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スイミー
レオ・レオニ 作
谷川俊太郎 訳
広い海のどこかに、小さな魚の兄弟たちが、楽しくくらしていた。 |
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みんな赤いのに、一ぴきだけは、からすがいよりも、まっ黒。泳ぐのはだれよりも、はやかった。
名前は、スイミー。
スイミー「こんにちは、ぼく、スイミー。今日はね、ぼくたちの楽しみにしていた運動会なんだ。もうすぐ、ぼくのとくいな ときょう走がはじまるんだ。」
♪ファンファーレ・ピストル♪ |
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スイミー「やった、1番だ!」
赤い魚「ぼくは、2番だ!」
〃 「あたし、3番よ」
〃 「はじめは、ちょうしよかったけど、とちゅうでつかれて、ぬかされちゃったんだ。」
赤い魚「あら、あたしもよ。」
〃 「でもやっぱり、スイミーは、はやいなあ。」・・・ |
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そのとき、おなかをすかせた、おそろしいまぐろが、すごいはやさで、ミサイルみたいに、つっこんできたのです。
赤い魚「まぐろって、何だろう?」
〃 「とっても、こわいらしいわ。」
〃 「みんな、はやくにげないと、食べられちゃうぞ!」「キャー!」・・・ |
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こうして、まぐろは、ひとくちで赤い魚たちを、のこらずのみこんでしまったのです。
にげたのは、スイミーだけ。
まぐろ「わっはっはっ。1ぴきにげたようだが、はらいっぱいで、もう食えんわい。わっはっはっ。」 |
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スイミーは、およいだ。くらい海のそこを。
こわかった。さびしかった。とてもつらかった。
スイミー「兄弟たちは、みんなまぐろに食べられて、ぼく、ひとりぼっちになっちゃった。とりあえず、海のそこに にげてきたけど、これから先、どうしよう?」
けれど、海には すばらしいものがたくさんありました。 |
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くらげ「あら、あんた だあれ?」
スイミー「ぼく、スイミー。ひとりぼっちになっちゃったんだ」
くらげ「そうなのう。そりゃ、さびしいわねえ。でも、がんばって生きていれば、いいこともあるわよ。・・・」
スイミー「ありがとう。くらげさんて、まるでにじ色のゼリーみたいだね。」・・・ |
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スイミー「すごいいきおいで、すながふっとんでいって、おじさんて、まるで水中ブルドーザーみたいだね。」
いせえび「わっはっは。うまいことを言うなあ。こわい魚がきたら、この中ににげれば、あんぜんさ。」
スイミー「すごいなあ。」
いせえび「それじゃ また。わっせ、わっせ、わっせ。」・・・ |
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スイミー「おじさんて、ずーいぶん、体が長いんだね。」
うなぎ「そうかい?」
スイミー「うん。顔を見るころには、しっぽをわすれそうだよ。」
うなぎ「わっはっは。おもしろい子だ。この海には、まだまだおもしろいものがあるから、たくさん見るといい。」・・・ |
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スイミーは見た。こんぶや わかめの林
風にゆれる やしの木みたいな いそぎんちゃく。
見えない糸で ひっぱられているような 見たこともない魚たちを。
こうして、おもしろいものを見るたびに、スイミーは元気をとりもどしていったのです。 |
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そのとき、スイミーは岩かげに見つけたのです。
スイミーのとそっくりの、小さな赤い魚の兄弟たちを。
スイミー「さあ、出てこいよ。みんなであそぼう・・・」
赤い魚「だめだよ。大きな魚に 食べられてしまうよ。」・・・
スイミー「何とか 考えなくちゃ・・・」
赤い魚たち「うーん。」 |
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赤い魚「そうだ、まぐろより はやくおよげるように れんしゅうしよう。」
赤い魚「むりだよ。ミサイルみたいに はやいんだぜ。」
赤い魚たち「うーん。」
スイミーは考えた。いろいろ考えた。うんと考えた。
それから スイミーはとつぜん さけんだ。 |
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スイミー「そうだ!」
赤い魚「おどかすなよ。」
スイミー「みんないっしょに およぐんだ。」
赤い魚「えっ、どういうこと?」・・・
みんなが 1ぴきの大きな魚みたいに およげるようになつたとき、スイミーは言った。 |
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スイミー「ぼくが 目になろう。これで、かんせいだ!」
赤い魚たち「これで かんせいだ!」
こうして
朝のつめたい水の中を 昼のかがやく光の中を
みんなはおよぎ、大きな魚を おいだしたのでした。
(H14年2月吉日) |