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■平成7年に始まるLANの構築
群馬ヤクルトは、乳酸飲料から化粧品までを製造する「ヤクルト本社」商品の販社。
同社の社内LAN構築は平成7年に前後して始められた。
LAN導入は、本社内のプリンター共有、社内情報の共有化を目的に開始され、現在は同社管轄下に置かれている前橋、高崎及び北毛、西毛地区にある29ヶ所のセンターとの間にネットワークを構築し、売上データの集約等に活用している。
本社内はグループウェアが組まれているが、昨年からはセンターにもその範囲を広げ、メールのやり取りをメインに、ヤクルト本社とのデータ交換、各スタッフ間、あるいは取引業者の打合せ等に活発に利用されている現状とのこと。
■市場に直結する携帯端末の導入
群馬ヤクルトで特筆すべきは、上記した一般的なLAN等の活用もさることながら、その販売システムへのITの活用にある。
群馬ヤクルトの商品製造元であるヤクルト本社は、昭和38年から独自の宅配システムである「ヤクルトスタッフ」による対面直接販売を開始。
群馬ヤクルトも当然同じシステムを持っている。
先に触れた同社市場29箇所の各センターは、5〜30名前後のスタッフを擁し、各スタッフは、130個所ほどの顧客をもっている現状だという。
スタッフ総数は600人ほど。
単純計算しても78,000箇所の市場と直結した画期的なシステムといえる。
同社の販売チャンネルはもう一つ、スーパーやコンビニ、パチンコ店などのショップチャンネルもあるが、売上比は現在も6:4から7:3とスタッフによる売上比が圧倒的に多い。
このシステムに平成12年、全国のヤクルトグループの先陣を切って、同社4センターに携帯端末が試験導入された。
導入された携帯端末は、ザウルスをカスタマイズしたものだが、ゼンリンの地図ソフトをベースにして、顧客の位置情報、順路情報、また例えば当該の顧客は、午前中は不在といった顧客に関する情報などきめ細かい販売情報を入力保存できるものになっている。
もちろん、その場で売上商品、数字等の入力、集計も可能というもの。
売上の数字は、その日の内にセンターで集計され、本社にネットワークで送られ、翌日には閲覧が可能となる。
導入当初は、ヤクルト本社からもスタッフが派遣され、初めてのことでもあり、実務との擦り合わせによるプログラムの修正等を経て、実用性を高め、実際の稼動までは、個人差はあるものの、ほぼ1ヶ月で達成できたとのことだ。
導入の結果、各センターは販売状況の把握とそれに対する対策を、比較的短時間の内に出せるようになったこと、例えば、スタッフの訪問回数が減った場合など、事情を加味しながらも訪問回数の維持の指示、あるいはスタッフが休んだときにも、他のスタッフがデータを見てフォローするといった情報の共有化、さらには、一度でも買っていただいた顧客データも保存されることから、それを見て、再アプローチによる顧客の固定化の手段にも役立っているという。
また、スタッフは従来月次の集計業務を行っていたが、携帯端末の導入により、それも必要なくなっている。
■ショップ展開へのITの利用
一方ショップ展開では、本社営業スタッフ及び県内四箇所ある出張所スタッフが携帯用の端末をもって個店を回り、その場で納品書を発行すると同時に、納品データは本社で集約され請求書発行に直結するシステムを構築している。
■システムの全センターへの
導入とデータ活用が課題
「なんといっても早急に全センターへの携帯端末の導入が課題です」と大塚氏。
営業部からも早期の全センターへの導入が要望されている。
「コストの問題もありますが、導入にはその準備期間を含めて約2ヶ月。準備、初期のフォロー、稼動してからのメンテナンスなどどうしても人的な力が必要。それを踏まえた合理的な方法を模索していかなければ」と続ける。
さらにヤクルトスタッフによる販売データを今後の営業活動にどう活かしてくのかその方法についても開発が必要だ。
同社の根幹をなすシステムにあるだけに、多大な可能性を秘めつつも、大きな課題となっている。
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