問題・その1の回答

問題・その1の回答


 図書館に於けるコピーの問題(著作権)について、考えて頂けたでしょうか。
 以下に裁判所が下した判断とその若干の説明をします。内容が内容だけにわかりにくい部分をあるかと思いますが、最後まで付き合って下さい。

【裁判所の判決】

 図書館の行為(コピーを拒否した)に、違法性は無いとされました。

【コピーを依頼した部分】

 コピーを依頼した図書は822ページの「土木工学事典」で、そのうちの「地盤の安定問題」と題する部分であり、ある特定の個人によって書かれた7ページでした。(問題ではこの部分が抜けていたので、適切ではありませんでした)。

【判決の説明】

 著作権法によりますと、「著作物の一部分」のコピーは1部に限り許可されています。ではこの「一部分」とはどの位かと言いますと、それは半分以下とされています。
 ですから、裁判所は7ページを「一つの著作物」と考え、その半分つまり「3ページ半を超えるコピーは違法である」との判決を下した訳です。

【裁判所の判決に対する、著作権法学会理事 久々湊 伸一氏の意見】

 下記の様な理由により、判決は妥当では無いと言っています。
(1)たった10ページにも満たない1項目を「著作物」と判断するのは妥当では無いと考える。「著作物」とは、原則的には物理的に1個の書籍1冊を言うものだ。
(2)国会図書館では、半分以下とは「文学作品」を念頭に置いている。
(3)百科大事典のような1ページに何人もの著作者がいる時は、コピーが不可能となる。
(4)ある時には1冊の半分、そしてある時には1部分の半分ではとても不公平である。
(5)論文を半分しかコピー出来ないのでは、内容を誤解されるおそれがあり、研究一般に支障をきたす。

 そして、久々湊氏は「裁判所はなるべく、法律に例外を作りたく無かったのでこの様な判決を下したのではないか」と書いています。(例外とは、ある時の1部分とはこうで、そしてある時はこうだ、と法律の中で説明を加えなくてはいけないような事)

 ちなみにアメリカでは、この様な場合のコピーは許可されているそうです。

【実際は?】

 現在でもこの事は守られているようです。しかし、1回目に半分をコピーして、後日残りの半分をコピーしてもらう様にしているみたいです。文献複写サービスも2回に分けてコピーしてもらい、全文を入手するようです。

【JICSTの場合】

 JICSTでは「この注文による複写物の利用にあたっては申し込み者が著作権法を守る必要があります」の注意のもとで、一人あたり一部のコピーが許可されています。

【私の意見】

 現在の著作権法は、昭和45年(1970)に全面的に改正されました。その当時もコピー機は既にありましたが、もちろん現在のようではありませんでした。それを、その当時の法律をそのまま適応しようとする事に大きな誤りがあるようです。本来なら、この著作権法を大きく変え、なるべく現状に対応したように改正すべきでしょう。

【参考】

  • 東京地裁 平成7年4月28日判決
  • 平成6年 第178号著作権確認等請求事件
  • 凡例時報1531号129頁