想定していることが多く、糸種を判定する時に、何かおかしな点があれば、 2種以上のまざりものの可能性を考慮した方が良い。その時には、染め分けることをやってみるといいと思う。 私の場合は、カヤステインQを使用しています。分量はあまり守っていませんが、色相は糸種判定の手段としています。

***カヤステインQ (KayastainQ) ***
鑑別用染料 日本化薬(株) 主要12繊維の鑑別が簡単にできる繊維鑑別剤。いくつかの染料が組み合わさっており、 常圧で染める(煮る)ことにより素材に応じて、色相が代わり素材を判別することができる。100g 4,500円 
詳しい説明 → リンク

 

2)カチオン可染ポリエステル・レギュラーポリエステル交撚糸

ポリエステルの双糸と思っていたら、片方がセミダル、片方がブライトであった。 ポリエステルでダルとブライトの交撚糸では、納得がいかないので、カヤステインQで染めてみると、 ブライトの方がカチオン可染ポリエステルとわかった。後で染め分けてモク糸として利用することがわかる。この場合カチオン可染側に濃色を用いる。 

**その他、カヤステインQの使用例**

白いニット生地横編み
糸を2、3本引きだし、糸種を判定した。その後、カヤステインQで染めてみるとボーダー柄になった。 つまり、2種類の糸が使われていた。始めに引き出した糸のみで考えていたら誤るところであった。

裏糸の確認
ニット生地は、裏糸は見えにくい。裏糸は、糸種の異なる糸が使われていることが多く、染め分ければ確認できる。

とは、言っても、カヤステインQも万能ではない。

1)様々な繊維が同時にある時は、色相がずれる。
 これは、多染交織布を染めてみると良くわかります。 特にポリエステルの色相が変わります。 理由は、ポリエステルを染色する分散染料がより吸収しやすいナイロンを染色するためと思っています。 (確認はしていませんが。)  
2)もともと色がついている時は、糸種の判定は難しい。
経験上、ベージュぐらいの色まで、色がかぶることも想像して使用します。 その場合でも、糸の種類がわかるのでやってみる価値はあると思います。 色分けができると、顕微鏡観察もしやすくなります。もちろん、燃焼時の臭い・灰、薬品の可溶性、IRなども有効な手段で、組み合わせて、糸種を判定します。 
3)樹脂加工されているものは、色相がずれる。
 樹脂のたっぷり付いたものは、カヤステインQで染色すると樹脂に色が付いてしまい、判定が難しくなる。 以前、組み紐を染めると、緑色になったので、ナイロンと予想したが、よく見ると、中のほうは黄色で、表面だけが緑色になっていた。 摩擦性能向上のため、ポリエステル糸の組み紐にナイロン系の樹脂を表面に塗布していることがわかった。 エチルアルコールで洗浄すると樹脂が溶け、繊維の色がはっきりすることもある。 
この方法を逆に利用すると、樹脂の区別ができる。樹脂は糸についている樹脂は微量のため、分析はしにくい。 カヤステインでも定性・定量ともできないが、色の違いは何かが違うことを示している。
 樹脂については、 浜松工業技術センター繊維加工技術スタッフが「現場でできる簡単な定性試験」の中で 「接着芯地に使用されているバインダ−の樹脂鑑別」についてレポートを出している。  →リンク

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