夜の甲板――
聞こえるのはかすかな波音とかすかな呼吸――
この日サンジは一人寝つけずに甲板で煙草を吹かしていた。
「(畜生!何でアイツは昼間寝てるのに夜寝つけるんだ!?)」
アイツ――
『ロロノア ゾロ』
同じ歳の所為か、自分に無い何かを持っている所為かどうしても気の合わないアイツ…
「(くそ!!ムカツク!!!)」
寝酒に一杯やろうと吸っていた煙草を消すと一人キッチンへと向かう。
キッチンに着けば先程自分がしていた朝食の仕込みの良い匂いがする。
サンジはこの部屋が好きだ。
ほぼ一日中この部屋で過ごしているからという他に、サンジは幼少の頃から料理店の
雑用から副料理長までをこなしていた為、昔からキッチンには落ちつきを憶えたのだった。
席につき、火を点けぬままに煙草を咥え、自分の為にグラスにウイスキーを注ぐ。
グラスを口につけ味わうかのように、ゆっくりと口内へ流し込めば、
ウイスキー独特の風味と舌のしびれが脳を侵食して行く…
不意にグラスの中の氷が音をたてる――
もう何分経ったのだろう、いやもう既に一時間以上経過しているのかもしれない。
そんな時間をサンジは何をする訳でもなく、考えるわけでもなくその行為を続けていた。
部屋の外に誰かの気配を感じた。
この気配は――
アイツだ――――
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