宇宙人対デルタフォース

 矢追さんのUFO特集(平成2年10月13日)の中で宇宙人対デルタフォースの戦闘が米軍の地下秘密基地であり、66人のデルタ隊員が死亡するというショッキングな事件の再現フィルムがあった。
 岩だらけの洞窟の中をデルタ隊員が駆け巡り、グレイタイプの宇宙人が光線銃でバタバタ倒していく。たぶんUFO特番の中でも1、2を争う金を掛けたシーンではないだろうか。

 真相

 この元ネタはジェットパイロットであり、UFOマニアでもあるジョン・リア氏が1987年にインターネットで発信した文書である。この中には1979年ニューメキシコ州のダルシー研究所という所で、宇宙人に占拠された地下基地を奪回しようとして、宇宙人と陸軍特殊部隊の間で戦闘が起こったというのである。
 では、リア氏はどこからこの話を聞いたのか?実はリア氏がこういった話を吸収した人物がいる。ポールベネウイッツという電磁気学の専門家である。ベネウイッツ氏は雷鳴科学研究所という、ニューメキシコ州カートランド空軍基地に空調機械を納入している会社の社長であり、矢追さんの番組でも紹介されている。
 ベネウイッツ氏はカートランド基地の通信を傍受しており、この中に宇宙人との通信があると考えていた。カートランド基地内にはマンザノ核兵器貯蔵エリアや、コヨーテキャニオン武器試験場などがあり、アメリカでも最も警戒厳重で機密保持に敏感な場所であった。もっとも、この厳重さがかえってベネウイッツ氏の興味を引いたのでは、とも考えられるが。
 軍側は当然、通信傍受などやめて欲しかったが、ベネウイッツ氏はこれを拒否した。そこで軍は地下秘密基地などのストーリーを考え、ニセの通信をする事にした。こうすればベネウイッツ氏は変わり者として扱われると思ったからだ。
 ベネウイッツ氏が傍受した通信の一つに宇宙人対特殊部隊のストーリーがあった。軍が提供した地下基地で宇宙人達が密かにコカインを作っており、これを発見した軍の高官が抗議したところ宇宙人に攻撃された。高官は特殊部隊を呼んで、戦闘が起こり多数の死傷者が出た。宇宙人はUFOに乗って脱出し、基地は廃墟となったという話だった。
 矢追さんがせっかく作った再現フィルムも、実は軍の作り話という結果であった。

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