口内の異常

 ヘビで見られる口の中の異常には、口内炎・牙(歯)が折れる・口腔粘膜の色調の変化などがあります。出血・膿や様々な滲出物がたまるなどの症状が見られますが、そのような症状が見られるヘビの多くが餌を食べない・元気がないなど全身状態も悪くなっています。口の中に異常が見られる場合には、口の中だけではなく体の他のところにも異常がある可能性も考えることが重要です。


口を完全に閉じることができず、透明の粘液が口から出ているのが確認できました。(シマヘビ)
上のシマヘビの口を開けたところ。粘液がたまっています。このシマヘビは肺炎を起こしていました。
口内炎の重症例。粘膜が真っ赤になり白い膿がたまっています。(シマヘビ)
ヤマカガシです。口から赤いものがはみ出しています。

!〉ヤマカガシは毒ヘビです。この写真のようにつかもうとすると思いきりかんでくることがありますので、捕まえないようにしましょう。
上のヤマカガシの口を開けると白い膿がたまっていました。粘膜も赤くなっていました。このような状態では餌は食べませんのですぐに治療を行う必要があります。
除去した膿のかたまり。除去後は口の中をきれいに洗浄消毒し、必要に応じて抗生剤などを使います。

 スネークセンターでは研究などのためにいろいろな毒蛇から毒をとること(採毒)を行っています。この採毒の時に口の中に傷ができてしまうことがときどきあります。この傷が元で口内炎を起こすことがあります。


採毒の後に見られた口の中のはれ。
(ニホンマムシ)
ところどころで出血が見られ、浮腫を起こしています。


 ハブなどの毒ヘビから採毒しようとして口を開けると毒が出てくる牙がなかったり、採毒の途中に牙が折れてしまう場合があります。折れるというよりはポロッと取れてしまう感じです。ヘビの歯は生涯を通じて何回も生え変わりますので、ちょうど生え変わりの時期には簡単に取れてしまいます。餌といっしょに自分の歯も飲み込んでしまい、糞の中から発見されることもよくあります。


右の毒牙が抜けています。(ハブ)
普段ハブは2本の長い毒牙を持ち、その先端近くから毒液が出てきます。

 ヘビの口の中の異常を検査・治療するためにはヘビを捕まえて頭部を固定し、さらに口を開けなくてはなりません。ヘビの種類によっては口を開けにくい場合もあります。毒蛇のハブやマムシなどは口をパカーっと開けっぱなしにしておくことが比較的簡単にできますが、アオダイショウやニシキヘビの仲間などはピンセットなどの小道具が必要になってきます。また、大型で力の強い毒ヘビは捕まえることさえ危険なケースもあります。そのような時には麻酔をかけることもあります。


タイワンアオハブの口を開けているところ。
辺縁と毒牙を包んでいる膜が赤くなっています。
ライノセラスアダーという毒ヘビです。超大型というわけではないのですが、力が強く、防御体勢の特徴から麻酔をかけてから捕まえた方が無難なヘビです。強引に捕えたとしても人間が危険なだけではなく、首の骨を折るなどヘビの方もいたむ可能性があります。
シマヘビなどでは口を大きく開ける場合にはこのようにピンセットなどを使います。


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