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■「職人技とデジタル生産システムの融合」 国内はもとより海外自動車メーカーの自動車ボディの金型製造に携わっている宮津製作所に、デジタル化の波が急速に訪れたのは、1990年代初頭からだという。 それまでは、自動車ボディ金型製造は、メーカーから提供される樹脂や石膏を使用したボディモデルを採寸し図面を起こし工作機械に掛けるというものだった。 ところが自動車市場のニーズの多様化、高品質化、合理化の中で、メーカー側はそうした「物理モデル」を徐々にデジタルデータ、つまり「論理モデル」へと移行させていく。 同社もこれに対応する形でデジタル化された生産システムを構築してきた。 金型製造の流れを概括すると、まず、メーカーから先のデジタル化されたボディモデルデータを受け取る。 そのデータから金型の設計図面を作る。 図面は工作機械用に数値化され、鋳物から金型を削り出す。 出来あがった金型は人の手で精度を高められ、トライアウトと呼ばれる試しプレスされ、検証・評価・調整の後納品となる。 「金型製造は確かにデジタル化は進んでいますが、完璧なコンピュータ化はできない分野でもあるんです」と同社IT関連担当の津久井伸一取締役開発部部長は語る。 「自動車ボディは非常にデリケートな曲線でできていますから、場合によっては最終的な段階でボディに微妙な"うねり"が出たりします。これをデータ段階で発見することは非常に難しい。これを発見し、また調整していくにはどうしても人間の眼と手の感触に頼らざるを得ない」とのこと。 また「実は最終段階のトライアウトも加工経験に根ざしたノウハウがあって、このノウハウを図面作成に活かさないと最終製品の品質が守れない」のだそうだ。 先進のデジタル技術はともすると経験的職人技術を駆逐するかのように受け止められがちだが、自動車のようにデザインが重視される場所では、先進技術は新しい「職人」を生みつつあるとのお話だった。 ■生産工程の再構築が課題 顧客とのモデルデータのやり取りを初め、IT技術は業務上不可欠のものになっているが、その生産工程管理は、自前の汎用システムもあるが「大型の汎用システムはすでに時代との適合性が薄くなってきている」と現状を語る。 大量生産ではなく一品生産である同社の特性の結果とも言えそうだが、やはり生産工程の合理的な管理システム再構築が迫られている。 また事務系も同様に再構築の必要性に迫られている現状とのこと。 「大型の汎用システムはひじょうに信頼性が高いのですが、パソコンとの連動などが大変だったりと使い勝手も悪い。パッケージソフトも含めて今度検討を進めたい」とのお話だった。 ■シュミレーションと3次元設計、 新たな技術獲得へ 一方、デジタル技術の進展はとどまることを知らない。 シュミレーションと3次元設計の技術がそれだ。 もちろんデジタルデータ処理を前提にしている。 シュミレーション技術とは、金型設計データが最終的なトライアウト段階で"歪"や"うねり"などの問題を発生させないかを検証するもの。 近年はこのシュミレーション結果を踏まえなければ次工程へ進むことを許可しないメーカーもあるとのこと。 同社ではトライアウト工程の経験者をシュミレーション結果評価の部署に回すなど、その体制を整えている。 また3次元設計は、従来の2次元設計とは比較にならないほどのデータ処理が出来ること、また視認性の良さから顧客とのコンセンサス作りにも有効なツールとしても期待されているが、多数の顧客のデータを取り扱うだけに作業の標準化が課題という。 同社としてもノウハウを積み上げ、早急に本格稼動段階へと積極的な推進を図っている現状だ。 職人の技術と先進のコンピュータ技術の融合の、さらに新しい段階を同社は迎えている。 |
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