平成13年第5回佐野市議会定例会会議録

平成13年第5回佐野市議会定例会会議録




平成13年第5回佐野市議会定例会会議録(第6号)(抜粋)

平成13年12月21日(金曜日)
 議事日程第6号
  日程第2 陳情第1号及び第2号について
       (委員長報告、質疑、討論、表決)

○議長(寺内冨士夫君) 次に、3番、大川圭吾君。  
         (3番 大川君登壇)

○3番(大川圭吾君) こんにちは。ただいまより、陳情第1号「佐
野駅自由通路および橋上駅化事業」見直しに関する陳情について、
を否決することについて賛成する立場で討論をさせて頂きます。
 平成13年2月1日に行われた第1回臨時議会で審議を行いまし
た、佐野駅自由通路及び橋上駅化整備事業につきまして、私は討論
を行いませんでしたが反対を申し上げました。その主な反対の理由
は、関東の駅100選に選ばれた駅舎の替わりに、橋上駅と自由通
路を約33億円と言う巨費を投じて建設しても、投資に対する効果
が少ないと考えられる、と言うことです。また、その他の反対の理
由として、1.日本全国が同じような顔を持つ街並みになってしま
った現状において、現在の佐野駅舎は城山公園をバックにした時に、
赤い屋根が公園の緑とマッチし、文化財的価値や都市景観を考えて
も保存する価値のあるものだと考えます。2.現在の城山城址は周
りがかなり削られてコンクリートで固められるなど破壊が進んでい
ます。ここでさらに自由通路を建設することは歴史ある城山城址の
一部がさらに破壊されてしまいます。3.私が聞いた市民の大多数
の声は自転車の通行が可能な跨線橋を望んでおり、計画されている
橋上駅は自転車の通行ができません。4.橋上駅の建設について、
一私企業であるJR及び東武鉄道に対して多額の寄付を行うことは、
鉄道事業がいくら公共性が高いとは言っても、現在の佐野市の財政
規模から言って好ましいことではないと考えます。5.広報さのに
掲載された建設費用は約29億円でありましたが、臨時議会で上程
された時には約33億円となっており、その差額の約4億円に対す
る明確な説明がなく、詳細設計を行ったら上がってしまったと言う
理由のみでした。6.橋上駅の建設は費用の大部分を支出する佐野
市に対して、あまりにも不平等な協定書となっています。例を上げ
れば、工事の施行に伴う損害は、乙(JR及び東武)の責めに帰す
る場合を除き、甲(佐野市)が負担するものとする、と言うような
内容です。7.協定書の中に「JRから駅舎跡地の購入」を約束し
ている項目がありますが、今回の議案に賛成すると言うことは、予
算化されていない内容についても賛成することになります。つまり、
いつ提案されるか分からない議案(跡地の購入)に対しても責任を
負うことになり、それは将来の議決権の権利を奪うものだと考えま
す。つまり上程のあり方そのものに矛盾を感じました。8.市当局
が「自由通路及び橋上駅建設賛成の著名用紙を作成し、関係町会に
配った」件に対しての、明確な再発防止対策が市当局より明示され
ませんでした。
 以上のような理由により、この橋上駅関係の議案に対しては反対
をし、その気持ちは今でも全く変わりは無いどころか、むしろ今議
会の平塚敏夫議員が行った一般質問の答弁を聞いておりましたらま
すますその思いを強くしました。しかしながら、臨時議会において
賛成多数によりこの議案は可決しました。そして今回提出された陳
情の主旨は「佐野駅自由通路および橋上駅化事業」の即時中止の検
討であり、一度議会で議決したことに対して大幅な変更を行うと言
うことは議会制民主主義を尊重する意味からも避けたいと考えたの
が、今回の陳情を否決することに賛成する理由の一つです。
 もう一つの理由は、飯塚新市長が市政方針演説の中で「佐野駅自
由通路及び橋上駅化整備事業につきましては、広く市民の皆様の意
見を伺い、議会とも十分な話し合いを行いながら見直しの検討をし
て参りたいと考えております」と言う方針を尊重したいと考えたか
らです。ここで改めて市政方針の中にこの佐野駅自由通路及び橋上
駅化整備事業の見直しを織り込んだ飯塚新市長に対して敬意を表し
たいと思います。この見直しの内容については、施政方針に対する
質疑の中で既に明らかになっていると考えておりますが、私は次ぎ
のような事だったと思います。1.駅舎跡地の購入に対しては、当
面困難である旨の協議をJRと行う。2.現計画の自由通路において、
手押しによる自転車の通行の可能性を再検討する。3.自由通路に
支障となり除去する部分以外の駅舎を、現在の位置に残すことが可
能かどうかを再検討する。以上の3点です。
 そして三つ目の理由、それはこの「佐野駅自由通路および橋上駅
化事業」見直しに関する陳情書を提出した佐野駅舎と佐野城跡を守
る会及び佐野の歴史と文化を考える会の京谷代表世話人ほか203
名の方々の思いは、会の名前が示している通り佐野駅舎と佐野城跡
を守ることを主にしているものと思われます。つまり、自由通路と
橋上駅の中止を活動の目標としている会では無く、あくまでもいま
までの物を守る会なのです。ですから私はこの陳情書の可決否決に
関わらず、佐野駅舎を守ることは可能だと考えました。残念ながら
佐野城跡は必要以上に破壊され、その原因はどこにあるかが今議会
でもあまり明確にされませんでした。もちろん、市当局は原因の明
確化と再発防止案を至急提示する必要があるでしょう。さらに佐野
城趾に関して市当局は、自由通路の橋脚以外の部分は覆土し、芝生
やツツジなどを植えるなりして残っている部分に関しては、可能な
限り施行前の状態に復元する義務があると考えております。もちろ
ん遺跡の調査も必要な部分以外も削り取ってしまったと言う責任上、
通常の遺跡発掘よりも厳密にやる必要があるでしょう。もちろん調
査書や文化財保護委員の意見なども出来るだけ早めに公開すべきで
す。
 次ぎに私がこの陳情書の可決否決に関わらず、佐野駅舎を守るこ
とは可能だと考えた理由を述べます。いままでの経緯を考えますと、
佐野市からJRに対して自由通路を建設する時にじゃまになり現駅
舎を取り壊す部分の補償費として、2億6千6百万円を佐野市がJR
に対して支払うことで議案が可決しております。ですから、この議
案が可決している以上、どうしても駅舎の一部を取り壊さざるを得
なく、駅舎をそのまま残すのなら補償費を支払うことは必要なくな
ると言うことにつながります。しかし、この橋上駅建設計画に携わ
った市当局の方々、それに駅舎を守る会とJRの方々全ての人々が、
この佐野市を良くしようと思い働いてきたと言うことは紛れもない
事実だと思います。少なくても市当局と守る会は対立する人々の集
まりではなく、一致協力して佐野市のことを良くしていこうと言う
人たちだと思います。壊す事が決まっていたあの奈良駅でさえ、奈
良県、奈良市、JR西日本の3者で協議した結果、今年の9月17日
に保存が決まりました。保存の方法は横に移動させる計画のようで
す。文化遺産に対する関係者の熱い思いが感じられます。佐野駅舎
に比べてはるかに大きな奈良駅でさえ、横に移動させることが可能
なのですから、佐野駅舎くらい簡単に東に移動させる事は可能でし
ょう。見積もりを取ったらたったの700万円だったと言うことも
聞きました。ですからもう一度原点に帰り、市当局、守る会それに
JRの方々の3者がそれぞれ必死になって考えれば、現在の議決及び
予算の範囲の中で、現佐野駅舎を自由通路に支障となる部分を除去
しないでも残すことが可能であると信じます。どうも取り決めなど
は私たちが幸せになるために存在するのであって、その取り決めに
よって私たち自身が束縛されるのは愚かなことだと思うのです。そ
う言う意味では、自由通路と現駅舎は十分に共存が可能であると考
えます。もしそうでなければ現駅舎は三分の二しか残らず、ダイヤ
モンドの三分の一が欠けたように駅舎の価値そのものも半減し、さ
らには鉄骨の建築が木造建築に食い込んだような外観となり、結局
は美観の関係から取り壊しになってしまうことを極力恐れておりま
す。
 最後に四つ目の理由ですが、自由通路の建設は既に基礎部分が完
成し、今では予算の消化割合において16%もの進捗を示している
ことです。このことは逆に言えば現駅舎をどうするかと言うことに
対する結論を急がなくてはならない時に来ております。ここで私の
意見を言わせてもらえば、いままでの街造りとか街の発展とかはど
のようにして東京に近づこうかと言う手法のような気がしておりま
す。しかし、どのように努力したとしても佐野市は東京にはなれな
いのではないでしょうか。そこで、これからは佐野市特有の街づく
りが必要となり、現駅舎の保存はそれに相応しく、近い将来におい
て必ず残しておいて良かったと思える時代が来ると信じております。
もしそうでなかったら、NHKはテレビドラマ喪服のランデヴーで、
決して佐野駅を使ったりはしなかったでしょう。あんなぼろな駅舎
が何の役に立つのだ、と思われる人も多いでしょう。しかし時代の
流れは確実に現駅舎を佐野の観光の目玉にしていくように思います。
文化遺産を後世に残すことも、また現代を生きる私たちに課せられ
た大きな仕事の一つではないでしょうか。また、これほどごみの問
題で佐野市は苦悩しているのですから、このような時期に多量の産
業廃棄物を出すのは矛盾でもあると思います。言い換えれば現駅舎
の保存は、現在の佐野に住む人たちの責務と感じているのは私一人
だけでは無いはずです。繰り返しますが、現在の自由通路の設計を
変えずに、現駅舎を完全な形で残すことは私たちの智恵を出し合え
ばそう難しいことでは無く、このような時にこそ知識ではなく智恵
を使うべきであり、それは十分に可能であると私は考えております。
 さる6月29日にあしかがフラワーパークで行われました第16
回両毛五市若手議員懇談会の講演会で、あしかがフラワーパークの
園長であり女性樹木医としての第一号者である、塚本こなみ氏の「木
から学ぶもの」と題する講演がありました。その中で、「木一本守れ
ないで何が行政だ」と言う言葉があり、参加した方々は良く覚えて
いると思います。そう言う意味では関東の駅100選に選ばれた駅
舎を守れないで、何が行政だそして市民だと言う思いを強くします。
そしてそれは関係者の気持ち一つ、残す気持ちになれるかどうか、
ただそれだけに掛かっているように思います。壊す事はいつでもで
きます。ここで陳情者の意をくむことが佐野市を真の文化都市への
脱皮させるきっかけとなりうると考えます。もしこの現駅舎を完全
な形で残すことができたら、佐野市は全く問題は違いますが新しい
ごみ焼却炉建設問題も早いうちに解決への道が開けるでしょう。そ
れは市民の熱い思いを組み入れることでもあり、市民の気持ちや行
政の熱意は有機的につながっていると思うからです。
 これまで述べてきたような四つの理由により、今回の陳情につい
ては否決に賛成しますが、可否のいかんに関わらず陳情者の思いは
最大限に組み入れる必要があると考えており、またそうすることが
市当局においても過ちにより城山の城跡を必要以上に破壊してしま
ったことに対する道義的責任の取り方の一つであるとの認識を私は
持っており、さらには市民が望む行政としての仕事のあり方ではな
いでしょうか。少なくても私はそのように認識しております。
以上で陳情第1号の不採択に対しての私の討論とさせていただき
ます。

                        以  上