[Image]  3.ハ ヤ

 最も一般的であり普通に捕れた魚、それがハヤです。いつもは四ツ手(四ツ手網のこと)や釣りで捕っていましたが、次のような方法でつかまえた事もあります。
 それは川の中の石や砂を使って、小さな池を浅い川の中に作るのです。そして小さな入り口を川上に向かって開け、そこに川の水を流し込みます。流れ込んだ水は小砂利の間から川下の方に流れ出しますが、川の水は常に池の中に流れ込んでいる訳です。つまり、一度入ったハヤは入り口の狭い場所からしか出る事が出来ない訳ですから、ほとんど脱出は不可能になります。
 近くでしばらく遊んでいますと、ハヤが池の中に数匹入っています。逃げられないように入り口を塞ぎ、あとは手でつかまえるのです。こんな漁法を誰に教わるでもなしにやったのを覚えています。川は魚捕りの場所だけではなく、水遊びの場であり、なによりも創造の場でもありました。
 また、こんな方法で捕った事もあります。ハヤは何匹もで列を作って泳いでいます。そのハヤが足元に来た時、水といっしょに足を使って川岸に打ち上げるのです。もちろんたまにしか成功しませんが、成功した時はほんとうに嬉しかったものです。今でも、水といっしょに岸に打ち上げられたハヤのウロコが銀色に光り、それを見て喜んでいる二十数年前の自分をはっきりと思い出す事が出来ます。
 夕暮れ。私達が家路を急ぐ頃になると、何故だか良く知りませんが、ハヤなどが水面から飛び跳ねるのです。私達に捕られなかった喜びを体全体で表現しているのでしょうか。しかし、子供の私はそんな時必ず、「ちくしょう、あんなにたくさんの魚がいるのに、なぜこんな少ししか捕れないんだ。明日こそいっぱい捕ってやるぞ」と、誓いを新たにしたものです。

 ハヤ=日本のほとんど全土に分布し、サハリンやアジア大陸の東部にも同一種または近似種がいる。四〜七月に産卵する。釣り人に喜ばれ、冬季に美味である。
 食生は真の意味で雑食性で、藻類や植物の実から昆虫・甲殻類に及び底泥上のものを摂食する。