「障害者に対する見方を考える」
第1時〜不自由さとは〜

篠 崎 孝 一


論文全文
説明
    耳の不自由なSさんへ、4人の子どもがそれぞれお礼のあいさつをしています。
    でも、Sさんはうれしそうではありません。 
発問1
    4人のあいさつのどこが、Sさんを悲しくさせるのでしょう。
    その言葉に赤線を引きなさい。引けた人は理由も書きなさい。 

 
 @「手話を教えてもらえて、とてもよい勉強になりました。手話がもっとできるようになれたらと思いました。
   Sさんも、障害があることに負けないで頑張って下さい。」  
 A「家の人にも今日勉強した手話を教えてあげたいです。Sさんどうもありがとう。これからも、耳が不自由で
   大変なこともあると思いますが、障害にめげずに頑張って下さい。」
 B「手話には自分たちが生活の中で使っている物がありました。さよならで手を振るのもそうでした。これからも
   耳が聞こえない障害を乗り越えてまた僕たちに手話を教えに来て下さい。」
 C「手話をやっているとどんどん楽しい気持ちになってきました。これからも障害を克服しながら頑張って下さい。」

解説とポイント
【説明・発問1】
    ・耳の不自由な方から、手話を教えてもらったことに対するお礼の場面であることを確認する。
    ・児童には、@〜Cの文をプリントした紙を配り書かせる。
    ・あまり長く書かせない。(5分)
指示
   線を引いたところを発表しなさい。 
指示
   理由を発表しなさい。
解説とポイント

    ・線を引いたところと理由は全員に発表させる。《テンポよく》     ・同じ意見でもかまわず言わせて認める。
    ・全員発表が終わったところで正解を教え《正解は太字の部分》、次のように説明する。

説明

    これらの言葉は、私たちが励ましの言葉のつもりで使ったものです。Sさんに障害あったとしても元気に頑張って
    ほしいと思って送ったエールです。でも、Sさんの立場からするとその言葉は、応援でも何でもないというのです。
    「耳が聞こえない」というのは確かにSさんにも私たちにも事実です。でも「耳が聞こえないのは障害である」と思っ
    ているのは私たちです。「耳が聞こえなくて大変だろう」と思っているのも私たちです。それに対してSさんは「耳が
    聞こえないのは障害だと考えたことがない」と思っているのです。「耳が聞こえないのは、生まれつきの自分らしさ
    の一つである」と思っているのです。 

発問3
   みんなが食事に出かけることになりました。Aあなたが車椅子に乗っているとしたらどんな心配をしますか。
   書きなさい。 
発問4
   みんなが食事に出かけることになりました。Bあなたの手が不自由だったとしたら、どんな心配をしますか。
   書きなさい。 
解説とポイント

【発問2・3・4】
    ・発問を1つするたびに考えを書かせ、発表させる。
    ・発問2は、普段の自分の様子を問うもの。
     《おいしい店か。心配しない。時間が間に合うか。お金は大丈夫か。・・等の意見が出る。》
    ・発問3・4は、普段あまり考えない障害を、自分が持っている場合を問うもの。
     《車の乗り降り。店に段差がないか。周りからじろじろ見られないか。他の人に何か言われないか。・・等、
      発問2の時とは明らかに意見が変わる。》
    ・発表させた後、渡辺尚人氏の説明を読む。
    ・その後、感想を書かせて授業を終える。

説明
   不自由さというのは、当事者にならないと分からないものが多く、周りの人が簡単に軽いとか重いとかを判断
   すべきではない。手も足も目も耳も、不自由さはそれぞれに大変なのだ。障害を持たない人たちが当たり前にで
   きることでも、障害を持った人たちはたくさんの努力を使っている。障害を持った人たちが、その不自由さに大変
   な気の遣い方をしながら、自分の人生を少しでも生かそうと一生懸命な態度を、しっかりと見てほしい。 
指示
   あなたたちは、自分の身体に備わっているいろいろな能力を使うことにどのくらい熱心でしょうか。
   そのことも考えながら、今日の感想を書きなさい。 



全発問・全指示 子供の感想 追試・修正論文など

 

※参考・引用文献       ○JVE教育27号 「生きる」O先生に教わったこと 渡辺尚人
               ○JVE教育28号 JVE基本マナー12 大場寿子