パワード・パラグライダー 初フライト


 午後から雨になると言うことで、午前中に飛ばせてもらえる事になった。出発前に「大川さん、死ぬときには、痛くないように殺してあげますよ」、との上野校長の冗談を聞きながら準備。僕にはレスキューパラシュートが無いのが気になったが、エンジンをかける時には緊張ですっかり忘れてしまっていた。緊張で立ち上げに二度失敗した後に、違う人が飛び立ってその間は待機と休憩。少しずつ風が強くなってきて(この間と同じように、またお預けか)と思っていた。よく考えると、エンジンを背負っても、立ち上げの練習の時と変わりがないのに気がついて安心した。
[Image]  再び僕の番が来て、立ち上げたら今度は成功、やっと飛び立てた。アクセルを全開にして、ぐんぐんと高度を上げて行く。「深呼吸をして下さい」との校長の声。僕の緊張をほぐしてくれようとしているのだろう、と思った。モヤがかかったような天気だったが、下は良く見えた。そよ風に吹かれるとわずかだが揺れ、とても恐く感じた。少しの風が吹いても飛ばしてもらえなかった理由が良く分かった。なんか空中に浮かんでいるのが信じられない思いだ。経験者から、「以外と恐く感じないものですよ」と聞いていたが、やはり恐く感じた。顔を切る風も恐いが感動の方が上回る。
 下の住宅が本当に小さく見えた。ありきたりの言葉を借りれば、マッチ箱のようだ。左のブレークコードがきつかった(着陸後に調べてもらったら、引っかかっていたそうだ)。自分が飛び立った所を探した。すると、小さな白いキャノピーが本当に小さく見えて、やっと見つけられた。もちろん、無線で誘導してくれているから、分からなくても問題ないが。づっと上を見ると、別のパラが飛んでいるのが見えた。後で聞いた処によると、僕の前に飛び立った横山さんだった。渡良瀬川も良く見える。そこに落ちて行きそうで、やはり恐かった。
[Image]  「大川さん、あと一回右に回ってから降ります」との指示。続いて「エンジンをアイドリングにして下さい」。その通りにすると、ぐんぐん地面が近づいてくる。思ったよりも沈下速度が早いと感じた。地面近くになったら、緊張していたせいか、ほとんど無線が聞こえず、(ブレークコードを引け)と言っているのだろうと思い、じっくりと引いた。着陸した瞬間に走ろうとしたが、上手くいかずひざまずく。しかし、そんなに衝撃はなく、着陸も初めてにしてはまあまあだったか。
 上野校長と助手の清水君が近づいてきて、僕の手を取り「おめでとうございます」と声を掛けてくれた。それに答えて「ありがとうございます」と答えて、僕の初フライトは終了した。思い出してもづっと緊張していた。聞くところによると、飛行時間は約10分、最高高度:150m程度だったそうだ。

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