研究の成果  

 平成14年10月15日に校内研究で研究授業と授業研究会を実施し、今市市教育委員会教育総務課教育指導係長の池田輝美先生に御指導いただきました。以下に指導案を掲載いたします。なお当日は上都賀地区小学校教育研究会道徳部会の先生方にも参観していただきました。


2年1組 道徳学習指導案
 
 
1.主題名  大切な思い出 3−(3)敬虔
 
2.資料名  「大きな古時計」アメリカ民謡
 
3.主題設定の理由
(1)内容項目について

 学習指導要領の低学年の内容3「主として自然や崇高なものとのかかわりに関すること」の(3)「美しいものに触れ,すがすがしい心をもつ」を受けている。また,関連する価値として4−(2)「家族愛」が考えられる。
 この内容は,美しいものや崇高なものとのかかわりに関するものであり,それらに対して感動する心や尊敬する心は,児童一人一人の生き方をより一層豊かにするために大切なものである。そのために自然の美しさや心地よい音楽,物語などに語られている美しいものや清らかなものに素直に感動するような体験を通して,すがすがしい心をもつように指導していく必要がある。
 
(2)資料及び指導観
 大きな古時計の原曲はアメリカ民謡「Grandfather's Clock」でHenry Clay Workによる1878年の作品である。日本では昭和37年に紹介され,その際和訳は保富康午氏が行った。歌詞は3番まであり,1番では100年間動いていた古時計は,おじいさんの生まれた朝に買ってきた時計であることが歌われる。2番では古時計はうれしいことも悲しいことも,つまりおじいさんはもちろん,家族のすべてを見続けていた時計であることが歌われる。そして,3番ではおじいさんとのお別れの時を皆にベルで教える古時計が歌われる。
 この歌は幼稚園や保育園でも歌われ,子供たちにとって大変なじみ深い曲であり,1年生の時,朝の会で歌ったときも,体で時計のまねをしながら歌う子供がいるほど,歌いたいという気持ちが強い曲である。そのことから,今回資料として取り上げることで,本時の学習への興味関心が高められると考える。
 この歌に歌われる古時計は,今はもう動かない時計である。しかし,この時計を家族がいつまでも大切にしているのは,おじいさんとともに生きてきた時計には,かけがえのない思い出が詰まっているからである。そこで本時では2番に歌われる「うれしいこと、かなしいこと」とは何かを考えさせる発問や指示を工夫し,またそのときの時計の気持ちを考えさせることで,古時計が家族にとって思い出の詰まった大切な物であることに気づかせたい。そしてそれらのことから,この歌にある美しさやすがすがしさを素直に感じさせたい。さらに自分にとって,また家族にとっての思い出を大切にしていきたいという心の美しさにも気づかせていきたい。

4.本時の指導
(1)ねらい
 思い出を大切にする心にふれ,それらの美しさを素直に感じようとする心情を育てる。
 
(2)人権教育の視点
 美しいものやすばらしいもののよさを素直に感じることにより,身の回りの様々な事柄にも素直な心を傾けられるようにしたい。(感受性)また,そうして感じた自分の思いを進んで表現できるようにしたい。(実践力)
 
(3)生かしたい児童
 A児:普段から家族の思い出を大切にするような言動が見られる。みんなの前でその思いを生き生きと発表させることで,聞き手にA児の心の中にある美しさを感じ取らせたい。同時に自分の心の中にある美しさにも改めて気づかせたい。
 
(4)展開 ○中心発問 ◎人権教育上の配慮事項

学習過程

学習内容と主な発問

児童の予想される反応

支援の手だて

資料



価値への方向付け 

1家族の思い出についての,アンケートの結果を発表する。


・うれしいこと悲しいことがはっきり区別できるよう,色分けして提示する。 

アンケートの結果





















価値の追究・把握

2「大きな古時計」の歌詞について話し合う。


・大きな古時計の歌を聴く。
・本物の古時計を提示し,歌への関心を高める。
・歌詞の内容について簡単に説明する。

古時計
カセットテープ
歌詞カード

(1)うれしいことや悲しいこととはどんなことがあったと思いますか。

・子供が生まれた。
・学校に入学した。
・誰かが死んでしまった。

・花嫁が来たことがうれしいことであることを確認する。
・意見が出にくい時はいくつかの例示をするなどの助言をする。


(2)それぞれの思い出の出来事を見て,古時計はどんなことを思ったでしょうか。

・元気に育ってね。
・これからがんばってね。
・悲しいね。

・実物の古時計を見ながら,一つ一つ考えさせる。
・それぞれの思い出について,古時計の優しい気持ちに気づかせるよう助言する。


(B)おじいさんの家族は,動かない時計をどうして大切に持っているんでしょうか。

・おじいさんが大切にしていたから。
・おじいさんの思い出があるから。

・家族が古時計のことをどのように考えているか,深く考えさせる。


価値の内面的自覚

3自分や自分の家族の思い出が詰まった物について考え,話し合う。

・このランドセルには入学式の思い出があります。
・このランドセルはおじいちゃんに買ってもらった物で,とても嬉しかったです。
・家にある人形は,5歳の時に遊園地で買ってもらった物で,楽しかった思い出が詰まっています。

・担任にとっての思い出の品物をきっかけに自分や自分の家族の思い出の品物について考えさせる。
◎何人かの児童にクラス全体の前で発表させる。(A児への支援)
◎友達の発表をよく聞いて,いろいろな思い出があり,どれも大切であることに気づかせる。

思い出の品物
ランドセル
ワークシート



 

価値の自覚

4「大きな古時計」を歌う。


・おじいさんの思い出を想像しながら歌うことを助言する。

カセットテープ
 
(5)資料の分析
(省略)

(6)評価
 思い出を大切にする心にふれ,それらの美しさを素直に感じようとしたか,学習活動3のワークシートや学習活動4の歌う様子の観察等で評価する。

5.各教科・領域・その他の教育活動との関連
(省略)

※事前に実施したアンケート

アンケート
 
名前
 
◎自分や自分のかぞくにとって、うれしい思い出にはどんなことがありますか。いくつでも書いてください。









 
 
◎自分や自分のかぞくにとって、かなしい思い出にはどんなことがありますか。いくつでも書いてください。









 
 
◎自分や自分のかぞくの思い出で、一生わすれられないと思う思い出があったら書いてください。いくつでも書いてください。








 


※当日使ったワークシート

大きなふるどけいワークシート
 
名前
 
◎自分や自分のかぞくにとってわすれられない大切な思い出が「ギュッ」とつまっているものを書きましょう。






 
 
◎どんな思い出がつまっていますか。












※授業の実際
<導入>
1.アンケートの結果を発表する。
 
「この前、皆さんにうれしい思い出や悲しい思い出についてのアンケートに答えてもらいました。みんなで結果を見てみましょう。」
 
(結果の提示)
「うれしい思い出は・・・・」
「悲しい思い出は・・・・・」
 
2.大きな古時計の歌を聴く。
 
「ところでね、先生にはうれしいこと、悲しいことっていうと思い出す歌があるんだよ。実はね、」
 
(古時計提示)
 
「これなんだけど、みんな何の歌か分かるよね。ちょっと聴いてみよう。」  
 
(歌を聴く)
 
3.歌詞の説明を聞く。
 
(歌詞カードの提示)
 
「この歌は3番まであります。1番ではおじいさんの生まれた朝に時計を買ってきたと歌っています。買ってきたのは誰かは分からないし、おじいさんの生まれた記念に買ったのか、たまたまおじいさんの生まれた朝に買ったのかも分かりません。ただ、おじいさんとこの時計は同じ日にこの家にやってきたことは分かりますね。そして2番では、この時計がきれいな花嫁さんが来たときも動いていて、おじいさんやおじいさんの家族にとってうれしいことも悲しいことも全部知っているんだよって歌っています。そして3番では、おじいさんとのお別れの時を家族のみんなにベルで教える時計のことを歌っています。お別れっていうのはもちろんおじいさんが亡くなったということですね。また、1番から3番まで最後のところで、今はこの時計が動かないんだよって歌っています。今日はこの歌についてもう少し詳しくみんなで考えてみましょう。」
 
4.発問1
 
「2番で「うれしいことも悲しいことも」と歌っています。(ラインを引く。)その一つが「きれいな花嫁やってきた」ですね。これはうれしいことですね。」
 
「それじゃあ、そのほかでおじいさんが生まれてから亡くなるまでに、この家にどんなうれしいことがあったと思いますか。」
 
(発表・板書)
 
(助言)例示 学校に入学した。家族で旅行した。子供や孫が生まれた。テストで100点を取ってほめられた。
<当日の授業では助言が必要ないほど意見が活発であった。>

「ここでは「うれしいことも悲しいことも皆知ってる時計」と歌っていますね。そしたら、おじいさんが生まれてから亡くなるまでに、この家にどんな悲しいことがあったと思いますか。」
 
(発表・板書)
 
(助言)例示 誰かが死んでしまった。いたずらをして怒られた。ペットが死んでしまった。兄弟げんかをした。
<当日の授業では助言が必要ないほど意見が活発であった。>

5.発問2
 
「なるほど。いろいろな思い出があったようですね。ではそれぞれの思い出の出来事を見た古時計はどんなことを思ったでしょうか。まず○○○○○の時はどうだったでしょうか。(繰り返す)」
 
(発表)
 
6.発問3
 
「それでは、最後にもう一つ考えてください。この時計は「今はもう動かない」んだよね。では、おじいさんの家族は、動かない時計をどうして大切に持っているんだと思いますか。」
 
(発表)
 
7.担任の思い出の品物を見る。
 
「実は先生にも大切な思い出があって、捨てることができない物があります。これなんだけどね、」
 
(物の提示)
  
「物についてのエピソード」
 
8.ランドセルの思い出を考える。
 
「では皆さんは、自分のランドセルを机の上にのせてください。」
 
(ランドセルを乗せる)
 
「自分のランドセルを1分間、じっと見てみましょう。何か大切な思い出が見えてきませんか。」
 
(じっと見る)
 
「(30秒後)見えてこない人は、さわってみましょう。また、背負ってみましょう。」
 
(助言)「誰に買ってもらったかな。そのとき何か言われたかな。」「傷が付いているかな。どうして付いた傷かな。」
 
「(1分後)何か思い出が見えてきましたか。」
 
(発表)
 
(ランドセルを机の脇に置く)
 
9.思い出の品物について考える。
 
「では、皆さんの家にある物で、わすれられない大切な思い出がぎゅっと詰まっている物はありますか。考えてワークシートに書いてみましょう。」
 
(ワークシート・発表)
 
「家に、家族の誰かが大切にしている物があったら、どうして大切にしているのか聞いてみるといいね。きっと大切な思い出が詰まっていると思うよ。」
 
10.大きな古時計を歌う。
 
「最後にこの大きな古時計の歌を歌ってみましょう。(いろいろなうれしいこと悲しいことを想像しながら歌うといいですね。)」
 
(歌う)