付 録(新聞記事)


 1.1985年(昭和60)年7月21日 日曜日 下野新聞


[Image]  郷土史研究の成果実る
  安蘇史談会 結成半年で会報発行

 【佐野】佐野の郷土史研究者たちで組織している安蘇史談会(京谷博次会長)は、このほど会報「史談」の第一号を発行した。去る一月、正式にスタートしてから六ヶ月後に会員たちの研究の成果が発表されたもので、既に佐野市内はじめ田沼、葛生町の学校、公共施設などに無料配布されたが、素人の研究にしてはなかなかなもの、と高く評価されている。  安蘇史談会は五十八年、佐野市史編さんに携わっていた京谷氏が市民講座の講師として七回ほど講演した際に聴講した人たち十一人が「このまま“解散”するのは惜しい」と郷土史サークル結成の準備を進めてきた、という。
 会員は印刷業、自転車屋さん、会社員、高校教師などまちまちで、郷土史に関してはいずれも研究熱心な人たちばかり。今年一月に「史談会」として発足したが、それ以前のいわゆる準備期間は年間を通して毎週一回、例会を開いては意見の交換や各自の研究テーマなどについて勉強してきた。
 それらの成果が今回、待望の冊子「史談」の発行にこぎつけた、と副会長で専ら鎌倉、室町、戦国時代の研究に没頭している福地秀雄さん(六十)は満足げだ。
 「史談」はタイプ印刷八十ページで、特に会員の会社員大川圭吾さんが「葛生原人から」とのテーマで論を展開、アイヌ部落や沖縄、フィリピン、韓国、ニュージーランドを旅行した印象として「和人」と「アイヌ」に大別し、「和人」は「琉球人」と「琉球人以外の和人」に識別できる――と記述している。大川さんは「私は“感じで語ってきた”と文中で断るなど、アマチュアらしい楽しさがにじみでている。
 その他「中世の佐野氏と唐沢山の攻防」(福地秀雄さん)「第一回鉱毒事件演説会」(金子庸三さん)「鋳物師の起源と中世の天命鋳物」(高橋久敬さん)――など安佐地区にかかわる郷土史の掘り起こしの成果が九編ほど収録されている。
 史談会では六百部ほど発行し、既に五百部は配布済みだが、地域では興味深く読まれている。


 2.1985年(昭和60)9月25日 水曜日 サンケイ新聞

    郷土史愛好家が会報第一号発行
       佐野市の安蘇史談会

 佐野市に住む役所職員や自営業者、高校教師ら十四人の郷土史愛好家が作っている「安蘇史談会」が、昨年十二月、正式に発足したのを記念して発行した会報第一号。
 佐野市と田沼町の両市町で二十年間にわたり市史、町誌の編さんで郷土史にふれてきた京谷博次さん(五十二)=同市堀米町120=を中心に、郷土の歴史を知ろうという勇士が集まり、昨年五月にサークル結成の準備会を開いた。メンバーを古代、中世、近世、近現代、の四部会に分け、それぞれ視察、見学を続けるほか、週一回、例会を開いてきた。  創刊号には会員がそれぞれテーマを決め、それらの研究活動などを通じてまとめた九編の報告が寄せられている。
 大川圭吾さんの「葛生原人から」では葛生原人との出会いから民族について興味を持った著者が北海道、沖縄、フィリピン、ニュージーランド、韓国などを訪ね、それぞれの地の人と接する中で感じ取った「民族編」が述べられている。
 また京谷さんの「凝灰岩製供養塔について」では、昨年山形県南陽市にある凝灰岩製の供養塔「奥羽型板碑」を視察したのをきっかけに、栃木県西南部に集中する凝灰岩製の分布と、新田・足利両氏の勢力圏と関係を論じている。
 また、会員の作品とは別に、群馬県桐生市の郷土史家、藤沼博さんから「須永元と須永文庫」が特別寄稿され、日韓併合の歴史を解明する上で出てくる同市出身の事業家、須永元について述べられている。


 3.1985年(昭和60)年8月1日 木曜日
        たうんたうんよみうり 第56号

        ″安蘇史談会″
     第一号会報″史談″を発刊

 昨年五月に発足した″安蘇史談会″では、六月に第一号の会報「史談」を発刊した。  安蘇史談会は、佐野ユネスコ結成十年、佐野市制施行四十周年を記念して、昭和五十九年一月から二月にかけて開かれた歴史講座「安蘇の歴史と風土」(講師=京谷博次氏)が元で発足したサークルで、現在会員は十四名。毎月第一と第三木曜日に、植野コミュニティセンターで活動している。中には、足尾の人や岩手県出身の人もあり、地元以外の人も佐野の歴史を調べようと意欲的。
 会の名称「安蘇史談会」は、わいわい、がやがやと郷土の歴史を談じようという意味もある。
 今回の会報は、会員全員が研究テーマを持ち、調査し、文章にしたもの。内容は″葛生原人から″″倭の時代″″八幡山古墳とその周辺見てある記″″鋳物師の起源と中世の天命鋳物″などといったもの。これから年一回の割で作っていく予定だそうだ。
 会長の京谷博次さんは「内容には、ひとりよがりな部分もあると思いますが、会員一人一人が、歩いて調べて書いたものです。安佐地方の小・中学生をはじめ、多くの人に読んでもらいたいですね。郷土の歴史をあらたに認識するとともに、つちかわれた文化を後世に残してゆきたいと思っています」と話している。
 会では九月に、千葉県佐倉市にある民族博物館の見学を予定しているという。また会員のほとんどが男性ということで、女性会員も合わせて募集している。