卒業式の次の日に





一週間くらい前、春一番が吹いた。
もう一番寒い時期は通り越して、季節は着実に春へと近付いている。


卒業式まで あと何日あるんだろう







「もう卒業だなー・・・・思い返せば長いようで短い3年間だったぜェ〜!」
「でも卒業しちまったらサンジの飯食えなくなっちまうだろ?ヤダな〜っ!!」
「そうだよな、みんなバラバラだしよ、地元離れる奴もらたくさんいるしなー・・・・・」
レストランバラティエの2階に位置するプライベートルーム。
その一室で卒業話に花を咲かせるルフィとウソップ。
けれどもその部屋の主は先刻からずっと押し黙ったままだった。

部屋の隅で独り黙々と煙草をふかすサンジに、ウソップが心配そうに声をかける。
「おいどうしたサンジ?なんかあったのか?」
サンジはその言葉に虚ろな視線を寄越し首を左右に振っただけで、口を開こうとはしない。
「まあこんな時期だ。センチになっちまうのは判るけどよ、みんなでいられんのもあと少しなんだぜ?最後は笑って卒業しようなっ!」
親友ににっこり笑いながらそう言われて、サンジは微笑みを返した。
「そうだな。卒業パーティーん時には美味ェもんたくさん作ってやるよ。未来の一流シェフの味だぜ?タダで食える今のうちに充分堪能しとけよ」
「オレ肉────────っっ!!」
ルフィの雄叫びが部屋中に木霊する。
「わーったよっ!!てめェはちっと声のトーン落とせっ!」
こんなバカやってられんのもあと少しだと思う。
それだってもちろん寂しいが、サンジにはそれ以上に頭を埋め尽くす悩みがあった。

携帯を見たら、卒業式まで あと5日だった。









体育教官室の前に立ち、サンジは深呼吸した。
手が汗ばむ。
柄にもなく足が震えた。
乾いた唇を舌で湿らせ、サンジは部屋の扉に手をかけた。





「ローロノーア先〜生っ!」
「うわっ!」
コーヒーを煎れている後ろ姿に体当たりをした。
突然の事にバランスを崩したらしい身体は、それでもコーヒーを零さずに持ち直す。
「危ねェだろクソガキッ!!」
「あっ、てめェまたんな煎れ方しやがって!それじゃ味が落ちるって何べん言やァ判んだよっ!!」
ゾロの叱責も軽く流し、サンジはゾロの肩越しにコーヒーわ見やり茶々を入れた。
「てめェ・・・・・それが先生に対する口の聞き方か・・・・・・?」
「んだよ。別に良いじゃん先生って柄でもねェし」
ゾロの額に青筋が浮き上がる。
サンジは歯を見せて笑いながらゾロの身体に回した腕に力を込めた。

「・・・・・・・・・・・・・はなせ」
「んだよ味気ねェな!もっとこう『君、や・・・やめたまえ・・・・!』とか言う感じの動揺は無いわけ?」
「・・・・・・・これで何十回目だよ。いい加減慣れた」
「ふーん・・・・・・・・」
サンジはゾロに回した手でその胸元をさすっていく。
ゾロはジャージ姿なので感触はよく判らないが、それでもその奥の筋肉は硬くて心地良かった。
そのまましばらく腹筋を撫で、下半身まで手を伸ばしたところでゾロの腕に止められる。

「・・・・・・・つまんねーの」
「ガキが色気づいてんじゃねェよ」
サンジから身体を放し、ゾロはソファにドカッと座ってコーヒーをすすった。





サンジはゾロが好きだった。
初めは自分には無い体格の良さとかに憧れていた。
けれども憧れはいつしか別の感情にすり替わっていて、若いサンジの心と身体を弄んだ。
ずっとずっと長い間、実に3年間片思いを続けて、ついに先日サンジはゾロに自分の気持ちをぶつけたのだ。

玉砕しか頭になかった。
罵られて蔑まれて、もう二度と口も聞いて貰えない覚悟で、それでも伝えたくて仕方なくて、他の生徒と同じように卒業していくのなんて嫌で。
少しでも自分という存在をゾロの中に植え付けてやりたくて。


 俺・・・・・・・好きなんだ。ゾロの事。


振り絞った言葉。
声はみっともなく震えていた。


 そうか。で、てめェはどうしたい?付き合うか?


けれど以外にもあっさりと受け取られたサンジの気持ち。
そんな言葉が返ってくるなんて予想もしてなくて、呆気にとられたサンジはただただアホのように首をカクカク縦に揺するしかなかった。






けれど告ってから何が変わるわけでもなく、キスもさせてくれないゾロにサンジの不安は募るばかりだ。
(やっぱ気持ち悪ィよな・・・・・・・俺だって最初は抵抗あったし・・・・・・・)
そう考えてサンジは、昔まだ片思い中だった頃に勇気を出し通販で買ったゲイビデオを思い出す。
アナルに挿入するという行為を初めて目の当たりにし、サンジは酷く衝撃を受けたものだった。
聞こえてくるのは低い呻き声ばかりで、苦しいのか気持ちいいのかさえ読み取れない。
しかし何度も見ているうちにサンジの感覚は変化し、
いつしか尻の穴にペニスを挿入されている男の顔がどうにも気持ちよさそうに見えるようにまでなった。


(でもゾロはそんなビデオなんか見たこと無ェだろうしな・・・・・・・・)
男同士なのだ。
なぜ付き合ってくれているのかさえ疑問である。
もしかしてからかわれていただけかと考えて、サンジは凹む気持ちを止められ無かった。







「おい」
突然ゾロに声をかけられ、サンジは驚いて顔を上げる。
「なんだよ」
「今日うちに来い。飯作れ」
「!!」
サンジは心底ビックリした。
幻聴じゃないかとも思った。
ゾロからの初めてのお誘いなのだ。
踊る胸を止められない。

「何か予定でもあんのか」
「無いっ!絶対ェ行くっ!!」
そこでチャイムが鳴ったので、サンジは緩む顔のまま教官室を後にした。
ゾロのアパートには以前に何度か遊びに行った事があったが、気持ちを伝えてからは初めての事だった。
(とうとう俺も大人になっちまうのかも・・・・・・・・・!)
とか思いながら胸を弾ませ、サンジは時計とにらめっこばかりしていた。




















「ハアッ・・・・・・・」
サンジの出て行った扉を見つめながら、ゾロは盛大にため息を吐いた。
つい先刻の自分の言葉に酷く後悔を覚える。
サンジが寂しそうな顔を浮かべていたのでつい誘ってしまったが、ゾロは自分の我慢がきかなかったらどうしようかと頭を悩ませた。

先日、サンジに好きだと言われた。
薄々そうじゃないかと感じていたのでその告白自体にはそれ程驚きはしなかったのだが、一番ビックリしたのはそれに返した自分の言葉だ。
いつしか発されていた己の言葉の意味に気付き、なぜOKしたんだと自分が信じられ無かった。

本当はゾロだってサンジの事が好きだった。
生意気だけれどよく懐いてくれていて、料理も上手いし可愛くて。
けれども付き合うなんて事は到底考えられなかった。
卒業したらサンジは東京の方の専門学校に行くのだし、地方にあるこの学校からは遠く気軽に会える距離じゃない。

それに自分のせいでサンジの未来を潰したくもなかった。
男になんてうつつを抜かしていないで現実を見ろと、そう言ってやるのが教師の務めだろうとも思う。

けれどもあの日からゾロは、夜の慰みタイムのオカズに必ずと言って良いくらいサンジを思ってイった。
初めはゾロ秘蔵のAV女の濡れ場で扱きだすのだが、途中でそれがサンジの濡れ場にすり替わるのだ。
あの白く細い身体をくねらせながらもっともっととねだる姿はゾロのチンポを痛いほど勃起させた。
サンジに告られて1週間。
ゾロは毎晩サンジで達していたのだ。
さっきだって後ろから抱き締められた拍子に勃起した。
気付かれないうちに身体を離したが、そしたらサンジが酷く悲しげな顔を見せたので喜ばせたいがためについうっかり家に誘ってしまったのだ。

(我慢だ我慢・・・・・・・・・・!)
夜に堪えが利くように一発抜いておこうと、ゾロはジャージからペニスを引きずり出した。
シュッシュッと数回扱いただけでサンジの痴態が頭の中に広がり始める。
股を大きく広げ自分を誘う姿に飛び付き、そのアナルに突っ込んだ気分でチンコを擦り射精した。
スッキリしたところでコーヒーを煎れ直す。
数時間後の自分に渇を入れて、ゾロは熱いそれを一気に飲み干した。




















今の時期、既に進路の決まった3年はもうあまり学校に来ない。
来ても授業がないため、みんなでだべっているくらいだ。
そんな中サンジはわざわざ学校に来たというのに窓の外ばかり見てデレッとしていた。
不審に思ったクラスメートが声をかけるが、その答えも上の空だ。
「どうせまた女の事でも考えてんだろ」
なんて笑われても「男だよ」なんて言えずに、羨ましいだろとか何とか返してやる。
早くゾロの勤務時間が終われば良いと思っていた。
早く早く、2人きりになりたかった。





全ての授業が終わり、帰りの時間。
サンジは再び教官室に訪れ、ゾロが帰り支度するのを見ていた。
「なあ、何が食いてェ?どうすっかなー」
そんな事を聞くでも無しに呟きながらゾロを待つ。
「焼き肉食いてェ」
それにいちいちゾロが返してくれるのが嬉しかった。
しかもそんなスタミナ料理かよ・・・・・とか思いながら顔を赤く染める。(もちろんゾロは無意識なのだが)


「うっし、帰るか」
「おうっ!」

そのまま2人はそれぞれの思いを胸に早足で買い物を済ませ家まで帰りつき、サンジは食事の準備に取り掛かった。






「よーし出来た!」
テーブルの上には溢れんばかりに大量の料理。
ゾロはそれらを無我夢中で食べまくった。
そうでもしないと腕捲りしたシャツの袖から見える白い腕とかに目を奪われそうだったから。





「ごちそうさんっ」
自分の作った料理を綺麗に平らげたゾロを見てサンジは微笑んだ。
と同時に部屋に微妙な沈黙が漂う。

「テレビでも見るか?」
サンジがちょっぴり緊張気味にゾロを見た瞬間、ゾロの口からそんな言葉が飛んできた。
おう・・・と小さく頷いて、サンジはテレビの前にゾロと並んで腰を下ろす。
触れ合った肩からゾロの体温が伝わってきて、心臓がバクバク言い出した。
テレビになんてこれっぽっちも集中出来ない。
しかしチラリと見遣ったゾロの視線はテレビに釘付けで、サンジも渋々テレビに目を戻した。

しばらくそのままバラエティ番組を見て2人で笑ったりした。
そんな何でもない時間が酷く優しくて、サンジは胸が暖かくなるのを感じた。

(こうしてられるのも卒業までか・・・・・・・・)
しかしそう考えると胸は一気に苦しくなる。
ゾロを自分だけのものにしたくて無性に焦ってしまう。

もう一度チラッと視線を向けると、ゾロとバッチリ目が合った。
ビクッと心臓が跳ねる。
そのまま黙って見つめ合い、サンジはゆっくりとゾロに顔を近付けていった。
唇が触れそうな距離まで近付いた時に目を瞑る。
次の瞬間サンジは唇に温かいモノが触れるのを感じた。
そのまま緊張して固まっていると、ゾロの舌に唇を舐められる。
驚いて目と口を開けた瞬間、咥内に舌が滑り込んできた。
至近距離でゾロと目が合う。
そのまま上顎を舐められて、サンジはそのくすぐったさに身体を震わせた。
初めてのキスに酔いしれる。
ゾロの舌を感じて、サンジは危うく意識を飛ばしそうにまでなった。

ゾロの唇がチュパッと音を立てて離れていく。
それを名残惜しそうに舌先で追いながら、サンジは熱いため息を吐いた。




















下半身が張り詰めて痛いほどだ。
ゾロは今にも暴走してしまいそうな自分を持て余す。

しばらく見つめ合った後サンジはハッと気付いたように服のボタンをはずし始めた。
急なサンジの行動にゾロもたまげる。
「ゾロ・・・・・・・・・・・」
シャツの前を全開にし、真っ白な上半身をゾロの目の前に晒してサンジは甘えるような視線を寄越した。
それを見た瞬間ゾロは頭に一気に血が昇るのを感じ目眩を覚える。
サンジは想像の中よりも遥かにいやらしく、綺麗だった。

今にも途切れそうな理性の糸を手繰り寄せ、ゾロはサンジの肩に手を置いて身体を離した。
「ゾロ・・・・・・・・・・・・・?」
不安げな瞳で見つめられ胸が痛む。
しかしゾロは心を鬼にしてサンジに言った。




「サンジ、俺はお前を抱けねェ」




サンジの目が見開かれる。
驚愕と寂しさがない交ぜになったようなその瞳は酷く幼く感じられた。

「ハハ・・・・・・・・やっぱ気持ち悪ィか・・・・・・・・・・」
サンジが今にも泣き出しそうな顔を無理に歪めて笑う。
けれどもそれに失敗し唇を強く噛み締めると、すくっと立ち上がって鞄を掴んだ。

「おいっ・・・・・・・・・・・・・・・・・!」
「帰るっ!!」
サンジはそのまま玄関に向かって走り出した。
ゾロは反射的に追いかけ、後ろからその身体をタックルするように床に倒した。

「っ・・・・・・・・・」
「・・・・・悪ィっ!大丈夫かっ!?」
ハッとして見遣ったサンジの瞳はギュッと閉じられ、大粒の涙が次から次へと溢れ出している。
声を殺して泣くその姿を見た瞬間、ゾロは心臓を鷲掴みにされたような痛みを覚えた。
こんな顔をさせたいんじゃないのにと思う。
サンジにはいつも笑っていて欲しかった。
自分との事で人生を踏み外して欲しくなんかない。

それは自分が我慢すれば良いだけの話だと思っていた。
けれどそれだけじゃ駄目なんだと、今気付いた。


組み伏せているサンジの髪を撫で、涙を唇で拭い取る。
サンジがびっくりしたような濡れた瞳で自分を見遣り、ゾロはその顔に優しく笑いかけてやった。

「気持ち悪くなんかねェ。判るだろ?俺だってもう限界だ」
サンジの顔が真っ赤に染まる。
腰の辺りにゾロの勃起したブツが当たっているのだ。
「じゃあ何で・・・・・抱けねェなんて言うんだよ・・・・・こうしてられんのもあとちょっとしか無ェのに・・・・・」
言いながらサンジの目からは再び大粒の涙が零れ出す。


ゾロはサンジにキスをした。
どう言おうか考えていた。
正直に自分の気持ちを伝えた方が良いのか、けれどもそれでは納得してもらえないような気もする。

ゾロは唇を離し、目と鼻の先にあるクリクリと動く瞳を見つめた。
「俺との事なんかで、てめェの一生に汚点を残したくねェんだ。判るか?」
自分の気持ちを素直に話す事にする。
好きな相手を騙す言い訳なんてゾロには思い付かなかったからだ。


しかしサンジは眉を顰めて首を横に振る。
「判んねェ・・・・・俺はゾロが好きだから、セックスだってしたいと思うんだ・・・・・」
それとも・・・・・と言いかけて、サンジは目を逸らした。
「・・・・・ゾロは俺とする事・・・・自分の人生の汚点になるって・・・・・そう思ってんのか・・・・・?」
サンジの肩が小さく震えている。
涙は止めどなく溢れた。
またこの顔をさせてしまったと、ゾロは悔しくなった。



サンジの身体を担いで風呂場に運ぶ。
突然空っぽの湯船に落とされ、サンジは驚いて目を瞬かせた。
そしていきなり全裸で湯船に入ってきたゾロのいきり勃ったモノを目の前に見て、軽いパニック状態に陥る。
ゾロは服を脱いで湯船に入ると、そのままサンジの服もスポスポ脱がせていった。
濡れないよう服を脱衣場に放ってからバスタブのコックを捻って湯を出す。
それからドカッとサンジと向かい合う位置で足を開いて座り、呆気にとられているその顔を見つめた。

サンジはもじもじと落ち着かず、体操座りみたいに座って足で股間を隠している。
ゾロはその顔を見ながら更に大きく勃起した。

そろそろ先走りでも漏れ出すんじゃないかと思った頃、ようやく湯がチンコを覆うくらいの深さまで溜まった。
サンジの目はあちらこちらをキョロキョロしていて、時折ゾロの股間をチラリと見遣る。
その度に胸まで真っ赤にするその反応が可愛くて、ゾロは理性を保つのがやっとだった。


「お前ェ今日は泊まってけ」
「は?」
突然のゾロの言葉を一瞬理解できず、サンジは呆けた声を出す。
「けど最後まではヤんねェ。それはてめェが卒業してからだ。良いな?」
ジッとゾロの顔を見つめていたサンジが小さく頷いた。
その顔はどこかホッとしたように見えた。



(こんなのはエゴだ)
ゾロは思う。
サンジに悲しい顔をさせたくないとか何とか理由を付けてみたって、結局は自分が抱きたいだけだと判っていた。


いつの間に自分はこんなにサンジを好きになっていたのだろうか。
ただヤりたいだけか。そうでは無い。
そんな下半身だけで突っ走る年齢はとうに過ぎた。

自分はこの男に欲情しているのだと、はっきり判る。
判っているからこそ手放すのが怖いのだ。
これは完全なる、エゴだった。




















温かい湯が身体を包む。
冷たく凍り付いていた心も一緒に溶け出すようで、サンジは次第に自分の身体から力が抜けていくのを感じた。
目の前のゾロは未だに堂々と股を広げ、勃起したペニスを恥ずかしげも無く晒している。
サンジだって勃起していたが、どうにも恥ずかしくて足でもじもじと隠した。


ゾロは卒業したら抱いてくれると、そう言った。
その言葉が嬉しくて自然と顔がほころぶ。
告白して良かったと思った。

「髪洗ってやるから出ろ」
湯船に湯が半分程溜まった頃にゾロがそう言ってサンジを促した。
洗い場に出て風呂イスに腰掛ける。
その途端ゾロに頭から湯をぶっかけられて、サンジは肩を竦めた。
「ビビるじゃねェかっ!!」
しかし抗議するサンジの言葉には耳も貸さず、ゾロはシャンプーを泡立てるとサンジの頭をシャカシャカと洗い始める。
それが何だか気持ち良くてくすぐったくて、背中に甘い疼きが走るのを止められない。

そのまま洗い流されご丁寧にリンスまで塗りたくられて、ゾロはスポンジを泡立て身体まで洗い始めた。
「うわっ・・・・・・ちょっ、それは自分でやるって・・・・・・・!」
抗議の声も聞かず、ゾロは黙々とサンジの身体を泡立てていく。

「や・・・・・・・ゾロ・・・・・・・・・・・っ!」
勃起したペニスに指を回され、泡の滑りを借りてヌルヌルと扱かれた。
サンジは目を瞑って後ろのゾロにしがみつき、その刺激にすぐ達してしまった。
ゾロは大きく息を吐くサンジの身体を綺麗に流し、抱きかかえて湯船に入れてくれる。
突然の快感に付いていけない身体からはぐったりと力が抜けてしまって、あれだけでこんなになってしまった自分にサンジは恥ずかしくなった。

その間にもゾロは自分の身体を洗い、すぐに湯船に入ってくる。
「狭ェ・・・・・」
「贅沢言うな」
そう言い合って2人で笑った。
幸せだった。




















「やっぱ俺のじゃでけェか・・・・・・」
「どうせ俺は筋肉マリモと違って貧弱だよ」
自分のシャツを貸したのは良かったが、やはりと言うかなんと言うかサイズが合わない。
それも可愛くて良いかとか思っていたら、突然サンジがシャツを脱ぎだした。
「っっ!!・・・・・・・何してる・・・・・・・」
「くっついて寝りゃ温けェだろ」
頬を赤く染めながらそんな事を言ってサンジはゾロのシャツも脱がせる。
その行動に軽く眩暈を感じたが下を履いてるだけ良いかと思い直し、ゾロはベッドに入りサンジを手招きした。

嬉しそうに滑り込んでくるサンジの顔を見て自然と頬の筋肉が緩む。
ギュッと抱きつかれて身体が少し緊張した。
それでも素知らぬフリをして布団に潜り込み、サンジの背中に腕を回して抱き締め返す。
触れ合っている胸からは、どちらのものか判らない心臓の音がバクバクと響いてきた。
きっと2人分だと思いながらサンジの湿った髪に鼻を埋める。

さっきサンジが達した時の事を思い出す。
声を押し殺すように息を詰めて白い身体を捩っていたサンジ。
やはり実物は想像の中よりも遥かに可愛くて綺麗で、ゾロはムクムクと起き上がる息子を止められなかった。


サンジがゾロの異変に気付いてチラリと見上げてくる。
「気にすんな」
それだけ返して目を瞑った。
しかし次の瞬間勃起した股間にサンジの手が這わされ、ゾロは驚いて目を開ける。
「触んなって!!」
「だってゾロもしてくれたしよ・・・・・」
「我慢きかなくなるからやめろ」
キッパリ言い放ってやるとサンジはおあずけをくらった犬みたいな顔をしてそこから手をひいた。
代わりに更に力を込めて抱き締めてやる。
幸せそうに微笑みながら、しばらくするとサンジは寝てしまった。
安らかな寝息を聞きながら、この呼吸をいつかは自分が乱してしまうのかと考えて益々勃起した。
擦るに擦れないこの状況に何とか身体を宥めながら、ゾロが眠りについたのは真夜中だった。




















目を開けるとゾロの顔があった。
一瞬自分の状況が理解できなくて目をパチパチやる。
しばらくしてようやく昨日の事が思い出され、サンジは独り頬を赤く染めた。
ゾロの手は自分の背中に回されたままで、それが酷く嬉しい。
寝ているゾロの唇にチュッと口付け、サンジは残された時間を思った。

卒業して、春になったら自分は東京に行く。
もちろん料理の勉強がしたくて自分で選んだ道だし、後悔はしていない。
けれどもゾロと離れなければならないのは辛く悲しかった。
こんな関係にまでなれたのだ。
その気持ちはどんどん大きくなっていく。

わざわざ東京を選んだのは逃げ出すためでもあった。
ゾロに告白して振られて、それでそのまま上京してゾロと自分の気持ちから逃げようと思ったのだ。
どうせ料理学校を卒業したら実家のレストランに戻って来ようと思ってはいたが、今のサンジにはそれまでが待ち切れないほどに長い。
ゾロの身体に回す腕に力を込めて、サンジはきつく目を瞑った。















卒業式 当日



泣く泣くの同級生たちとの別れ。
クラスの女の子たちはほぼ全員が泣いているし、男の中にも泣き出した奴は何人かいた。

サンジもクラスメートたちとお別れをし、それから仲良し組で開いた卒業パーティーに赴いた。
主催者は隣のクラスのナミだ。
他にもビビやコーザもいたりして、もちろんルフィとウソップも一緒である。
高校3年間を共に盛り上げてきた仲間たちともこれでしばらくお別れだ。
「もうこれからは簡単に会えないんだから、今のうちにいっぱいおいしいものご馳走してもらわなきゃっ!」
ナミはそんな事を言いながらも涙目だ。
それにつられてちょっと泣きべそをかきつつ、サンジは友人たちに腕を振るって料理を作った。


それでもその頭の中を常に占拠するのは緑髪をした体育教師。
昨日の夜「帰ってくるのは切りが付いてからで良い」と言われた。
あれからサンジは毎晩ゾロの部屋に入り浸っている。
ゾロはまだセックスこそしてくれてはいないが、優しいキスや抱擁はたくさんくれた。
残された時間を惜しむようにへばり付くサンジをうっとおしがるでも無く、毎晩優しく抱き締めて眠ってくれる。


切りが付いてからで良いと言われても、不謹慎ながら早く帰りたくなってしまう自分がいた。
時計の針が11時をさした所でナミに声をかける。
「ごめんナミさん、俺そろそろ・・・・・・・・・・」
「えーっ!どうしたのよサンジく〜ん!せっかく最後なんだからもっと飲んでいきなさ〜いよ〜!!」
既に出来上がっているナミが絡んでくるのを上手くかわし友人たちに別れをつげながら、サンジはパーティー会場を後にした。





知らず知らずのうちに駆け足になる。
ゾロの家に着く頃には息が切れていた。
もらった合い鍵でドアを開ける。
ドキドキしながら部屋に入ると、酒を飲みながらテレビを見ているゾロの姿があった。
心臓がビクンと跳ねる。
ゾロはこちらに気付いていないらしく、テレビ画面に釘付けになっていた。

ゆっくりとゾロに近付く。
と、その時テレビ画面に映っているものに気付いたサンジの身体は硬直した。

『うっ・・・・うあっ・・・・・・・・』
耳に慣れた呻き声。
腰をぶつけ合う男たちの姿。

それを何度も何度も自分とゾロに置き換えてマス掻きをした。
ゾロが見ていたのは ゲイビデオだった。



「っ!!サンジ・・・・っ!」
身体を硬直させて画面を見ていたサンジに気付き、ゾロが驚いたような声を上げる。
「いつ来たんだ。びっくりさせんな・・・・・」
「ゾロ・・・・何見て・・・・・」
心臓が破裂しそうだった。
きっと今自分の顔は真っ赤だろうと思う。
自分との行為のためにと、勉強・・・・してくれていたのかと考えて、更に顔が熱くなった。


「んー・・・・・ま、一応な」
それだけ言ってゾロは立ち上がる。
サンジは自分の身体がビクッと弾むのを止められなかった。
ゾロの一挙一動に反応してしまう。
これから自分はゾロのものになるのだと思うと、それは尚更だった。
(あのビデオん中の奴らみてェに・・・・・繋がっ・・・・・・)
考えただけで目眩がした。



「おら、んなとこ突っ立ってねェで手伝え」
キッチンからゾロにそう声をかけられ、サンジは慌ててゾロの元へと駆け寄った。
「ん。向こう持ってけ」
ゾロに手渡されたのはケーキの包み。
しかもホールだ。

それを見てサンジは首を傾げる。
「ゾロ甘ェの苦手じゃなかったっけ?2人じゃこんなに食えねェだろ」
「だってちっちぇえのだとろうそく乗らねェだろ。ほらさっさと動け!間に合わねェ」
「?」
何が何だか判らなかったが、サンジは渋々ゾロの言葉に従った。


机の上にはゾロの用意した料理が並ぶ。
と言っても酒とつまみが大半だったが。

「おし、間に合ったな」
「だからさっきから何だよ?なんか用事でもあんのか?」
「誕生日おめでとさん」
ゾロににこりと微笑まれた。
サンジは目を見開く。
見ると時計の針は12時きっかりを指していた。



忘れていた。
卒業式の次の日である今日、3月2日はサンジの誕生日だったのだ。



「え・・・・・?ゾロ・・・・知って・・・・・・?」
「昔てめェで言ってたろ。自分の誕生日も忘れてやがったのか」
胸が詰まったように苦しくなる。
自分でも忘れていた18歳の誕生日。
ゾロは覚えていてくれた。
ケーキまで買っていてくれたのだ。

ケーキの箱を開けてみると、そこには『サンジ誕生日おめでとう』とチョコレートで綺麗に書かれてある。
「ちゃんと店でこの文字・・・・・頼んでくれたのか・・・・・・?」
「そりゃ自分じゃそんな器用な事できねェからよ。ほら早くローソクつけろ」
サンジはこくんと頷くと、ゾロに手渡されたローソクを一本ずつケーキにさしていった。
太いのが1本と細いのが8本。
全てさし終えてからライターで火を灯した。
するとゾロが部屋の照明をおとし、サンジの隣に腰掛ける。

「嬉しい・・・・・俺、まさかゾロに祝ってもらえるなんて思ってなかった・・・・・」
「微妙な時期だしな。卒業式の次の日とか、自分でも忘れてたんだろ」
「おう・・・へへ、すっかり忘れてた。ゾロが・・・思い出させてくれたんだぜ・・・・・?」
「ありがたく思えよ。サンジ・・・・・18になったな」
「うん・・・・・」
「もう我慢してやんねェぞ・・・・・」
「ん・・・・・・・・・・・・・・・」


ゾロにキスされた。
きっと最後の返事なんか泣き声になっていたんだろうと思う。
けれどそんな事ももう気にならなかった。

















サンジはその夜、初めてゾロに抱かれた。

















ローソクの明かりだけを頼りにお互いの身体を弄っていく。
初めてゾロのを触ったし、ゾロにはフェラチオまでされてしまった。
それから散々後ろも弄られて、もう無理だと根を上げそうになった頃に挿入された。
ひきつるような痛みと圧迫感はあったけれど、それも気にならないくらいに幸せで気持ちよかった。


ゾロは繋がっている間中、ずっと自分にありがとうと言ってくれていた。




好きになってくれてありがとうな



それを伝えてくれてありがとう



生まれてきてくれて・・・・・ありがとう・・・・・・




正常位で抱き締めあって、サンジはゾロの言葉を聞く度に目を瞑って涙を流した。

ゾロは何度も何度もサンジを優しく突き上げて気持ち良くしてくれて。
強く抱き締めてくれてキスをいっぱいしてくれて。



もう見栄を張るのはやめにすると呟いた。
お前の事が好きだから離さないと言ってくれた。


それを聞いた瞬間サンジはもう自分をセーブ出来なくて、漏れ出る嗚咽を抑えもせずに泣き、湧き上がる快感には正直に喘いだ。
相当大きな声を出していたと思うが、ゾロはそれを止めるでもなく更に強くサンジを抱き締めた。

そして途中お互い何度かバラバラに精を吐き出し、しかし最後は揃って達する事が出来た。




サンジは心も身体もゾロに満たされた。
最高の 夜だった。















3月中、2人はずっとゾロの家で共に過ごした。
2人でいられる時間を大切にしたくて、バカになるくらい毎日抱き合った。

離れてる間に浮気なんかすんじゃねェぞとか笑いながら愛し合う。
幸せな時間はあっという間に過ぎていった。














そして春が来て、サンジは東京に旅立った。














「クソー・・・・・ゾロの奴・・・・いくら何でもハリキリ過ぎだろ・・・・・」
別れの夜のセックスの名残を引きずりながら、サンジは真新しい部屋に運び込まれた荷物を整理していく。
腰は痛いし中出しの影響から下痢はするしで絶不調だったが、
部屋を整理しないことには生活もままならないため軋む身体を無理矢理叩き起こしてダンボールの山を片付けていった。



その時突然まだ聞き慣れないインターホンが鳴った。
見知らぬ土地での深夜の来客に、サンジはビクビクしながらドアに近付いていく。

「はい・・・・・・?」
そっと覗き穴から見た光景に、サンジは自分の目を疑った。
ドアを勢いよく開ける。




「さっそく男連れ込んだりしてねェだろうな」


「残念。ちょうど今から連れ込もうと思ったとこだったのにな」


緑髪の男を部屋に引き込み、サンジは涙を流した。















「で、何でこの間の今日で会いに来るんだよ。3日前にお別れのセックスしたばっかだろうが」
事後の気だるい身体を起こしながら煙草を咥え、突然訪ねてきた男を訝しげに見遣る。
「3日もシてねェんだ。どうせ飢えてやがったんだろ?」
からかうようにそう言われ、サンジはゾロの脇腹を小突いた。


「ふざけてねェで答えやがれ」
「こっちの学校に転勤になった」


ゾロの答えにサンジの目がまん丸くなる。
「届にこっち希望して出しといたんだ。まさかこう上手く行くとは思わなかったけどな」
笑いながらそう言ったゾロにサンジは声をひっくり返した。
「はっ?はっ!?何でそんな大事な事黙ってたんだよっ!!そう言う事はもっと早く言えってのっっ!!俺がどんだけ───・・・・・・・・・」
「だってしばらくお別れって言っといた方がお前ェ色々ヤらしてくれるだろ」
あっけらかんとそう答えられ、サンジもつられてポッカリと口を開ける。
それから頬を染めてゾロを睨むと、その身体にギュッと抱き付いた。


「バカじゃん・・・・・俺はてめェのヤりてェ事なら絶対拒まねェっつの・・・・・・・!」

「そうか。じゃあここにおいてくれ。一緒に暮らそうぜ」


サンジはこくんと頷いて、愛しくて愛しくて仕方ない男に長い長いキスをしたのだった。





Pillow Biterのpicoサマより頂いてきましたvv
考えてみたら、サンジの誕生日は卒業式の翌日なんですよね!!気づきませんでした!
我慢しているゾロと、勘違いしちゃっているサンジが凄く愛しいですv
二人セットで嫁にきてほしいです。可愛すぎます。
離れ離れになって終わりかと思ったら、ちゃんとハッピーエンドで…v
今のシーズンにぴったりな暖かい素敵なお話でした!!
pico様、有難うございましたv