■一貫生産のポイントは情報の共有化
創業は大正3年で八木農機具製作所として始まり、昭和25年から機械加工分野へのスタートを切った。
昭和37年からNSKの軸受旋削関係を開始、昭和43年に現在の高崎市倉賀野町に工場を移転し、この機を境に鍛造メーカーとしての第一歩を踏み出した。
さらに熱処理・機械加工設備の充実も図り、鍛造…熱処理…機械加工まで一貫生産体制を構築し現在に至っている。
「この一貫生産体制を実現したからこそ、生産管理、在庫管理をはじめとしたIT化ならびに各工程の情報共有化がたいへん重要なポイント…」とシステム担当が語るように、同社の基幹システムの整備がはじまったのは1984年とすでに20年近くの歳月が流れ、長いITの歴史が刻まれている。
■ITによる徹底した効率化を実現
同社では、生産管理、受注管理、出荷管理、在庫管理さらに計画を含めた工程管理などの総合的な管理システムが導入され、製品の状況や入出庫状況もひと目で把握できる。
また生産工程では時間単位で管理されているため、工程ごとの生産性が細かな単位で数値としてつかめる。
つまり『いつでも』『瞬時で』現場にフィードバックして調整・指示が可能であり、また、この時間単位の生産性の数値をもとに、生産計画や時間コストの基礎データとしても活用できる体制を実現している。
各製品や工程ごとのリードタイムも正確に把握できるため、重要な基礎データとしても活用されている。
また、徹底したコスト管理は労務面にも反映され、従業員の出勤・欠勤状況の管理と、社員食堂の利用や個人の備品購入などを一元化した『勤怠・購買システム』を1996年に導入(現在は2世代目)している。
これは従来のタイムカードを廃し、出勤状況と社員食堂利用などの購買を従業員一人ひとりが持つ磁気カードで管理し、一括して給与から天引きするもの。
このシステムの導入の早さも、情報化に対する同社の前向きな姿勢を如実に物語っている。
■客観的なデータがなくては出来ないこと
自動車部品やベアリングの製造は、私たちの想像を超える精密さやスピードが求められる業態であり、生産管理や工程管理は企業の命運をにぎる。
同社では、ITをベースとした細密なデータが長い経験に培われた分析のノウハウによって活用され、さまざまなロスを軽減し製品のコスト競争力に大きく貢献している。
現在の日本におけるモノづくりは、こうした管理ができない企業は即表舞台からの退場を意味しかねないのである。
また、高度なIT活用のノウハウを蓄積している同社にあっても、担当部署ではまだまだ発展途上との認識であり、目標はさらにその上に据えている。
「かなり高い目標だが、まだ個別原価管理まではシステムが到達していない。まずはそこに繋げる第一歩として、品種ごとの原価管理が近い将来の目標」と言うように、原価管理と財務会計を一元化することが目下のターゲットという。
しかしこの高い課題をもつに至るまで成熟するには、決してスムーズに事が運ぶばかりではなかった。
例えば在庫管理において、在庫数とコンピュータ上のデータとが数が合わないこともあった。
どんな企業においても、データと実製品の数とを正確に合致させることはたいへん困難だが、「しかしシステムで管理されたデータが無かったら大変なことになったと思う。いわゆるどんぶり勘定では、ロスの軽減という発想が定着しなかったのでは」と担当者が語るように、システムで管理された客観的なデータがあったからこそ、その数値に近づける努力が自然に生まれていった。
客観的なデータは長いIT化の歴史の中で十分に蓄積されており、それが作業効率を上げていくうえでたいへん貴重な財産となった。
IT化が社内に定着するには長い時間やコストはかかるが、安易に放棄しなければ必ず大きな財産として残るということの証左である。
■ネットワーク時代の要求に応えて
現在、新しい課題としてネットワークの活用という新しい要請も起こってきた。
取引先では、製品データのやりとりをはじめ、財務関連までもがデータ納入となって久しい。
さらにそれがネットワークを使ってのやりとりに代わり、生産の進捗状況等がインターネットを活用しての情報共有化も現実になりつつある。
しかしこれはほんのまだ幕開けで、今後ネットワークを使っての企業間の情報共有化がいっそう活発になるのは間違いない流れであり、乗り遅れた企業は退場を余儀なくされる。
同社は、現在まで積み上げた基幹システムのより高度化を目指し、ネットワーク社会への備えをすでに始めている。
高品質で低価格の製品供給だけではもう済まされない時代が到来し、情報に対して鋭敏なアンテナを研ぎ澄ます企業が次代へのステップを約束される…。
八木工業株式会社の真剣なとり組みは、そんなメッセージを伝えている。
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