桐生の先人に学ぶ

野間清治顕彰会会長代行 竹 田 賢 一

 平成17年度途中で、突然会長代行を仰せつかり躊躇しましたが、野間清治顕彰会の事業は継承しなければなりませんので、1年限りの代行という事でお引き受けしました。
 そして群馬県では4月より、「地域で出来ることは地域で」、新たに県民局が発足し、県庁に出向かなくても行政事務所が事業の助成や指導をしてくれる事となり、早速県補助事業として「桐生の先人に学ぶ」をテ−マとして承認されました。
桐生独自の庶民文化を作り上げてきた先人を再確認することとし、桐生在住の方々に講師となって頂き、「卓話」形式で5話、シンポジュ−ムで2回開催しました。

 第1話 「森喜作を語る」延命立雄元校長先生は、若かりし頃小型映画で森喜作を取り上げて「なばよ出ておくれ」を製作し、椎茸菌培養の発明に至る映画を製作した時の秘話や人間味溢れるエピソ−ドなどを語った。

 第2話 「長沢延子を語る」テキスタイルデザイナ−新井淳一氏
桐生女子高等学校生だった延子が、プロレタリア文学に目覚め詩人として残した「海」など紹介し、機織屋で良家の娘はなぜ自殺したのを解明した。

 第3話 「桐生織物先覚者森山芳平」ペンクラブ常務理事片山弘美氏
 桐生織物発展にジャ−カ−ドを導入し、文学にも秀で旅には矢立てを携行し、目を患ってた妻を介護しながら、全国の業者を指導したので地元業者からは非難があったが、彼は請われれば誰にも教えた。彼の織物は、アムステルダム万博で金賞に輝いた。

 第4話 「父南川潤を語る」子息で桐生タイムス社員 秋山克也氏
安吾と父との絶交秘話や、桐生を愛した南川は客人達に「美しい街だろう」と自慢していた。取材記者を大切にし、父の最後は庭で倒れていたのを発見したのは私です。

 第5話 「近代化遺産を語る」無鄰館館長 北川紘一郎氏
和服姿で登場したのは、桐生は織物の町だから普段着物を着用している。「街づくり」に励む同氏は、桐生にはノコギリ屋根工場が240棟ある。これこそ近代化遺産であり活用を図らねばと強調する。

シンポジュ−ム(1)書上ミュ−ジアム
パネリスト
 清水照治(桐生古文書同好会会長(文化・文政・天保期の書上家)
 青木玲子(桐生古文書同好会) (近世桐生新町の女たち )
 宮崎俊弥(前橋国際大学教授) (明治・大正期の書上商店)
 亀田光三(桐生文化史談会会長) (業界情報誌書上タイムス)
 中村一郎(書上商店最後の番頭 (書上商店のよもやま話 )
コ−ディネ−タ−
 大里仁一(桐生市教育資料室室長・桐生文化史談会副会長)
* 第1部 書上邸跡地に残る蔵群(野外ミュ−ジアム)見学
* 第2部 19〜20世紀の桐生で経済・文化・行政に貢献した書上文左衛門家をテ−マに、第一線で活躍する研究者が書上家文書などの資料に基づき、学術研修をわかり易く紹介する。
 シンポジュ−ム会場は、由緒ある民家の集会所で講話を聞いた。

シンポジュ−ム(2)安吾を語る
講師
 若月忠信(敬和学園大学教授・文芸評論家)
 奈良彰一(桐生安吾を語る会代表)
 蓑崎昭子(安吾研究者)
司会
須田利一郎(野間清治顕彰会副会長)
* 安吾の文学を現場主義で評価
 昭和21年戦争に負けて「堕落論」を発表し、それから小説「白痴」を書いたのである。奈良・蓑崎氏との鼎談では桐生での様子が詳しく聞くことができた。
尚、安吾の生原稿展は桐生市中央公民館で開設され、当日は講師自らが解説者となって、生原稿を解説してもらった。

 標記の補助事業は、理事会会議終了後や、会場に出向いて開催したので公開講座にしてほしかったとの要望が講座終了後に意見として出されるほどの好評でした。