イアン・カステロ=コルテス 著
マイケル・フェルドマン 著
騎虎書房 刊
最初にこの本、ギネスブックに出会ったのはもう二十年以上も前の学生時代でした。神田の古本屋街を歩いていますと、ハードカバーでかつ箱に入った分厚く新品の本がありました。それが「記録の百科事典・世界一偏」です。並んで「記録の百科事典・日本一偏」もあり、こちらも同時に買ってきました。世界一偏の方の定価は千四百円と書かれており、古本屋ですから、売価は千円位だったと記憶しています。当時としては、(かなり高いな)と思ったのも事実です。しかし、(こんな本があったらいいな)と思っていた時ですから、迷わずに買ってしまいました。
この本を読んで関心しまた共感した事の一つに、限りなく記録に対して正確を記していることです。例えば人間の寿命の最初はこんな記述から始まります。「人の寿命ほど虚栄、ごまかし、うそ、ペテンによってあいまいになっているものはない」。こう書くことによって「この本は正確なことしか載せていないよ」と宣言しているのだと思います。
前回に買ったギネスブックが1971年度発行ですから、今から25年も前になります。あれから日本でもこの本が有名になり、「チャレンジ・ザ・ギネス」などのテレビ番組も生まれました。そして本の題名も「記録の百科事典」から原題の「ギネスブック」に変わり、中身も二色刷で一般向けになったようです。
この本は色々な分類に別れていますから、読む人によって関心を持つ場所が異なるでしょう。言葉を変えて言えば、誰でも楽しめると言えるでしょうか。どんな人でも関心のある分野はあるはずですから。私は、瀬古利彦選手の25000mと30000m、真木和選手の20000mが世界記録として残っていることなどが確認できて嬉しく思いました。パラパラとめくりながら、気が向く所を読むだけでも楽しい本です。 (1997/02)
紫式部 著
瀬戸内寂聴 訳
講談社 刊
「源氏物語」を知らない人は日本人なら恐らくいないでしょう。しかし、それにも関わらず内容まで詳しく知っている人はそれ程多くないと思われます。私も、作者が紫式部、主人公が光源氏、全体が五十四帖で構成されている恋愛物語である、くらいしか知りませんでした。
今回、与謝野晶子、谷崎潤一郎、円地文子に続いて、「瀬戸内寂聴が十年の歳月をかけて現代語訳を完成させ、それが発刊される」と聞いて、第一刊を入手しました。この本によって源氏物語を少しは知る事になったのです。
なるほど、今から千年も前にすごい物語が創られたものです。世界を見渡しても、当時はこれに匹敵するものが全くありません。それが、東洋の島国の一女性の手によって書かれたのには、まさに奇跡と言っても良いでしょう。「小説」などと言う手法が発達する以前のことなのですから全く驚きです。また、印刷技術がなかった時代のもので、これだけの長編が現代まで残っていたのには、驚きを通り越して信じられないくらいです。
作者の瀬戸内は、雑誌・プレジデントのインタビューに答えて次ぎのように語っています。「結局、紫式部が書きたかったのは光源氏ではなく、実は女性たちではなかったか。光源氏は物語の狂言回しで、本当に書かれているのは女性、光源氏の恋人たち、つまり『女性』ではなかったか・・・・・」。この事を、少しは学生時代に源氏物語を読んだことのある妻に言ったら、「まったくその通りだと思う」と言っていました。
私は、「科学技術が発達しても、人間そのものは案外変わらないな」と言う思いを強くしました。ですから、あと千年経っても人間はほとんど変わらないかも知れません。皆さんも、円地文子以来二十三年ぶりの現代語訳です、この機会に世界の古典を読んでみませんか。 (1997/03)
岩城正夫 著
大月書店 刊
人間と他の動物とで大きく異なる点の一つに、「火を使う」とことが挙げられます。今でこそ「火をつける」ことなど、マッチ一本やライターまたは自動着火装置などでとても簡単に出来ますが、昔の人はどんな方法で″火″をおこしていたのでしょうか。時代劇を見ますと火打ち石で簡単に火をつける場面が良く出てきます。本当にこんな簡単に火はつくのでしょうか。こんな疑問を抱き、入手したのが本書です。
近年、近年と言ってもかなり前からですが、実験考古学を言う言葉を良く耳にします。実際に自分でやることにより、立てた推論や仮説が正しいかを判断する方法論の一つでしょう。私はこのことはとても重要なことだと考えています。いくら正しそうに見えても、実際やってみたらそうならなかったでは意味がないからです。
話を本書に戻しますと、摩擦による発火法と火花式発火法の二つに別れています。そのどちらも比較的簡単に火がつくそうです。しかし、百科事典などを参考にしながら見よう見まねで道具を作りやってみても、ほとんど成功はしないと書いてあります。成功には、良い材料、きめられた寸法どうりの道具、正しいあつかいかたの三つが必須であり、「かんたんな道具は使い方がむずかしい」と表現してありました。道具の微妙な寸法差や材質やその乾燥具合が適切でないと失敗してしまうそうです。
葛生町の古代生活体験村で「ゲンさんの火おこしセット『古代のあそ火(び)』」と題した道具を見つけて買ってきました。一度やってみた処、煙は出ましたが火はつきませんでした。やはり何回か試みてコツをつかむ必要がありそうです。
また専門的に知りたい方には、古代日本の発火技術――その自然科学的研究(群羊社)・高嶋幸夫、岩城正夫・共著をお勧めします。 (1997/04)
全国スカイレジャー振興協議会 偏
イカロス出版 刊
本を読む喜びの一つに、″自分の知らなかった世界を知ることと、その驚き″があります。本書を読んだ時がまさにそうでした。
本書を読むまで、模型飛行機用のジェットエンジンが存在するなんて想像もしませんでした。値段は数十万円だそうです。たとえ数十万円しようが、そんなものがあるだけでも驚きです。また、このエンジンを使えば、全長2メートルの飛行機を最高時速250キロで飛ばせるとか。全費用は約200万円。模型飛行機と言えども、ここまで来ると子どもの入り込める世界では全くありません。
また、スポーツカイトと呼ばれている凧があります。また、この凧がすごい。ロッドと呼ばれる骨の材質にはカーボン系やボロン系の複合素材、そしてラインにはアラミド系や高強力ポリエチレンといった最新ジェット戦闘機と同じハイテク素材を使用しています。スピードは時速100キロを超え、高速度で進むラインは刃物と同じで危険きわまりないそうです。値段は2万5千円から5万円。凧とは言え、「子どもへのプレゼントに」などと、簡単に買える価格ではありません。
以前は鍛えられた軍人のみに許されたパラシュート降下も、現在はスカイダイビングと名前を換えて誰にでも出来るスポーツに生まれ変わりました。2〜3ヶ月にわたって訓練を行った後から初ジャンプを行う時代から、今は土曜日に地上練習を行い、翌日にはもう初ジャンプをすることが出来るようになったようです。もし、あなたがスカイダイビングをやってみたいと思っていたら、スキーやテニスを楽しむのと同じ感覚でやってみたらいかがでしょうか。今はもうそんな時代なのかも知れません。本書には藤岡町に4ヶ所のスカイダイビングスクールの連絡先が載っています。 (1997/05)
岡 良樹・平田 実 共著
成美堂 刊
かつて、人類の夢であった「空を飛ぶ」ことは、二百年以上前にモンゴルフィエ兄弟による「熱気球」、そして九十年以上前のライト兄弟による「飛行機」の出現によってすでにかなえられました。そして現在はジェット旅客機が、世界中の空を所狭しと飛び回っています。
ところが、人類最初のあこがれ――――「鳥のように飛ぶ」こと、一人一人の人間が自らの力で簡単に空を飛ぶことは、いかに発達した現代科学の世の中でも、つい最近まで不可能でした。
そこに出現したのが、飛ぶことを普遍的なスポーツにした「ハンググライダー」で、二十数年前に登場しました。今では、世界五十ヶ国以上、総フライヤー人口も十万人以上に達していると言われています。
そして、このハンググライダー以上に「空を飛ぶ」ことを容易にしたのが、パラグライダーで、今から十数年前に登場しました。片手で持て、しかも乗用車の中に楽に乗せられる「空を飛ぶ道具」は、このパラグライダー以外にはありません。そしておそらくは、これからもこのパラグライダー以外にはあり得ないでしょう。このパラグライダーと呼ばれるたった数キログラムのハイテク布で、人間が四千メートル以上の高空にまで上がれるのですから、本当に驚きです。
昨年の夏、熱海市のパラフィールドと呼ばれるフライト・エリアで、私はパラグライダーの一日体験コースに入校しました。そして、直線距離でおよそ百メートルの距離を真っ直ぐに4回、百五十メートルの距離をS字状に3回飛ばせてもらいました。通称、ブッ飛びと呼ばれる滑空だけの浮遊体験でしたが、空を初めて飛んだ思いはとても感動的でした。 (1997/06)